門前仲町「たにたや」さんと、季節のお弁当を考える。(その11 夏至)
今年の夏至は6月21日。1年で1番、昼の時間が長い日です。
この日を境に、だんだんと日が短くなっていきます。ちなみに「昼の時間が長い」というのは北半球での話で、南半球では同じ日が、もっとも昼の時間が短い日になります。(冬至のようなものですね)
また同じ日本でも、緯度によって微妙に変わります。例えば東京(緯度35度)だと、夏至の日の昼は14時間34分。札幌(緯度43度)では15時間23分。北へ行くほど長くなります。もっというと北極圏(緯度66.6度以北)では24時間、太陽が沈みません。いわゆる白夜ですね。
実は今回、料理については悩ましい事実があります。
「夏至を伴う風習、食材がない」のです。
たとえば冬至の日は、カボチャを食べたりゆず湯に入ったり、それこそ春分・秋分の日は、お墓参りしたり、おはぎを食べたりといった風習があるのですが、夏至は特段ありません。強いていうなら「昼が長い」のです。
しかし「昼が長い…」とはいっても、日本は梅雨のまっただ中。低温に強い稲ができるまでは、田植えの時期は今より遅く、梅雨の時期に行うものだったため、農繁期でとても忙しい時期でもありました。
田植えは「夏至のころ、半夏生まで」といわれ、ひと息に行うものだったそうです。代わりに田植えが終わる半夏生のころには、ちょうど収穫したばかりの麦を使って「半夏生餅(はんげしょうもち)」を作り、田んぼの四隅に供えてから食べる風習があったそうです。関東地方や、奈良県、和歌山県などに、半夏生餅を食べる習慣が伝わっています。
また関西地方では、豊作を祈って、半夏生にタコを食べる習慣があります。
作物がタコの足のように、大地にしっかり根を張るようにとの願いが込められているとか。
そしたらお弁当には、「タコの柔らか煮」と「タコの唐揚げ」が出てきたw タコを食べると、この時期にある「宵宮(神社などで行われる前夜祭、よく学生の夜の祭りとして人気だった)」を思い出す。出店している露天では、こうしたタコの柔らか煮が500円そこらで販売している。初夏に合わせて露天スタイルでのお弁当は心地よかった。
実はそんな「露天」のノリで、久しぶりに「たにたや」でお弁当をいただくことになった。それも店内のカウンターではなく、夏限定で届いたアウトドア「highcollar」さんの家具に座って。
僕らはTERRACEの2p TABLEを使わせていただいた。このテーブルは、SONY PARKにも使われていたけど、テラス営業をする飲食店や公共施設の相性が良いはず。素晴らしい。
僕らが着いた頃には、土砂降り雨もやみ、曇り空だったけど、外で飲食するにはベストの状態だった。まさに「露店(ちなみに、露天商(ろてんしょう)とは露天(屋外や青空の下)で店舗を持たず商売をする者。)」、飲食では当たり前のスタイルになりつつある。
お弁当の合間にいただいた、蛤(はまぐり)のスープが、すっと「沁みた」。ハマグリも久しぶりだ。結婚式やひな祭りにお吸い物として出てくる縁起物。スーパーで見かけるハマグリは、実はほとんどが輸入物で、国産はたいへん希少な高級食材として有名だ。
そしてもう一つ。近年、一般的な赤色のトマトのほかにも、黄色や橙色、黒色などさまざまな色のトマトが注目されているグリーントマトが現れた。
一般的なトマトは緑色の状態から熟していくにしたがって赤色になるため、緑色のトマトは若く、熟しきっていないトマトであると思われがちである。しかし、グリーントマトは完熟しても緑色のままなのだ。
種類の確認をするのを忘れたが、一見すると酸っぱくて固そうにも見えるグリーントマトも、外見とは裏腹に甘みの強い品種が多い。むしろ一般的なトマトよりも高い糖度を誇る品種もあるほど。そこにトマト特有の酸味もほどよく持ち合わせており、さわやかな後味がある。歯ごたえがしっかりとしているものが多いので、サラダだけでなく加熱調理にも向いている。ちょうどフライド仕立てで食べたが、果実のような甘みを感じた。
目新しいものも時代とともに訪れる。
それにしても24節気は、1年に1回。いよいよ7月に突入。オリンピックの時期だ。