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【韓国留学生の日常】大学で進路カウンセリングを受けてみた


はじめに

『SNU Career Development Center キャリア開発センター』について

ソウル大学には、学生たちをサポートする機関が多数存在し、そのサポートの角度も様々。
私のような外国人留学生に関係が深い期間を幾つか挙げると、『国際協力本部(通称OIA, 国際系業務全般を担当)』や『大学生活文化院(通称대생문, 主に学生を含む大学構成員たちの精神面のサポートを目的としたプログラムを運営)』、『専攻設計サポートセンター(通称전설센터, 専攻/履修関連のカウンセリングプログラムを運営)』など。

これらに加え、学生たちの利用度が顕著に高いのが、『キャリア開発センター』だろう。進路や就職に関連したカウンセリングプログラムの運営や、関連情報の案内、エントリーシートの添削、模擬面接まで、文字通り学生たちのソウル大卒業後以降のキャリア開発に繋がるサポートを提供してくれる機関である。
私もこれまでその名を何度も耳にし目にしてはいたものの、実際に利用したことは1度もなかった。

ソウル大学キャリア開発センター公式ホームページはこちらから↓


『Career Group Counseling for International Students』開催案内メール

数日前、いつも通り大学からのメールをチェックしていたところ、とある1通のメールが目に留まった。

진로 進路』

1日に数十件単位で届く大学からのメールの中でそのメールが目に留まったのは、間違いなくこの単語が理由だった。
今年に入ってからと言うもの、日本の同級生たちが就活の代になり、SNSで「インターン」や「ES」などの単語を目にしない日はない。加えて、私自身も進路の方向転換を本格的に決め、まさに「キャリア開発」の道を模索する最中にいる。
そう、最近の私は「進路」の話題に敏感なのだ。

メールの差出人はキャリア開発センター、内容は『Career Group Counseling for International Students 外国人留学生のための進路グループカウンセリング』の開催を知らせるものだった。
プログラムは2日間計16時間に亘って行われ、5~10名ほどの受け入れを予定しているとのこと。

プログラム案内には、以下のようなペルソナ像が明記されていた。
「専門カウンセラーと進路の悩みを具体化させ、自身についてより深く理解したい外国人留学生」
「ソウル大生活で直面した困難について共有し、社会的支持と元気を得たい外国人留学生」
「今後どこで生きていくのか、何から準備していくべきか、外国人留学生という特殊な立場が故に抱く進路の悩みに対する解決策を一緒に探していきたい外国人留学生」

うん、私じゃん? 特に1つ目と3つ目。

ということで、迷わず応募。
今夏を捧げた日韓交流プログラムの運営業務もメインイベントの開催を以てだいぶ落ち着き、始業まで残り1週間何して過ごそうかな~という感じだったので、ちょうど良い。
余談だが、2日目とも昼食が提供されるという点も非常に魅力的ではあった。(2週間半の日本一時帰国を終えたばかりで、如何せん手元に食材が無い)


プログラム概要

前述の通り、プログラムは2日間に亘って行われた。
プログラムの大まかな流れは以下の通り。

<1日目>
- アイスブレイク
- SWOT分析
-『인생○○(人生最高の○○)』紹介
-『進路グラフ』作成


<2日目>
-「나는특별합니다(私は特別です)」ゲーム
- 職業探し
-『進路貸借対照表』作成
- ソウル大生活における悩み相談
- 進路障壁分析


これらのプログラムを、基本的には、
資料作成 or 考えの整理 -> 1人ずつ発表 -> フィードバック
といった流れで遂行した。

今回カウンセラーとしていらっしゃってくださったのは、教育相談学の現職教授。ソウル大で修士までを修め、博士はアメリカで修めたそうで、私たちの先輩に当たられる。
因みにこの教授、学士は全く異なる理系の分野で修められたものの、修士で現在の専門分野に方向転換されたとのことで、教授ご自身の進路選択過程についてのお話も非常に興味深かった。

また、今回プログラムに参加した学生は計6人。
プライバシー保護の関係で詳細には書けないが、出身国家も在籍課程も専攻も6人6様で、非常に刺激的な時間となったことは言うまでもない。


1日目

アイスブレイク

話した内容は次の通り。
- 簡単な自己紹介
- プログラム参加動機
:進路に対する現状の悩み、どのようなサポートを期待するのか

また、プログラム参加以前の私の進路の悩みの要点を整理すると、以下の通り。(また後日noteにまとめたい所存)
「外務省専門職員として日韓関係に貢献する」という既存の就職/進路目標の揺らぎ
- 外交官(国家公務員)という職業に対する適性の低さを自覚
-「日韓関係に貢献する」という目標は健在
「教育を通じた国際交流に携わる」という進路目標の具体化と方向転換
- 修士課程進学の意志が明確になりつつあるものの、修士課程における学びや生活に対する解像度が低い
- 具体的な就職目標の未設定
- 上記2つによる、スモールステップの未設定


SWOT分析

SWOT =『Strength 強み』『Weakness 弱み』『Opportunity 機会』『Threat 脅威』
SWOT分析 = 自身の内部/外部環境についてこれらを整理することで、現状分析を試みる手法。主に組織やプロジェクトにおける戦略立案や意思決定をサポートするために用いられる。

私のSWOT分析はこんな感じに↓

↑は作成途中に撮った写真のため、完成版の内容を踏まえ意訳すると、以下の通り。

<Strength 強み>
- 幼少期から進路目標の核心的部分(=日本と外国との懸け橋になる)がブレておらず、関連経験(留学や国際交流プログラムへの参加)が多い
- 日韓バイリンガル
- 国籍を問わず外国人との調和性が高い
- 常に高みを目指し続ける姿勢

<Weakness 弱み>
- 日本語 > 韓国語 >>>>>>> 英語 (相対的/絶対的な実践的英語力の低さ)
- 不明瞭/不正確な韓国語の発音
- Excel スキル皆無
- 聞き手の理解し易さを配慮しない話法

<Opportunity 機会>
- ソウル大で正規留学している学士課程の日本人は稀なため、課外活動やその他の機会が回ってきやすい
- (バイトをしていないため、周囲の友人たちに比べて)時間に余裕がある
- 韓国人/外国人を問わず知人が多いため、情報収集/交換に有利

<Threat 脅威>
- ベースが個人主義、協調性の欠如
- 我が強い(嫌なことは嫌、1度嫌いになったら一生嫌い)
- マイペース
- 修士課程進学を本格的に考慮するに辺り、(助言的な意味で)頼れる人が日本にいない

他の参加者の意見で目立ったのは、「多数の言語を話せる」という強みと「韓国人コミュニティに入りづらい(->情報や機会を得ずらい)」という弱み。いずれも「外国人留学生」という立場によるもの。
強みとして「体力」について言及している方もいて、これには思わず頷いた。学業も海外生活も仕事も、結局は体力(と根性)勝負なところはある。


昼食

バーガーキング。思ったより重いもの提供された。


『인생○○(人生最高の○○)』紹介

ここでちょこっと韓国語講座~(パチパチパチ)
韓国語で「인생」とは日本語の「人生」に対応する単語だが、後ろに名詞を置くと「人生最高の~~」と訳すことができる。
例えば、「인생샷(人生最高の1枚)」「인생 카페(人生最高のカフェ)」「인생 디저트(人生最高のデザート)」といったように。

今回は、『인생콘텐츠(人生最高のコンテンツ)』について、次のような流れで話を交わした。
- 自身の人生最高のコンテンツ(映画やドラマ、本など)を1作品選び、その理由と共に紹介
- その理由から、自身が特に重要視する価値観や憧れるの対象を分析

私の場合、
人生コンテンツ:『ジヴェルニーの食卓』(原田マハ, 2013)
選定理由: コロナ禍での交換留学中、作中で描かれる画家たちの生き様に感銘と勇気をもらったため。
重要視する価値観: 逆境に屈せず、自分の意志を貫く姿勢
憧れの対象: 短期スパンで望む成果や評価を得られずとも、長期スパンで物事を捉え努力できる根気強さ
と発表。

ちなみに、原田マハさんのアート小説は本当にどれも素敵なので…🥺皆さんもぜひ🥺🥺(ちゃっかり布教←)

『リボルバー』や『常設展示室』、『モダン』などもオススメです(^_−)−☆

他の方々は、웹툰(webコミック)『더 복서』や韓国ドラマ『정신병동에도 아침이 와요 精神病棟にも朝が来ます』、映画版『ジョゼと虎と魚たち』などを挙げていたかな?


『進路グラフ』作成

年齢を横軸、進路における満足度を縦軸に、グラフを作成するという、至ってシンプルな作業。

私のグラフはこんな感じ↓

グラフに記したポイントを簡潔に解説すると、以下の通り。

8~9歳: スイマーとしての頭角を現す
12歳: 水泳を辞める -> アイデンティティクライシスに陥る
14歳: 地元の海外派遣プログラムに参加 -> 国際交流と英語学習への意欲の高まり, 韓国人の友人との出逢い -> 韓国/日韓関係への関心の高まり
16歳: 高校進学, 韓国への交換留学を決意
17歳: コロナ禍での交換留学 -> 精神的ダメージ
19歳: GKS(韓国政府奨学金プログラム)&ソウル大合格
20歳: ソウル大入学 -> 就職目標のブレ + 秀才たちに囲まれ自信喪失 -> (またもや)アイデンティティクライシスに陥る、社会生活に疲弊
21歳: 進路目標の具体化と方向転換に成功

グラフを作成してみて気づいたのは、思った以上に私が私自身のこれまでや現状に満足しているということ。そして、今後も自分が上手くやっていくという確信があるということ。
これについては、2日間を通して、カウンセラーの教授からも何度も指摘(賞賛)していただいた。


2日目

「나는 특별합니다(私は特別です)」ゲーム

ウォーミングアップとして行ったこのゲーム。
ルールは至って簡単で、その場にいる自分以外の人が持っていないもの(有形無形不問)を順番に1つずつ言っていき、もし他の人がそれを持っていたらライフが1つ減り、最終的にライフが最も早く全て失くなった人の負け、というもの。
挙がったものの例を幾つか挙げると、ホクロなどの身体的特徴から演奏可能な楽器、専攻分野に関連した資格など。

朝でイマイチ上がりきっていなかったテンションを上げてくれたのは勿論のこと、普段外国人留学生として韓国で生活する中で自分を「特別」にしてくれるもの(語学面や海外居住経験など)が、同じ外国人留学生だけが集まったこの空間においては通用しないため、他の部分で「強み」を見つけるきっかけになったという意味でも、非常に有意義な時間となった。


職業探し

自身が関心がある或いは専攻分野に関連している職業のうち、「直近5~10年以内に就き得る」という条件付きで3つ選択し、
①その職業になるために必要な条件(学位や専攻分野、資格、試験など)
②その職業に就いた場合の生活(勤務時間や勤務地、福利厚生など)
③その職業に就いた場合の年収

以上3点についてそれぞれ整理する作業。

私が選択した3つの職業は、次の通り。
- 外務省専門職員
- 国際機構専門職員
- 日本語教師(in 外国)


この3つの職業の①~③について書き出す過程で気づいたのは、年収についてのイメージが比較的漠然としていたということ。そのため、就職目標決定過程における基本考慮事項であるにも関わらず、インターネット検索せずして記入できなかった。ただこれは、私がお金に興味がないからと言うわけでは全くなく、単に、外交官と国際機構職員いずれも公務員で、安定した収入が見込めることが明白なため、特に意識する必要やタイミングがなかっただけなのだと分析。
また、国際機構に関心を持ち始めて間もなく、持っている情報が僅かであること、一口に「国際機構専門職員」と言っても勤務機関によって状況は様々なため、条件を細部まで絞って調べる必要があることなど、今後の進路探究における指標になりそうなポイントも幾つか見えてきた。


『進路貸借対照表』作成

貸借対照表は、バランスシートとも呼ばれる。

『職業探し』で選択した3つの職業について、自身が進路決定時に特に重要視する条件(=価値観)に基づいて点数を割り当て、評価するというもの。

例えば、こんな感じ↓

ちなみに、↑は最初に作成したもので、この後に色々と調べたり他の参加者の話を聞いたりした上で考え直した、最終版がこちら↓

私は、左から順に、
- 就職難易度: 5点満点(難易度高0 <-> 低5)
- 目標符合度/達成度: 25点満点
- ワークライフバランス: 50点満点
- 自己成長と発展可能性: 20点満点
- 総合点: 100点満点

という割り振りで作成。

職業の並びは、
A: 国際機構専門職員
B: 外務省専門職員
C: 日本語教師
となっている。

この条件の選択と点数の割り当ては、今回のプログラムの全セクションの中でも特に個々の価値観がよく表れるものだったように思う。
例えば、私の場合、ワークライフバランスの配点が50点と全体の半分を占める値となっているが、これは全参加者の中でも圧倒的に高い値だった。私は、就職を含めた社会生活を送る上で、心の余裕と安定を優先視している。また、給与所得や福利厚生、勤務地などの条件もワークライフバランスの重要な構成要素だと考える。そのため、私生活に直結し得るあらゆる要素を包括的に評価するという意味で、高配点を付与した。
そんな私とは対象的に、とある参加者は「趣味や休息は退職してからでも追求できる。現役の間はとにかくバリバリ働きたい!」と、ワークライフバランスの配点をかなり低く設定していた。
このように、それぞれの価値観や、それを形成させたバックグラウンドについても掘り下げて聞くことができ、非常に興味深いセクションだった。

余談だが、就職先を決める上で外せない条件となってくる「ワークライフバランス」。日本語ではその頭文字を取って「WLB」と略すことが多いが、韓国語ではハングル表記「워크 라이프 밸렌스」の頭文字を取って「워라밸(ウォラベr)」と略す。
この法則は、「아아 = 아이스 아메리카노(アイスアメリカーノ)」「케바케 = 케이스 바이 케이스(ケースバイケース)」といったように、他の外来語にも適用することができるため、覚えておくと後々役に立つだろう。


昼食

しっかりめの韓食お弁当。最近小麦続きだったから有難い...!!


ソウル大生活における悩み相談

悩み相談というよりは、「外国人留学生としてソウル大で過ごす中で抱いた(けど未だ消化しきれていない)不満」を吐き出す時間と化していた。私も然り。
これに関しては、今後ソウル大や韓国の大学への進学を考慮する方々の参考になる部分かと思うので、いつかnoteにまとめたいと思う。


進路障壁分析

プログラム最後のセクションは、就職する際の「障壁」について分析する作業。
より具体的には、『進路貸借対照表』において総合点が最も高かった職業を目指すと仮定したとき、考え得る障壁を「環境/文化/脈絡的障壁」「心理的障壁」の2つに大別して書き出し、それらの克服方法を考えるというもの。

私の場合、進路貸借対照表において最も総合点が高かったのは、国際機構専門職員

そして、国際機構専門職員を目指す上で考え得る環境/文化/脈絡的障壁とその克服方法として、
①修士課程進学のための資金
- 学士課程で良い成績を取って給付型奨学金を狙う
- 学費が安い国を選ぶ
- JASSO(日本学生支援機構)の貸与型奨学金を利用する
②語学(英語&仏語×)
- 今いる環境を最大限に活かす(周囲の外国人留学生たちと言語交換)
- 短期留学プログラムをはじめとする外部プログラムを利用する
- とにかく必死に勉強する
と書き出した。

また、心理的障壁については、現時点では特に思い浮かばないため、空欄に。(어떻게보면이런낙관적인자세가나중에장벽이될지도ㅋㅋ)


プログラムを終えての感想

プログラム全体を通して、満足度は非常に高かったと声を大にして言える。
正直、もっと簡易的な学生主導型のプログラム設計であろうと予想して臨んだため、期待を遥かに超える体系的なそれに感動した。

プログラム中、カウンセラーの教授は「このプログラムの目的は大きく分けて2つ。1つは『自分が何を好きで何が得意なのかについて理解を深めること』、もう1つは『職業の世界について理解を深めること』です。」と何度も強調してお話されていた。私なりにその目的を、特に前者について、しっかり遂行できたと自負している。

このプログラムを通して見えてきた/再確認したこと。メモに整理して残す。

また、普段なかなか関わることがない、異なる学部や課程に在籍されている外国人留学生の先輩方と知り合い、彼らの人生の話に触れることができたことも、非常に有益だった思う。



ということで、今回は少し真面目に、私の進路ビジョンのお話でした~!!

ソウル大に正規留学している方や、今後ソウル大への正規留学を考えている方は、このプログラムやキャリア開発センター、他機関を、是非ともフル活用してください。(大学からのメールのチェックはこまめに💡)

このnoteが皆さんの(そしていつかの私の)参考になりますように!

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