助六の鉢巻は右結び
どうやら風邪を引いているらしい。思い当たる節がなくて困る。
病鉢巻というものがある。紫色の鉢巻を左に結び目をつくって垂らす巻き方で、熱を下げたり頭痛を抑えたりするために巻いているそうだが、時代劇などではともかく病人ですよということがそれでわかる。
特に病鉢巻は「保名」という演目で有名だ。許嫁を殺されて心を病んだ安倍保名が病鉢巻をしてふらふらと菜の花の中で舞い踊るという、一定の趣味嗜好を持った人が大変好きそうなシチュエーションを描いている。
私はその趣味嗜好に片足突っ込んでいる程度だが、弱ってる人が美しく見えるというのは、多数決をした場合過半数を超えてくるぐらいの支持を得ているのだろうか。
そういえばこないだ金ローで風立ちぬをやっていましたね。私はあれの、飛行機と戦争に対して終始淡々としていて、結果行きつく先が地獄だというのが事実であるところがとても好きだ。しかし結核と悲恋の辺りはちょっと胡散臭いなと思っている。
昔ドラマのビューティフルライフを見ていた母が最終回で、死んだらダメじゃないと泣き出してぎょっとしたのを覚えている。死んだらダメだというのは、泣かない意味で同意だ。虚構で美しく死なれても悲しくならない。
保名については、安倍保名と葛の葉姫(に化けた白狐)の子どもが安倍晴明です、という伝説に絡んだ話なので、その意味でも一定のファン層がいても良さそうな話なのだ。例によって江戸仕様になっているのを、出で立ちだけでも平安仕様にしたら新しい引きがありそうと思うのだが、どうだろう。
鼻風邪なので病鉢巻ではどうにもなりそうにない。
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