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藤長庚『遠江古蹟図会』067「西郷石ヶ谷の石」
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・地名「構江」 :戸塚忠春の屋敷。現・構江公民館。
・地名「平塚山」:西郷政清の要請でやって来た忍者・服部正尚の平塚砦。
・地名「図書」 :服部正尚の弟・青山図書助成重の屋敷。
・地名「殿垣戸」:西郷(石谷)政清の屋敷。
・観音寺(廃寺):西郷氏の菩提寺。墓のみ。現・構江遊園地。
戸塚忠春の故郷・掛川市西郷地区で西郷局(於愛)は生まれたという。
実父・戸塚忠春は今川氏の家臣で西郷十郎右衛門政清(二階堂清長の子)を頭とする「西郷十八士」の1人だったという。
西郷十郎右衛門政清(後に西郷局を憚って「石谷」と改姓したとされるが、下掲の永禄12年1月26日付の文書には既に「石谷」とある)は、忍術を学ぼうと、平塚砦に服部正尚を呼んだという。「石谷」の由来である「名字石」(「九曜石」「御紋石」とも)でも忍術の訓練を行わせたというが、それはないであろう。自然にこういう状態になったのならば凄いが、西郷氏が屋敷を中島(現・石田氏宅。江戸中期、石田平八郎が「石田」に改姓)に移す時に、庭石を掘り出して積んだものだという。
西郷氏(後の石谷氏)の名がメジャーになったのは、永禄12年(1569年)の徳川家康の遠江国侵攻の時である。この時、西郷十郎右衛門政清は、(長男は武田家家臣、次男は出家していたので)三男の政信、四男の清定、「西郷十八士」を率いて徳川家康に臣従した。(『寛政重脩諸家譜』には「元亀2年3月10日、男・政信、清定と共に召されて仕へ奉り」とあるが、永禄12年1月26日に徳川家康から飛鳥(あすか。静岡県掛川市下垂木)内の一色に新領をもらっているので、徳川家康の遠江国侵攻時に「石谷」と改姓して臣従したと考えた方が自然である。)
今度被宛行知行之事
右五石半の飛鳥内一色120俵(2斗俵也)、並びに前の屋敷分、由緒有りて訴訟せしめ候間、新給恩として出し置き畢んぬ。永く相違有るべからず。此の旨を守り、弥奉公せしめば、重ねて扶助を加へるべき者也。仍て件の如し。
永禄12年己巳
正月26日 家康(黒印)
石谷十郎右衛門殿
藤原氏 為憲流 石谷(いしがや)
『寛永系図家伝』を引いて曰く「もと二階堂を称し、行清が時、外祖父・西郷が家号を用ひ、其の子・政清、遠江国石谷村に居住す。村の西南に大いなる岩石あり。その岩の頭に八幡の廟あり。これ、村の氏神なり。政清、氏神のまします所を尊崇す。この故に、二階堂を改めて石谷と称す」。
今の呈譜に「代々、遠江国佐野郡西郷の庄に居住せしにより、行清が時、改めて西郷と称し、政清召されて東照宮に奉仕するに及び、西郷の局の称呼を諱て石谷に改む」と云ふ。
石谷政清(十郎右衛門。母は某氏)
今川義元をよび氏真に仕へ、氏真、没落ののち、永禄12年正月26日、その請にまかせられ、遠江国飛鳥内一色名の采地、永く相違あるべからざるの旨、東照宮より御黒印を下され、元亀2年3月10日、男・政信、清定と共に召されて仕へ奉り、天正2年4月15日死す。年72。法名「道隆」。
石谷十郎右衛門政清は天正2年(1574年)4月15日に没した(享年72)ので、於愛が徳川家康と結婚したことは知らない。なお、石谷十郎右衛門政清の孫娘の夫の叔母(父の妹)が於愛である。
石谷宗家を継いだ三男・政信は、徳川家康の関東移封に伴い、武蔵国多摩郡(現・東京都狛江市)に所領200石を賜って移った。石谷に残った庶子家(四男・清定の子孫)は、屋敷を中島に移し、「石田」と名乗った。
■二階堂→西郷→石谷宗家 石谷初代政清─政信─政勝… ※通字は「政」
西郷(石谷)十郎右衛門政清┬入沢五郎右衛門行重〔武田家家臣〕
├吞説〔出家〕
├十郎右衛門政信┬女子〔戸塚忠之の妻〕
├五郎大夫清定 ├喜左衛門〔早世〕
├女子 ├市右衛門政勝【石谷宗家】
├又大夫清重 ├小野田小一郎為一
├女子 ├女子
├女子 └十兵衛
└桑原権左衛門政重
■戸塚氏 戸塚忠春─忠家─忠之 ※通字は「忠」
戸塚五郎大夫忠春〔西郷十八士〕┬戸塚四郎左衛門忠家─戸塚作右衛門忠之
└於愛(徳川家康側室)┬徳川秀忠
└東条松平忠吉
■石谷家分家の石田家 石谷貞清(家祖・霊栄大明神)…石田初代平八郎
石谷五郎大夫清定┬久五郎清平
├女子
├女子
├友之助清正
└左近将監貞清〔霊栄大明神〕…石田平八郎【石田家】
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