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薬師信仰

 薬師如来は東方浄瑠璃世界(瑠璃光浄土)の教主で、瑠璃光で衆生の病苦を救うとされ、日本における薬師信仰は7世紀後半には既にあったという。

薬師如来が説かれている経典には、
・永徽元年(650年)玄奘訳『薬師瑠璃光如来本願功徳経』(薬師経)
・景竜元年(707年)義浄訳『薬師瑠璃光七佛本願功徳経』(七仏薬師経)
がある。

「病を治してくれる」という功徳(現世利益)のため、多くの人々の信仰を集め、造られた仏像数は、釈迦如来と並び、最も多い。(薬師如来は釈迦如来が衆生の病苦を救う時の姿とする説もある。また、薬師如来は、東方の阿閦(あしゅく)如来(阿閦仏)とも同一視される。)

現世利益:「病の治癒」を含め、12の功徳がある。

菩薩(修行中)は、「如来(仏)になったらこれを実行する」という「誓願(せいがん)」を立てる。

《顕教「四弘誓願(しぐせいがん)」 / 密教の「五大願(ごたいがん)」》

①衆生無邊誓願度(しゅじょうむへんせいがんど)
②福智無邊誓願集(ふくちむへんせいがんしゅう)
③法門無邊誓願覺(ほうもんむへんせいがんかく)
④如来無邊誓願事(にょらいむへんせいがんじ)
⑤菩提無上誓願證(ぼだいむじょうせいがんしょう)

『薬師瑠璃光如来本願功徳経(薬師経)』によれば、薬師菩薩は、これとは別に、次の「十二誓願」(別願)を立て、薬師如来(仏)となったという。

《十二誓願(別願)》

第一願   相好具足(そうこうぐそく)
第二願   光明照被(こうみょうしょうひ)
第三願   所求満足(しょぐまんぞく)
第四願   安立大乗(あんりゅうだいじょう)
第五願   持戒清浄(じかいしょうじょう)
第六願   諸根完具(しょこんかんぐ)
第七願   除病安楽(じょびょうあんらく)
第八願   転女成男(てんにょじょうなん)
第九願   去邪趣正(きょじゃしゅしょう)
第十願   息災離苦(そくさいりく)
第十一願  飢渇飽満(きかつほうまん)
第十二願  荘具豊満(そうぐほうまん)

「病を治す」というのは、「第七願 除病安楽」であり、信じて頼めば、これ以外にも11の事をして下さる。

『薬師瑠璃光七仏本願功徳経(七仏薬師経)』では、薬師如来を中心とする「七仏薬師」について説かれ、天台密教では、「七仏薬師法」が息災・安産をもたらす修法として重要視されている。鳳来寺の利修仙人が文武天皇の病気を治す時もこの修法が使われたと思われる。

《七仏薬師》

①善名称吉祥王(ぜんみょうしょうきちじょうおう)如来
②宝月智厳光音自在王(ほうがつちごんこうおんじざいおう)如来
③金色宝光妙行成就王(こんじきほうこうみょうぎょうじょうじゅおう)如来
④無憂最勝吉祥王(むうさいしょうきちじょうおう)如来
⑤法海雲雷音(ほうかいうんらいおん)如来
⑥法海勝慧遊戯神通(ほうかいしょうえゆげじんつう)如来
⑦薬師瑠璃光(やくしるりこう)如来

 国分寺の御本尊は薬師如来で、護国の仏であったという(『先代旧事本紀大成経』にも聖徳太子が「東方尊薬師如来也。護王道国家尊也」と言ったとある)が、その後、「現世利益の仏」としてブームになるも廃れた。その理由には、
①願ったが、いつまで待っても願いが叶わない。(金持ちになれないし、疫病で死ぬ人も絶えない。)
②仏教の教義は難しい。経典も読めない。苦しい修行を積む必要があると思っていたが、「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」と唱えるだけでいいとする鎌倉仏教の浸透と発展。
があり、現世利益は仏(薬師如来)ではなく、神(稲荷神)に求められた。 
 また、薬師如来は、「鳳来寺山麓の湯谷温泉は利修仙人が発見し、利修仙人は温泉効果で長生きした」、「霊泉(水体薬師)で目を洗うと眼病が治る」という「温泉&霊泉の仏」へと変貌した。(この意味では、一畑山薬師寺岡崎本堂から温泉が湧き出ても、「さもあらん」と、驚くことではない。)

★一畑山薬師寺岡崎本堂


薬師信仰で驚いたのは、「厄除け」の臨済宗妙心寺派(総本山は出雲の醫王山一畑寺)・一畑山薬師寺岡崎本堂(愛知県岡崎市藤川町王子ケ入)へ行った時です。とにかく、でかい! 世界心道教(元天理教信者・会田ヒデの体に月読之命と国狭土之命が天下って天啓者となったのを機に設立された新宗教)本部(愛知県豊川市諏訪)の巨大な釘貫門と、将来、国宝に指定されるのではと思われる三重塔を見て以来の衝撃でした。

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・世界一大きな木魚
 ※直径1m以上!
・世界一大きな純金箔薬師如来涅槃像(平成24年(2012年)完成)
 ※「薬師(やくし)」に合わせて8.94m。

 第二次世界大戦の最中、名古屋市に住む20歳の青年が、出雲に疎開した。近くに醫王山一畑寺という寺があり、行ってみると、口から薬師如来が飛び込み、神通力を得たという。戦後、名古屋市に戻り、占い師(身の上相談)をしていると、崇拝者が増え、「大金持ちになれたのは薬師如来のおかげ」として、寺を建てようとしました。(最近(令和3年(2021年)11月8日)亡くなられた「六星占術」の創始者・細木数子さんも京都府京都市右京区梅ケ畑猪ノ尻町の50億円の別荘の敷地に70億円で寺を建てられましたね。私的には占星術は、仏教というより道教とか陰陽道のイメージなんですが;)とはいえ、名古屋市では地価が高い上に、広い土地が見つからなかったので、岡崎市の国道1号線沿いの牛乗山(7万坪)を買って、一畑山薬師寺を建立しました。(現在は、名古屋市千種区春岡一丁目に「一畑山薬師寺 名古屋別院」があります。)そして、なんと、なんと、平成14年(2002年)、天然温泉「一畑山薬師寺 御霊泉」が湧き出ました!
 一畑山薬師寺へは、初詣や節分に行きますが、普段は「厄除け」に行きます。御祈祷料には入浴料が含まれています。「一畑山薬師寺 御霊泉」は、飲用可能な低張性アルカリ性冷鉱泉で、入浴前にお持ち帰り用の空のペットボトルがプレゼントされます。

醫王山一畑寺:「目のお薬師様」として知られる島根県出雲市小境町の臨済宗妙心寺派の寺。一畑薬師教団(島根県出雲市の一畑寺を総本山とする明治13年(1880年)設立の薬師信仰の教団)の総本山。
https://ichibata.jp/

★薬師信仰の論文&本


・湛澄『薬師如来利益抄』1695
・超海通性『薬師如来瑞応伝』1727
・超海通性『瑞応塵露集』1733
https://note.com/sz2020/n/na64b01de6419
・五来重(編著)『民衆宗教史叢書 第12巻 薬師信仰』(雄山閣)1986
https://www.yuzankaku.co.jp/products/detail.php?product_id=3720
・飯塚幸謙『薬師如来―病苦離脱へ』1987
・榛原町教育委員会『郷土シリーズ30 郷土の薬師信仰』1991
・西村公朝他『薬師如来 (魅惑の仏像)』1993
・小林信彦『薬師信仰』1995
・斎々坊『釈迦・薬師信仰便覧』2000
・西尾正仁『薬師信仰―護国の仏から温泉の仏へ―』2001
http://www.iwata-shoin.co.jp/bookdata/ISBN4-87294-185-3.htm
・大森恵子『霊水と薬師信仰』2002
・越智翼『日本古代の薬師信仰(抄)』2006
・護国寺図書室主事・小野妙恭『薬師如来瑞応伝』2011
・安田暎胤『お薬師さまと生きる』2018
・有働智奘『古代日本における薬師信仰の受容』2018
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ibk/66/2/66_703/_pdf/-char/ja
・鈴木健郎『日本の山岳信仰と温泉』2019

薬師信仰ブームは確かにあったが、戎光祥出版の神仏信仰事典シリーズ(全10巻)には無いんだよなぁ。地蔵信仰も、庚申信仰も無いけどね。スサノオ信仰と祇園信仰を1冊にまとめて、薬師信仰を入れて欲しかった。
1 七福神信仰事典
2 えびす信仰事典
3 稲荷信仰事典
4 観音信仰事典
5 熊野三山信仰事典
6 八幡信仰事典
7 スサノオ信仰事典
8 厳島信仰事典
9 不動信仰事典
10  祇園信仰事典
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA38867784

★薬師如来霊場


・『ニッポンの霊場』「薬師如来霊場

 ・七薬師霊場←『薬師瑠璃光七本願功徳経(七仏薬師経)』
 ・十二薬師霊場←「十二誓願(別願)」、十二神将
 ・四十九薬師霊場←七仏薬師法、四十九日(泰山王=薬師如来)

*七仏薬師法:上掲の七仏薬師に祈って延命、息災、安産等を得る修法。
*死後四十九日目に閻魔大王の判断により、極楽浄土へ行けず、地獄落ちに決まっても、薬師如来の信者であれば、薬師如来(泰山府君)がこっそりと自領の東方瑠璃光世界へ連れて行ってくれる。

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【遠江国】


■東海四十九薬師霊場(遠江国分)
39番 定光山金地院(浜松市)
https://note.com/sz2020/n/n5c3becdca628
40番 天龍山洞雲寺(浜松市):「天龍薬師」
http://www.dounji.com/
https://note.com/sz2020/n/n685fd36d15cf
41番 冨士山東光寺(浜松市):「三願一得坪井薬師」
番外 華嶽山世楽院(掛川市)

■遠江四十九薬師霊場
1番 参慶山延命院国分寺(磐田市)
https://note.com/sz2020/n/n74eff5d9333a
2番 無量山泉蔵寺(磐田市)
3番 嶺松山金台寺(磐田市)
4番 万松山宗安寺(浜松市)
5番 東光山正医寺(磐田市)
6番 士石山林昌寺(磐田市)
7番 瑞雲山妙法寺(磐田市)
8番 鶴翁山松林寺(浜松市)
9番 長福山松雲寺(浜松市)
10番 古真山安正寺(浜松市)
11番 瑠璃山龍谷寺(浜松市)
12番 青林山頭陀寺(浜松市)
https://zudaji.or.jp/
https://note.com/sz2020/n/n4b60f6ac917a
13番 三島山神宮寺(浜松市)
14番 宝林山成金寺(浜松市)
15番 護法山地蔵院(浜松市)
https://jizouin.net/
https://note.com/sz2020/n/nee9c9ac65f9a
16番 長松山富春院(浜松市)
https://fushunin.jp/
17番 大徳山広隣寺(浜松市)
18番 二つ御堂(浜松市)
https://note.com/sz2020/n/n95b3003fe7f4
19番 白王山大厳寺(浜松市)
20番 天王山福厳寺(浜松市)
http://www.fukugonji.info/
21番 宝蔵山宗源院(浜松市)
https://note.com/sz2020/n/n645973a321c2
22番 先照山心造寺(浜松市)
23番 真徳山天林寺(浜松市)
http://www.tenrinji.com/
24番 華木山少林寺(浜松市)
25番 赤池山白華寺(浜松市)
https://note.com/sz2020/n/n6c59d5495daa
26番 薬王山真光寺(浜松市)
27番 小松山光正寺(浜松市)
28番 龍宮山岩水寺(浜松市)
http://www.gansuiji.jp/
https://note.com/sz2020/n/n8257da3f4589
29番 東谷山栄林寺(浜松市)
30番 阿蔵山玖延寺(浜松市)
http://www4.tokai.or.jp/kyuenji/
https://note.com/sz2020/n/n6464bd57e0d0
31番 万世山一雲斎(磐田市)
32番 城谷山蓮台寺(磐田市)
33番 虎峰山龍源院(袋井市):「山田薬師」
https://www.ryuugen.jp/
34番 医王山建福寺(袋井市)
35番 白龍山蔵泉寺(袋井市)
36番 清水山長泉寺(袋井市)
37番 安養山西楽寺(袋井市)
https://www.sairakuji.site/
38番 医王山薬王院油山寺(袋井市):「遠州三山」「目の霊山」
https://yusanji.jp/
https://note.com/sz2020/n/n7b219e7691f0
39番 献寿山鶴松院(袋井市)
40番 陽福山宗円寺(袋井市):「妻薬師」
41番 医光山心宗院(袋井市)
42番 壑雲山長溝院(袋井市)
43番 龍富山松秀寺(袋井市)
44番 松龍山寿正寺(磐田市)
45番 護国山全久院(磐田市)
46番 鎌田山金剛院医王寺(磐田市)
https://www.iouji.net/
https://note.com/sz2020/n/n399a4d178a28
47番 招宝山東昌寺(磐田市)
48番 東福山西光寺(磐田市)
https://www.saikouji.pw/
49番 大梅山慈恩寺(磐田市)
客番 風祭山福王寺(磐田市) :「沼薬師」
https://note.com/sz2020/n/n05914a9e5f37
番外1 瑞光山長泉寺(磐田市)
番外2 早出薬師堂(浜松市)
https://www.soudechojitikai.com/yakusikou

【三河国】


■三河三薬師霊場
・霊鷲山降劒院真福寺(岡崎市真福寺町):「水体薬師」
https://www.shinpukuji.com/
https://note.com/sz2020/n/necc2e5b4eb0e
・医王山天宗寺(豊田市木瀬町)
・瑠璃光山薬師寺(豊田市川見町):「川見薬師」

■東海四十九薬師霊場(三河国分)
35番 芙蓉山蓮華寺(岡崎市)
36番 霊鷲山降劒院真福寺(岡崎市):「水体薬師」
https://www.shinpukuji.com/
https://note.com/sz2020/n/necc2e5b4eb0e
番外 吉祥陀羅尼山薬樹王院瀧山寺(岡崎市)
http://takisanji.net/
https://note.com/sz2020/n/nfd95eb16f2dd
38番 黄梅山渭信寺(岡崎市)
http://www.zensorin.net/ez/ishinji/index.html
43番 仙寿山全久院(豊橋市)
44番 薬樹山医王寺(田原市)
http://atsumi-iouji.info/

■東三河二十四ヶ所薬師
1番 煙巌山鳳来寺(新城市)
https://note.com/sz2020/n/n92bef02679e4
2番 長篠山医王寺(新城市)
http://www.katahanoashiiouji.com/
https://note.com/sz2020/n/n0585b64975ae
3番 吉祥山永徳寺(新城市)
4番 瑠璃山金剛寺(豊川市)
5番 迦葉山妙劉寺(豊川市)
6番 玉清山医王院浄泉寺(豊川市):「 赤坂薬師」
7番 医王山福能寺(豊川市)
8番 天牛山医王寺(豊川市)
https://www.facebook.com/Iojitoyokawa/
https://note.com/sz2020/n/nb975614f98a9
9番 坂田山東林寺(豊川市)
10番 花林山神泉寺(豊橋市)
11番 海潮山蛤珠寺(豊橋市)
12番 大慈山歓喜寺(豊橋市)
13番 大永山薬師寺(豊橋市)
14番 正行山専願寺(豊橋市)
15番 仙寿山全久院(豊橋市)
16番 三野山薬師寺(豊橋市)
17番 赤岩山赤岩寺(豊橋市)
https://note.com/sz2020/n/n31415156413d
18番 塩満山潮音寺(豊橋市)
19番 医王山東光寺(豊橋市)
20番 長松山太平寺(豊橋市)
21番 野田山法光院(田原市)
22番 瀧涌山法蔵寺(田原市)
23番 久美原山龍珠院(田原市)
24番 薬樹山医王寺(田原市)
http://atsumi-iouji.info/

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