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過去と別れを告げて明日はない覚悟して17時間前の昨日を生きるTravis Japanへ

2022年3月3日は、たぶんトラジャ担にとって最高に楽しい夜になるはずだった。

いい夜を共に……みんなにとっていい日に……と言われ、全員が「アーカイブ残らないからインスタライブ見てね!」ととらまるを更新する事態は、どう考えても何か大きな発表があることを物語っており、あぁいいお知らせがあるんだな、なんてウキウキしながらその時を待った。

けれど、その期待は始まってすぐに打ち砕かれ、トラジャ担の間をかつてないほどの衝撃が走った。

「我々Travis Japanは、3月下旬にアメリカ・ロサンゼルスに行くことになりました」

わたしは、ハリウッドサインをバックに満面の笑みでピースする7人の姿を思い浮かべた。たくさんのスターが暮らす、アメリカ第2の都市。ラグジュアリーな街並みに開放的なビーチ。そして、エンタメの聖地であり彼らにとっての夢のハリウッド。「ええやばい!」と、全身の血が沸騰したかのように熱くなったのを覚えている。

でもそれが思っているような「渡米」ではないことがすぐに分かった。これは「短期間の大仕事」ではなく、「無期限の武者修行」だったのだ。

誰も予想しなかった重大発表に最初こそ絶句したものの、少し緊張が解けたような面持ちの7人がキラキラとした顔でこれからのことを話していく様子をみながら、ワクワクが止まらなかった。しかもシェアハウスって。合宿所じゃん、何なの仲良しかよ可愛いな。その光景見たすぎるわ。

普段はネガティブなくせに、自担のことになると急にポジティブお花畑になるのは、わたしの長所でも短所でもある。それが、今回はちょっと悪い方に出すぎたのかな、と今さらながら反省している。

すぐに時差アプリを入れ、World Of Danceの概要やLAの語学学校を調べた。旅行誌を眺めてこの街を歩く7人を想像し、こんなコンペに出るんだ、チャレンジ精神がカッコよすぎる、とその留学生活に思いを馳せながら、「違う、そうじゃない」と我に返った。

そして一周遅れて悟った。
たった今Travis Japanとトラジャ担の想いが乖離し、双方の間に分厚い壁が出来てしまっているのだということを。

聞けば、この話が持ち上がったのは2020年のことだそう。7人は約2年の間、しっかり留学について考えてきたわけだ。それをさっき聞かされたばかりのファンが飲み込めるわけがない。冷静になって見渡せば、トラジャ担界隈はまるで地獄のような大混乱に陥っていた。

応援の仕方や考え方には正解も不正解もない。そうだ、今「トラジャやっぱすごいわ!」とわたしの心が躍っていることだって、決して間違っているわけではない。もちろん同じように考えている方だって然りだ。
全く同じ価値観の人なんて存在せず、多数派もいれば少数派もいる。
ひとりごとのように思ったことを好きに呟き、好きなことに反応できる。見たくないものには蓋をできる機能も備わっている。基本的に、自分のことは自分で守る。それがSNSというものだ。

分かっている、全部分かっているんだけど。

高ぶる気持ちをそのまんまツイートしたあとに生まれたのは、小さな違和感と恐怖だった。わたしは、何となく初動を誤った気がしたのだ。

同じグループを応援するファン同士の繋がり、交流を目的に利用しているアカウントだからこそ、今のわたしが言葉を発すれば発するほどに、知らず知らず誰かを傷つけるのかもしれない。
頭に血が上っているときの未精製なポジティブすぎる言葉は、ふとした拍子に思わぬトゲを刺す可能性があることをわたしは知っているはずだった。

あぁ悪い癖がでた。テンションが上がりすぎてしまったと、慎重に言葉を選びながら、どれもこれも何か違う気がして書いては保存、書いては保存を繰り返すうちに、何を言いたいのかが分からなくなってしまう。結局外に漏れ出ないようひっそりと消し去ることにした。

それと並行して、わたし自身も数多の感情と言葉たちに息苦しくなっていった。インターネットの海に浮かぶのは、トラジャ担の「寂しい悲しい嫌だ行かないで」だけではない。目を疑うような悪意ある言葉だって、気持ちを逆撫でするような冷やかしだって、そこかしこから湧き出ては、いつのまにか目の前に流れ着いている。

自分と彼らの声しか聞こえないような場所を求めて、SNSやネットニュースから距離を置いた。最近はYouTubeにも注意が必要になって少々困る。

わたしはあるときから、ジャニーズ界隈がざわついたらこの行動をとるようになった。布団を被って目を閉じ、彼ら以外の言葉をそっと一つずつ、なるべく丁寧に外していく。決して削ぎ落としはしない。

個人的にはこういうとき、他G担の友だちやジャニーズが身近ではない人たちに話し、ノートに書き出すことで頭を整理していく。如恵留くんがくれた日記という習慣は、ただ書きなぐるよりも時系列や心の変化を可視化できるいいツールだった。

ひたすら話す、書くを繰り返す。アイドルのことを「ああでね、こうでね」と真剣に、必死に語りつづける姿は、アイドルを応援していない人には滑稽に映るかもしれない。きっと迷惑極まりないけれど、自分の心を整える一つの手段としてありがたく甘えている。

数日間をかけ、一旦彼らの気持ちすらも置いといて、「本当はどう思ってる?」「強がってるんじゃないの?」「これからファンとしてどうしたい?」と自問自答をしながら、残ったものはやっぱり「Travis Japanの未来を応援したい」というシンプルな気持ちだった。

Travis Japanは、遊びに行くのではない。
彼らの感じている〈期待〉は、わたしたちが旅行前に感じるような「楽しみ!」だけのそれとは違う。人生のすべてをかけて、一般人には想像すらできない〈世界〉という果てしなく遠い舞台に挑みに行くのだ。

インターネットが発展した現代において“ 世界進出 ”といわずとも、ジャニーズのファンは世界中にいる。ダンスが武器であるジャニーズアイドルとして根気強くパフォーマンスを発信しつづけていれば、いつか必ずや多くの海外ファンがつくのだろう。

それでも、全編英語詞をまだまだカタカナ発音で歌う7人のジャパニーズアイドルは「世界を目指したい」「Travis Japanがトップを獲る」と、力強く口にする。これが本気じゃなくて何だというのか。

何かとんでもないグループを好きになっちゃったな。こんなモンスターたちを支えることができるのかな、こんな非力なわたしたちが。

けれど、そんなモンスターたちだって理想と現実の狭間で、無力感に襲われる日もあるかもしれない。精神的にも肉体的にも追い込まれ悲鳴をあげる日も、「もう帰っておいでよ」と言いたくなる日もあるかもしれない。わたしたちには前向きなことを言いながら、実はとてつもない不安を抱えているかもしれない。

そんなとき、どうするのだろう。どうやって彼らは立ち直るのだろう。
そうだ。非力だろうが何だろうが、Travis Japanを支えられるのはトラジャ担しかいないんだ。

スノストのデビューを目の当たりにして、コロナ禍でたくさんの仕事を奪われて、「自分たちにしかできない活動」を考えつづけた約2年。それだけ経っても捨てきれなかった望みがあるのだから。ここにあるすべてを手放してでも、掴みたいものがあるというのだから。

やらずに後悔して一生引きずるぐらいなら、行ってこい、Travis Japan。

何度問いかけてみても、学生みたいな平日午前に親近感を覚え、といいながら過ごす日々と人生で背負うもののスケールの違いを尊び、早々と待ち受けに設定した時差時計を眺めては「インスタライブは日本時間の日曜昼かな」なんて楽しみにして、そのスケジュール休む時間ある? ダメだよ自分たち優先にしなさいと親心のような心配もして、一回りも二回りも大きくなった彼らに「おかえり」と言える日を心待ちにしてしまう。

「すごい、カッコいい、すごい」とひたすら繰り返すわたしには、綺麗事だけじゃ割り切れない、お前は何も分かってない、能天気すぎると言われれば返す言葉は見つからない。
でも、未知の世界へ飛び込む恐怖よりも「やりたい」の方へ心が動いた好きな人の、大好きな人たちの決心に「トラジャ担も腹をくくらなければ」という武者震いが止まることは、やっぱりなかった。

3月3日から7日間、殻に閉じこもり毎日彼らのことを考えつづけ「ええやばい!」の第一声から言葉や形は変わったけれど、最初から想いだけは変わらないものと確信し、よし、これを言葉に残そうと思い至った。

そしてトラジャ担はどうしてるかな、元気にしてるのかな、あわよくばたった一人でもいいから誰かに何か届けばと、できるだけトゲを残さないよう荒削りながらヤスリをかけて、このnoteを形作ってみることにした。

◇ ◇ ◇

「行くだけは誰でも出来る」と社長は言うけれど、行きたくてもそれさえ叶わない人だって世の中にはたくさんいる。現にわたしは、学生時代にしなくて後悔したことの一つが留学だし、ワーホリなんて夢のまた夢だった。この渡米がもしTravis Japanがデビューしたあとだったなら、それはもう「留学」ではなく「転勤」になるのだろう。

こんな時期に、これほどのお金をかけて、7人全員があのロサンゼルスへ、「夢のHollywood」へ留学させてもらえる。それだけでももうすごいことだ。これは、ジャニーズ事務所にとっても一世一代ともいえる大勝負の大投資なのだから。

Travis Japanは温かくて優しくて、いつだってファンのことを想ってくれる。この選択に当然泣いてしまうことも、不安になることも、離れる人がいるかもしれないことも分かっていたはずだ。あんなに強く結ばれていたファンとの絆が解けてしまうかもしれないことも承知の上で、この環境から離れることにしたのだろう。

あの夜は、直後に同時更新されたとらまるを一人ずつ丁寧に読んだ。ファンへの寄り添い方は三者三様。言葉の選び方も各人らしいな、ファンは自担のこういうところが好きなんだろうな、と思いながら何度も何度も。そして最後にのえまるに辿り着き、のえ担として彼の言葉を一言一句逃さないよう、ゆっくりスクロールしながら、一度だけ泣いた。

「そんなに悲しい顔しないで~!」と、しんみりしないようにあくまでも明るい言葉を綴る如恵留くん。そんな風に言われたら、逆に泣いちゃうの分かってるんだろうか。まぁ、あなたなら分かってるか。

あなたは本当に強いね。でもその強さは、揺るぎない決意をした人だけが持つことができる優しさでもあるんだね。

そういえば、2月19日がコペルニクスの誕生日だって書いてたっけ。新しい価値観を唱えるのは最初は賛同してもらえず勇気のいることだけど、きっと誰かのためになるって。Travis Japanは21世紀のコペルニクスだというわけかい。

空は繋がってるよ、同じ空の下だよ、とは言うけどさ、わたしが見た月をあなたが見るのは17時間も後なんだよ。「今日は月がきれいだね」って言ってもすぐには伝わらないんだよ。そんなところに、行っちゃうんだね。それでも言ってくれるのかな、「今日も月がきれいだよ」って。


Travis Japanの活動においてこれまでも予想を上回ってきたことは数あれど、これは少々斜め上がすぎた。
これから先Travis Japanを応援していく過程では、今までの慣例や経験が通用しないのかもしれない。もうこれ以上驚くことはないと思うけれど、まだまだ序の口なのだろう。本当に『Travis Japan』っていう一つのショーみたいなグループだな。めちゃくちゃ面白いね、トラジャは。
あぁもう、上等だよ。振り落とされないように踏ん張れる力を、こっちだってつけていくよ。

最後に確認だけどさ、みんな本当に行きたいんだよね。挑戦したいんだよね。今行かなきゃ後悔するんだよね。本当だね?    嘘じゃないね?

――じゃあ、いってらっしゃい。気をつけてね。ここでずっと待ってるからね。

◇ ◇ ◇

気づけば出発の日はもうすぐ目の前に迫っている。
17時間という時差もトラジャ担の心に空いてしまった穴も大きいけれど、いつか必ず埋まる日が来る。

NOE'SキッチンやASLコーナーがISLAND TVでシリーズ化したり。松松の古着屋巡り旅 in LAをやったり。しーくんがアメリカンサイズの庭でバスケしたり、ちゃかちゃんが編集した動画が上がってみたり。ほら、しめんちゅやっぱり喧嘩してんじゃんって日があったり。

もしコロナが落ち着いていたら、今日のお休みは夢の国に行きました、ユニバに行きました、サンタモニカでザ・西海岸イェーイ!みたいな投稿もあったらいいな。
NYにはkemioくん、LAなら赤西仁くんも、YOSHIKIさんもいるね。まぁさすがにこの二人は会えるか分からないんだけど。

発信してくれるのは嬉しい、でも絶対に無理はしないでね。あんまりこっちに寄り添いすぎないで、しっかり休んでプライベート大事にしてね。いろんな人に会って、いろんなものを見て、いろんな経験してきてね。

きっと毎日思うよ。Travis Japanはみんな仲良くやっているかなって。

今日も明日も笑っているかな。美味しいもの食べすぎてないかな。掃除当番で揉めてないかな。慣れない環境で体調崩してないかな。心が壊れそうになってないかな。泣いてしまう夜はないかな。時に挫けそうになりながら、心一つにみんなで励ましあっているかな。

Travis Japanの2幕へ向けて、夢のような憧れの街で、イヤな事忘れて、自分にしか歩めない人生を楽しんでいるかな。

そうだと、いいなぁ。

◇ ◇ ◇

そう言いつつも、当然めっっっっちゃくちゃ寂しいし、社会情勢的に心配なこともたくさんあるし、無期限ってトラジャのデビューはどうなるんだよ、待ってるだけってつらいよという想いもある。本当にこれで良かったのか、と悶々とする日だってあると思う。

そんな時に支えになってくれるのは、やっぱりTravis Japanであり、トラジャ担なのだ。
ワクワクしている人も、まだまだ受け入れられない人も、時間をかけながらゆっくり応援したいと思っている人も、誰もがみんな群軽折軸の精神で「Travis Japanを支えることができる人」。トラジャ担はトラジャ担で、自分たち自身もお互いに支えあいながら生きていく。嬉しい日もちょっと寂しくなる日も、いつだって一緒だ。

ただ、そうやって待ってるだけの毎日じゃつらくなるし、何だかもったいない。こんなにもカッコいいトラジャに負けないように、わたしたちがトラジャ担でよかったと思ってもらえるように。
さぁ、これから何をしよう。何をしながらその日を待っていようか。

まずは、This is a pen. I can't speak English.から卒業することにしようかな。

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