つきつきまんきつ 第56回(20年10月28日)

■演目
一、 真田小僧(鳳月)
一、 初音の鼓(萬橘)
一、 姫かたり(萬橘)
~仲入り~
質問コーナー(萬橘)
一、 甲府ぃ(萬橘)

■所感
久し振りに独り言、『心の声』ボリュームツマミがパッカパカになっているアレな中年男性客に遭遇。
あの受取り手のいない独り突ッ込みは何が目的でやっているのか、不思議で仕方無い。おそらく演者からの認知を求めていると同時に、周りの客に『俺は分かっている』という“御通家”振りのアピールなのだろうが、会の完全なノイズ。こういう精神的田舎者に限って最前列に座るという地獄絵図。
私の好きな演者は“観客は演者の鏡” “自分の客はちゃんとしている。自浄作用が働く”と比較的厳しめに客に接するが、個人的にはそれが正解な気が。アレな常連客が最前列でお手製の内輪を振っているのに辟易して行かなくなった演者もいるので、長期的にはやはりそれが正解な気がしている……と共に常々我が身を振り返る機会としたい。
比較的頻繁に足を運ぶ会だが、この手のアレな方は来ない安心感ある会だったが。。残念。

萬丸さん不在の中、チラシ掲載の責任所在でハシモト社長と泥仕合……からの「初音の鼓」「姫かたり」。
どちらも(おそらく)初めて聞く噺。
「初音の鼓」は分別の無い、不誠実な中年男性達がサクッと不正行為を働く姿を、まるで子供達の悪戯の如く軽やかに描いてしまう、全くノイズなく馬鹿な遣り取りを楽しめる。冷静に引きで観てみると、悪徳業者と取次役が主人を騙して大金を巻上げるという中々な場面だが、そんな事微塵も感じず、アリャリャリャという馬鹿話になっておりゲラゲラ笑った。両手を頭の上に掲げて『コンコン』鳴く姿も間抜けで面白い。
「姫かたり」は悪が悪を成敗する姿に胸がすく。或る時点を分岐点に怒涛の展開を楽しみつつ、振り返ってみると随分と杜撰な計画で『よく上手くいったな』なんてことも思う、不思議な噺。勢いに流され、噺の歪な部分を感じさせる前に駆け抜ける疾走感が面白い。

仲入り後は質問コーナー挟んで「甲府ぃ」。
丁寧に丁寧に積み上げ……自らの手でドンガラガッシャンと瓦解させる展開にゲラゲラ笑う。直ぐに立て直して噺の世界に惹き戻され、最後まで緩やかに流れる静かで温かい空気感を楽しむ。最後の最後に照れ臭そうに声を出す演者も稀な体験で面白かった。

振り返ってみると、一席目と二席目が『大人が大人を騙る話』 『悪い侍』という要素で繋がって、二席目と三席目が『売り声』で繋がるという構成も面白かった。
以上

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