ROCK BAND is fun 恋する惑星

UNISON SQUARE GARDEN
2024.7.24 ROCK BAND is fun@日本武道館

印象深いシーンはいくつもあるが、その内の1つが「恋する惑星」である。
宇宙を想起させるサウンドが心を踊らせ、これから始まる楽しい音楽に期待が高まる。イントロを経て前夜祭のようなAメロに突入すると、私はある人物から目が離せなくなった。
田淵智也である。
軽快なリズムと共に、彼はステップを踏みながら軽やかにステージをぐるりと一周した。一気に舞台が宇宙空間となる。
その姿を見つめながら
「あぁ……田淵が星になっちゃった……」
と思わず口から溢れた。
まさに惑星。3人が立つステージは、あの瞬間紛れもなく恋する惑星だった。

『恋する惑星 君はユニバース』

音楽(バンド)を惑星、個々人を銀河、と例えた曲なのだと私は解釈している。

「バンドが続くことは当たり前じゃない」と田淵は様々な媒体で何度も発言してきた。
人と人との繋がりは危ういものだ。考え方なんて違って当たり前だし、明日誰かが欠けることだってあり得る。ましてやそれで商売をすると言うのだから、本当に至難の業だと思う。自分達のやりたいことを尊重しつつ、結果も出さなくてはいけないという状況は、常に綱渡り状態とも言えるだろう。
楽しいけど、楽しいだけじゃやっていけない。
だけどそれでもUNISON SQUARE GARDENというバンドは、プロという立場と、かっこよくあり続けることの両方を諦めずに、ここまで戦ってきたのだと思う。それは私にはとても想像できないくらい、勝手に想像すること自体が失礼なぐらい、紆余曲折、七転八起の道中だったのだろう。
商売として、ロックバンドとして、「正しい」やり方はいくらでもある。それでも彼らは「正しくない」音楽を続けることを「正しい」と信じてやってきた。その答えが20周年を迎えるこの日、導き出された。ユニゾンの音楽に心動かされ、好きになり、ライブを楽しむファンの存在が証明となる。

田淵はこれまでを噛み締めるように一言一言に熱を込めて、言葉を紡いでいた。
自分達の音楽で世界は何も変わらなくて、つまらなかった。もうやめてしまおうと思って後ろを向いた、その先にいたもの。
今に至るまで、諦めないでいられた理由の1つが「きみ」だった。

ユニゾンも、他のバンドも、数多のコンテンツの1つでしかない。
星と同じく、生まれて、今も存在すること自体が奇跡であるロックバンド。そんな彼らは、一聴で終わらせない為に必死に光って「きみ」の視界に入り、見つけてもらおうと音を奏でる。
彼らは勝手に音楽を楽しみ、私達も勝手に音楽を楽しむ。お互い保証のない関係だけど、引力のように惹かれ合ってどこかで繋がっている。理屈じゃなくて、もうこの世界はそういう風にできているんだと思う。

惑星は自分で光ることはできない。恒星の光を反射して光っているように見えているだけだ。それはまるでステージ上のスポットライトのようだと思う。自分だけの力では光ることができないから、周りの力を借りて、自分達を輝かせる。それはまさしくライブをする為に生きているUNISON SQUARE GARDENだ。
ぶっちゃけ私としては、ユニゾンは恒星なんだけどな……と釈然としない部分はあるのだが。

この日演奏された全ての曲に強い思いが込められており、全曲に触れたい気持ちでいっぱいなのだが、自分でもよくわからないけれど「恋する惑星」が一番グッときた。
きっと、田淵が白状するように言った「きみ」への思いと、揺るがないバンドのスタンスと、「恋する惑星」が私の中でリンクしたのだろう。

20周年という節目に、ずっとこだわっていた武道館という場で奏でられるお祝いの曲達は格別だった。ユニゾンがユニゾンであり続けてここまで来たんだと、確固たる証明をぶちかまされたようで、胸が熱くなると同時にぎゅっと感極まる、そんな幸せをもらった気分になった。
これからも変わらず、彼らの変幻自在なかっこよさをステージから届けてほしい。

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