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バレンタインデー、クラスの『女子』の満足度を上げるには?~私立中堅教員の実践記~

僕は私立高校で働いています。

10年以上働いていますが、クラス運営って難しいんです。担任として毎日いろいろ工夫しながら、生徒も僕も楽しい集団になるように日々工夫しています。(担任が楽しくないと生徒も楽しくないと思うんで)

今日は、バレンタインデーの日に女子から頼まれた、あるお願いについてです。

僕は担任として、この現象から以下のことを考えるようになりました。

①クラスイベントの生徒満足度ってどうあげるのか?

②生徒にこちらが望む行動をしてもらうためにはどんな工夫が必要なのか?

先生以外にも役立つ話だと思うので、長文ですが読んでくれると嬉しいです。

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1.バレンタインの朝、クラスの女子から相談を受けた


「先生ちょっといいかな」とクラスの女子4人に話しかけられた。

 その日は2月14日だったので、勝手に「なるほど、ありがとね。チョコくれるのね。」という気持ちで少し期待しながら彼女たちの話を聞く。

 「先生、バレンタインの日に、全くチョコとかもらえないって可哀想だよね。」と彼女たちは言う。

「お前たち、僕が30オーバーのおじさんだから、そんなことまで心配してくれたんだ、ありがとな」とか思いながら「そうだね。一つももらえなかったら少し凹むかもね。」と僕は答える。

 「そうだよね。だからクラスの女子から男子にお菓子を買ったんだよ。」と彼女たちは言う。

完全な勘違いを僕はしていた。自分にプレゼントをくれるものだとばかり思っていた自分が恥ずかしくなる。

そして同時にものすごく嬉しくなる。「そうか、そんなこと考えてくれたのかありがとね。」と彼女たちに言う。

 でもここで不思議に思った。「なぜ彼女たちは僕に相談をしてきたのか?」詳しく話を聞いてみる。

 話を聞いてみた。すると次のような相談だった。

① うちのクラスの男子はシャイ

② お菓子を渡したら恥ずかしがって少ししか受け取らない可能性がある。

③ また受け取ることを拒否する男子さえいるかもしれない。

④ そうなったらものすごく傷つく

⑤ 担任の僕経由で男子にお菓子を渡してもらえないか

 それを聞いた時にまず思ったことは、「そうは言っても、まずは女子が直接渡した方が良いのでは?」ということだった。

でも、女子がわざわざ僕に相談してきたってことは、そういう男子がかなりいるのかもしれないと考え直した。

 同時に、「担任経由で女子からのバレンタインのお菓子を渡す時の正解って何だろう?」という疑問が浮かび、その答えを知りたくなった。

「よし、じゃあ、先生が終礼で男子にお菓子を渡すから任しとけ。昼休みにお菓子を持ってきて」と彼女たちに力強く宣言した。

 でも一番気になる疑問を彼女たちに聞く。

 「その男子の中に僕は入っているのかな?」と聞いたら「もちろん」と彼女たちは言ってくれた。少し安心した。自分の器の小ささに少し嫌気がさす


2.そもそもイベントの満足度はどんな要素で成り立っているのか?

 

そこから考え始める。そもそも彼女たちはどのようなことを望んで担任にお菓子を渡したのか。どのような状況になったら彼女たちは達成感や満足度を得られるのだろうか。

ここで踏まえなきゃいけないのは

① 全てのイベントにはみんなが予想する具体的なアクションがある。

② 全てのイベントは最後に達成感を得られる具体的なアクションがある


③ ①・②を満たしていないと生徒のイベント満足度は下がる。

ということだ。

① 全てのイベントにはみんなが予想する具体的なアクションがある。

「合唱コンクール」と聞いて思い浮かぶアクションっていくつかある。

<人間関係系のアクション>
パート決め→練習開始→男子がサボる→女子が泣き出す→みんな団結する

<合唱コンクールイベント関係のアクション>
開会式→全員で校歌を歌う→他のクラスの演奏聴く→自分たち歌う→結果発表→表彰式→担任からの一言→合唱コンクール委員から一言→クラス全員で写真を撮影する

だいたいこんな感じ。

僕らは上に書いたアクションが一つでも欠けると、そのイベントに対してある種の違和感を持ちやすい→満足度が下がる


② 全てのイベントは最後に達成感を得られる具体的なアクションがある

これが本当に大事。上に書いた合唱コンクールだったら、最後にクラス全員で写真を撮影することが、生徒が達成感とそのイベント終了を感じる具体的なアクションだと思う。

そのイベントの最後に行われて、そのアクションが終わったら「ああ、このイベントも終わったな」と感じられる「落としどころ」が必要。

そしてこの①・②が達成できると生徒の満足度は上がるが、そうでないと変な雰囲気でイベントは終了する。


3.じゃあ、今回のバレンタイン企画はどうする?


以上を踏まえた上で今回のバレンタインデー企画の「落とし所」って何だろう?

 もう一度考えてみる。彼女たちはどういう状態になったら嬉しいのか?そこで2つのことを思い出した。

 ①自分が料理を作った時に、料理を作ってあげた相手がご飯を全部食べてくれたら嬉しい。

②生徒の発言の中に、「少ししかお菓子を持っていかない男子がいるかもしれない」という言葉があった。

 以上2点により、このイベントの達成感を得られるポイントを「全ての男子がお菓子を持って行って、お菓子が全て無くなる」ことに決めた。おそらく、これが達成できたらお菓子を買ってくれた女子は嬉しいのではないかと仮説を立ててみた。


4.男子がお菓子を持っていくための小さな工夫


 昼休みになり、女子生徒がお菓子を持ってくる。「男女があまり話さないから、これ渡して変な感じにならないかな?」と心配している。担任として、なんとかしたいと思い、「大丈夫、きっと喜んでくれるよ」と声をかける。

 女子からお菓子を受け取り、これらのお菓子が全て男子によってもらわれるためにはどういう風にすれば良いかを考える。

ただ、女子からのお菓子は、男子一人一人に小分けされておらず、コンビニなどで買ったお菓子がパックに入ったままだった。

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 イメージとしてはこんな感じ。パックに入ったままのお菓子がたくさんあった。

おそらくこれだと、袋から取り出す作業が面倒なので男子はあまりお菓子を持っていかない気がする。なので、これらを全て袋から取り出して一つの大きな袋に入れて、中身が混ざるようにした。こんな状態だ。

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こういう感じにお菓子を入れ替えた。

これだと、お菓子をとるのが少し楽になる。そして少しパーティー感もあってなんだか楽しい

 さらに、ここで江戸時代の給料の払い方についてのエピソードを思い出した。それは玉川上水という上水道を作った時の話らしい。

 その時の給料の払い方は、箱の中にお金が入っていて、その中に手を突っ込んで、掴みとれた分がその日の給料になったらしい。

男たちはたくさんお金が欲しいから、このつかみ取りの給料システムは盛り上がったという話しを聞いたことがあった。

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 だったら男子に、「もらえるお菓子はこの箱の中に手をいれてひとつかみでもらえる分だけだよ。」とか言えば、競争意識とかが働いて、みんな争ってたくさんお菓子をもらっていくのではないか?と考えた。


5.バレンタイン企画本番

 

いよいよ終礼になり、みんなに声をかける。

 「なあ、男子。今日は何の日だ。そう、バレンタインだね。みんなは今日何個チョコもらったんだ。昨日、君たちはキットカットを一つもらったな。でもよく考えてみろ。それ、30代のおじさんからのチョコのプレゼントだぞ。それで良いのか。」※この前日に僕から生徒にキットカット渡してた

 落ち込む表情を見せる男子の数が多数。その様子を見てたたみかける。

 「だからさ・・・・・・・女子から君たちにプレゼントがあるぞ。ほら見ろお菓子だ。まずは女子にお礼を言おう。そして終礼終わったら教室の前においで。」と言う。

 この時点で男子は女子に「ありがとう」とは言うが、シャイなのか、心のこもった感じの感謝ではなかったような気もする。

達成感を感じるポイントをここに持ってきたら消化不良のイベントになるところだった。危ない。危ない。

 その後、男子を前に呼んで、お菓子の取り方に対するルール説明を行う。

 「いいか、みんな、お菓子の取り方は均等ではない。摑み取れた分だけ、お菓子をもっていきなさい。」

 男子のテンションが上がる。一番先に箱に手をつっこんだやつが思ったよりも大量のお菓子を掴み取って行った。「おい、お前ずるいぞ」と盛り上がる男子。

「いいぞ。いい感じだ。」女子が「少ししか持って行ってくれないかな?」と心配していたお菓子が目の前で、男子たちに取り合われている。「このままだと、最後の生徒まで残るのかな?」と心配するレベル。

 奇跡的に最後の男子の分がちょうどよい量残った。気がつくと、全てのお菓子がなくなっていた。

 空になった箱を今回のイベントの中心になった女の子たちのところに持っていく。

そうしたら「お菓子、全部なくなって良かった。すごい嬉しい。」と彼女たちは本当に嬉しそうだった。

 やはり、達成感を感じさせるポイントは、男子からの感謝の言葉ではなく、全てのお菓子がなくなったこと。そしてその証明として、空になった箱を見せる、というポイントに設定してよかった。仮説証明だ。うれしい。

 長々と、小さな出来事を書いてきた。でも、担任の面白さは、一見すると大したことない出来事について深く考え、関連している人たちの満足度を上げられるように場をコントロールすることだと思っている

 こういう細かい工夫をくりかえすことで良いクラスができるんだと信じて、明日以降もこういった小さなことに取り組んでいこうと思う。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

先生って楽しいですよ!!!

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