ここがおちつくんです

また読書感想文なるものを書きました。今回読んだのは『絵本すみっコぐらし そらいろのまいにち』です。
名著。これは名著。
何度も何度も読み返した絵本です。
だから思い入れが強すぎて逆に感想文を書くのはやたら時間がかかりました。前半なんてほとんどコピペなのに。
自分で勝手に課した文字数の制限もあってまったくこの本を語り尽くせていないので、興味が出た方はすぐさまポチるか書店に走ることをおすすめします。


りそうのすがたになりたいのになれない自分。
ほっそりねこにかわれたら きっとなにかかわるかな。
明日はなにかかわるかな。
かわりたい自分。
かわらない毎日。
はずかしい、はずかしい。
あのころからなにもかわらないままでおちこむねこ。

きっとおいしくたべてもらえる。
あのときそうおもったのに。
たべものはたべるもの。
たべられなかったらなんのもの?
のこりものはなんのため?
こころもころももじめじめしてしまうとんかつ&えびふらいのしっぽ。

バレたらきっとつかまっちゃう。
だからとかげのふり。
みんなにもないしょ。
だけどときどきかんがえる。
うそをつくのはわるいこと?
うそつきはわるいコ…?
うそをついてごめんなさい。
うそをついてごめんなさい。
ぐるぐるぐる。かんがえちゃってねむれないとかげ。

うまれたときからさむがり。
ほかのみんなみたいにそとにでられない。
いつもひとりでおうちのなか。
いつもおなじ。
まっしろなけしき。
もうここにはいられない。
ぽかぽかのうみをめざして出発したしろくま。

みつからない、みつからない。
自分はなに…?
なにをしてもなにかちがう。
どこにいてもここじゃない。
自分はなに?
なかまはどこ?
いつでもどこでも自分をさがす。
なのに今日もやっぱりみつからないぺんぎん?

この本に載っているのはすみっコたちそれぞれのものがたり。
でもこれはすみっコたちだけじゃない。自分自身のものがたりでもある。そしておなじようなものがたりを抱えている人にもたくさん出会ってきた。

こんなはずじゃなかった。
自分なんて生きる価値がないと思った。
本当の自分を誰にも出せなかった。
居場所がどこにもなかった。
他の人とおなじようにできなかった。

教室で、公園で、教会で、法廷で。
そうこぼす人のすがたを何度も見てきた。
涙を流しながら話す人もいた。
自嘲ぎみに笑いながら話す人もいた。
怒りながら尖った声で話す人もいた。
こぼれ落ちてしまった人たち。
こぼれ落ちる…どこから?
こぼれ落ちて…それから?
ぐるぐるぐる。とかげみたいにかんがえる。
他人事じゃない。自分のことでもある。たとえ自分のことでなかったとしても、他人事にしちゃいけない。

こぼれ落ちてしまうこと。
それは失敗に見えるかもしれない。
欠損に見えるかもしれない。
だけど欠損をしているから持てる優しさだってある。
こぼれ落ちた人にしかわからないこともある。
こぼれ落ちた人にしか行けない場所もある。
すみっコは本当はどこにでもある。
歩みの遅い者や自分と違う属性の者を押しのけ、差別し、嘲笑し、そうすることでしか自分の存在の確かめを得られないような人間には絶対に行き着くことのできない場所、すみっコ。
そういう場所に行き着いて、ぽかぽかグッズに身を包んでキュウリでも食べたいと思う。そんな時が来たら僕はきっとこう言うのだろう。

ここがおちつくんです。


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