思い出のイヤホン。
公共交通機関を利用しての移動が多い私にとってスマホのイヤホンはわりと必需品だった。
スマホを買い換えた時に付属しているイヤホンをいつも使っていて無線のAirPodsなどが流行って来ている現在も有線のイヤホンを使っている。
ある日、不注意でイヤホンを床に置きっぱなしにしていたら我が家の犬、チワワの【なつ】こと【なっちゃん】がオモチャだと思ってじゃれていた。
危ない!と思ってすぐに取り上げたのでなっちゃんが誤って飲み込んだりしなくて良かったなと安心。
案の定、イヤホンはなっちゃんの歯型がついていい感じにボロボロだった。
ボロボロだったが一応支障なく使うことが出来た。
あまり良くないかもしれないが使えるならと思ってしばらく使っていたが、だんだん変なノイズが入るようになった。
歯型からヒビが割れてきたようだ。
それでも使い続けた。
しばらく使い続けている間にこのボロボロなイヤホンに愛着が湧いてしまったのだ。
なっちゃんの歯型が愛おしくてたまらなくなった。
愛犬がおもちゃだと思ってカジカジした世界に一つだけの特別なイヤホンだくらいに思ってしまっていたからどうかこれ以上壊れないでと願った。
けれども、ついにその日はやって来た。
イヤホンが完全に壊れた。
私にはこのイヤホンが堪らなく可愛くて仕方がなかったからショックでしばらく新しいイヤホンを買うこともなかった。
不便ではあったが、なんだか寂しさの方が勝ってしまい新しいイヤホンを買う気になれなかったのだ。
失恋してあなたの代わりは誰もいないのにという感覚と少しだけ似ているような気がする。
あのイヤホンには大好きななっちゃんの思い出も込められているような気がした。
親バカにもほどがあるかもしれないけれど、たぶんこれは家族のなっちゃんだったからに限らず友人や恋人であってもたぶん同じ事になっていたと思う。
イヤホンが壊れてから約3ヶ月が経ち、今日ようやく意を決して新しいイヤホンを買った。
自己紹介にも書いてある通り、注意力欠如のADHDがあるので物を無くしやすいっていうのもあって同じ有線のイヤホンを買った。
と言うのは確かに有線を買った理由である事に間違いはないけれど、そうでなくてももしかしたら同じイヤホンを買っていたかもしれない。
そろそろ買おうかなっていう感情はある日突然やってくる。
きっとそれが私のタイミングなんだ。
人それぞれのタイミングって確かにあって、もっと早くイヤホンを買うことも出来たけれどきっと今日が私のタイミングだったんだ。
新品で傷ひとつないイヤホン。
思い出はどんな物にも刻まれる。
今度はどんな思い出が刻まれるのだろうか。
ちょっと楽しみだ。
今日からよろしくね。