2022年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(第35回)「苦い盃」
──源実朝が飲んだ三三九度の盃
──北条政範が飲んだ毒入りの盃
上手い処理であった。
『吾妻鏡』には、
11月 4日 平賀朝雅と畠山重保が京都で口論。
11月 5日 北条政範、京都で病死。
11月 6日 北条政範の遺体を東山に埋める。
6月21日 平賀朝雅、牧の方へ讒訴。
6月22日 畠山重忠の乱。
とある。『吾妻鏡』を読むと、
・平賀朝雅と畠山重保が京都で口論→口論の内容は?
・北条政範、京都で病死。→死因は?
・北条政範の遺体を東山に埋める。→なぜ遺体を鎌倉に運ばないのか?
・平賀朝雅、牧の方へ讒訴。→讒訴の内容は? なぜ畠山を討つのか?
という疑問が思い浮かぶ。
これを『鎌倉殿の13人』では、
・平賀朝雅と畠山重保が京都で口論→畠山重保が毒を盛ることを立ち聞き。
・北条政範、京都で病死。→毒殺
・北条政範の遺体を東山に埋める。→変色で毒殺とばれるので即埋めた。
・平賀朝雅、牧の方へ讒訴。→畠山重保が毒を盛ったと讒訴した。
と上手く処理した。
今回の脚本は「蓋然性」が高い話ではあるが、史実かどうかは「北条政範の死は、平賀朝雅による暗殺」かどうかにかかっている。
よくできた脚本であったが、ミスもある。北条義時と伊賀の方(『鎌倉殿の13人』では二階堂のえ)の子の話が出てきたが、史実の伊賀の方は、この時、妊娠中で、畠山重忠が討たれた「畠山重忠の乱」の日に後の第7代執権・北条政村が生まれている。
さぁ、来週は「畠山重忠の乱」だぁ!
北条政子が牧の方に「北条政範は平賀朝雅に殺された」とはっきり言えば、畠山重忠は死ななかっただろうに。北条政子が牧の方に言う前に、牧の方が「北条政範の死を気にしていません」と言ったので、その先に進めなかったのが残念である。
※源頼朝の和歌が出てきましたね。
「変だ」と思った点
・「道すから…」は「富士の巻狩り」の時の歌ではなく、上洛時の道すからに歌。
・源実朝が初めて歌を詠んだのは14歳で、師は『新古今和歌集』の撰者・藤原定家。
「凄い」と思った点
源実朝の歌は、技巧的な歌は少なく、「万葉調」の歌が多。それで、「道すから…」の歌を選んだのであろう。
※「源頼朝が詠んだ和歌10首と連歌など」
https://note.com/sz2020/n/nae5b8d2a98d7
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▲北条時政の子(『鎌倉殿の13人』の設定)
北条四郎時政┬長男・三郎宗時 (片岡愛之助) :母・伊東祐親の娘
(坂東彌十郎) ├長女・政子=源頼朝室 (小池栄子) :母・伊東祐親の娘
├次男・江間小四郎義時 (小栗旬) :母・伊東祐親の娘
├次女・実衣=阿野全成室(宮澤エマ) :母・伊東祐親の娘
├三女・ちえ=畠山重忠室(福田愛依) :母・?
├四女・あき=稲毛重成室(尾碕真花) :母・?
├三男・五郎時連→時房 (瀬戸康史) :母・?
├?女・きく=平賀朝雅室(八木莉可子) :母・りく
├?女・?=滋野井実宣妻(?) :母・りく=牧宗親の妹
├?女・?=宇都宮頼綱室(?) :母・りく=牧宗親の妹
├四男・遠江左馬助政範 (中川翼):母・りく=牧宗親の妹
├?女・?=坊門忠清(坊門信清の子)室(?):母・不明
├?女・?=河野通信室(?):母・不明
└?女・?=大岡時親(牧宗親の子)室(?):母・不明
▲北条義時の子(『鎌倉殿の13人』の設定)
北条義時──┬長男・金剛→頼時→泰時(坂口健太郎):母・伊東祐親の娘
(小栗旬) ├次男・朝時(髙橋悠悟):母・比奈=比企朝宗の娘
├三男・重時(加藤斗真):母・比奈=比企朝宗の娘
├長女・竹殿=大江親広室(?):母・比奈=比企朝宗の娘
├四男・有時(?):母・?=伊佐朝政の娘
├五男・政村(?):母・のえ=二階堂行政の孫
├六男・実泰(?):母・のえ=二階堂行政の孫
├七男・時尚(?):母・のえ=二階堂行政の孫
├次女・?=一条実雅室(?):母・のえ=二階堂行政の孫
├?女・?=一条実有室(?):母・不明
├?女・?=中原季時室(?):母・不明
├?女・?=一条能基室(?):母・不明
├?女・?=戸次重秀室(?):母・不明
└?女・?=佐々木信綱室(?):母・不明
▲源頼朝の子(『鎌倉殿の13人』の設定)
源頼朝──┬千鶴 (太田恵晴) :母・八重=伊東祐親の娘
(大泉洋) ├長女・一幡(大姫)(南沙良) :母・政子=北条時政の娘
├長男・万寿→頼家 (金子大地) :母・政子=北条時政の娘
├能寛→貞暁 (?) :母・?=常陸念西の娘
├次女・三幡(乙姫)(太田結乃) :母・政子=北条時政の娘
└次男・千幡→実朝 (柿澤勇人) :母・政子=北条時政の娘
▲源頼家の子(『鎌倉殿の13人』の設定)
源頼家───┬長男・一幡 (相澤壮太):母・せつ =比企能員の娘
(金子大地) ├次男・善哉→公暁 (寛一郎) :母・つつじ=賀茂重長の娘
├三男・千寿丸→栄実(?) :母・?=一品房昌寛の娘
├長女・竹御所 (?) :母・?=源義仲の娘
└四男・?→禅暁 (?) :母・?=一品房昌寛の娘
▲NHK公式サイト『鎌倉殿の13人』
https://www.nhk.or.jp/kamakura13/
▲参考記事
・サライ 「鎌倉殿の13人に関する記事」
https://serai.jp/thirteen
・呉座勇一「歴史家が見る『鎌倉殿の13人』」
https://gendai.ismedia.jp/list/books/gendai-shinsho/9784065261057
・富士市 「ある担当者のつぶやき」
https://www.city.fuji.shizuoka.jp/fujijikan/kamakuradono-fuji.html
・渡邊大門「深読み「鎌倉殿の13人」」
https://news.yahoo.co.jp/byline/watanabedaimon
・大迫秀樹「「鎌倉幕府の謎」源頼朝と北条義時たち13人の時代」
https://gentosha-go.com/category/t966_1・Yusuke Santama Yamanaka 「『鎌倉殿の13人』の捌き方」
https://note.com/santama0202/m/md4e0f1a32d37
・刀猫 「史料で見る鎌倉殿の13人」
https://note.com/k_neko_al/m/m0f7e5011a2ac
▲参考文献
・安田元久 『人物叢書 北条義時』 (吉川弘文館) 1986/ 3/ 1
・元木泰雄 『源頼朝』 (中公新書) 2019/ 1/18
・岡田清一 『日本評伝選 北条義時』(ミネルヴァ書房)2019/ 4/11
・濱田浩一郎『北条義時』 (星海社新書) 2021/ 6/25
・坂井孝一 『鎌倉殿と執権北条氏』 (NHK出版新書) 2021/ 9/10
・呉座勇一 『頼朝と義時』 (講談社現代新書)2021/11/17
・岩田慎平 『北条義時』 (中公新書) 2021/12/21
・大迫秀樹 『「鎌倉殿」登場!』 (日本能率協会) 2021/12/22
・山本みなみ『史伝 北条義時』 (小学館) 2021/12/23
・山本みなみ『史伝 北条政子』 (NHK出版新書) 2022/ 5/10
・坂井孝一 『鎌倉殿をめぐる人びと』(NHK出版新書) 2022/ 7/10
・毛利豊史「源実朝試論」
https://core.ac.uk/download/pdf/80536497.pdf
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