見出し画像

縊鬼(イツキ/くびれおに)

 高い所へ登って下を見ると、
「飛び降りて死のう」
と思えてくる。「今、死ななきゃいけない」という切迫観念。

全国に「自殺の名所」がある。
私の地元では、飛び降り自殺をするビルは決まっている。自殺のニュースを聞くたびに、「他にもビルがあるのに、なぜこのビル?」と思う。

自殺者については「飛び降りたビルが同じ」ということ以外に共通点が無い。アイドルが飛び降り自殺し、300人以上のファンが後追い自殺したという話とは異質である。

そのビルに憑いている悪霊が、死にたい人をそのビルに誘っている?(ただ単に「簡単に屋上に出られる」と自殺系SNSで広がってるだけか?)
昔の人なら、
「縊鬼(イツキ。くびれおに。首吊り自殺を誘う幽霊)に取り憑かれた」
と思うかもしれない。



https://kanji.jitenon.jp/kanjij/4792
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E7%B8%8A%E3%82%8B/

 「縊鬼」は、音読みなら「イキ」、訓読みなら「くびおに」のはずですが、「イツキ」「くびれおに」と読みます。「縊ッ鬼」、「くびって鬼と化した鬼」「『くびろ』と促す鬼」ということでしょうか。(中国の「縊鬼」は「イキ」と読み、『小豆棚』『太平御覧』『聊斎志異』などの中国の古書に登場します。舌を長く出しているのが特徴です。(『夜窓鬼談』にも「吐舌尺余」とあります。)首吊り自殺のご遺体を見たことが無いのですが、舌が長く出ているそうです。

中国の「縊鬼」
https://kknews.cc/news/o5x486.html

1.『夜窓鬼談』「縊鬼」

『夜窓鬼談』より久保田米僊筆「蒲生君平と縊鬼」
https://mzksgr.tumblr.com/page/2

縊鬼
 毛人・蒲生君平、被酒夜過綾瀨川堤、醉步蹣跚(すいほまんさん)。仆(たお)而又起。急上厠距人家稍遠。因蹲於路傍矢於叢間、忽有撫臗者。冷而軟。欲執之退而在後。呵呵而哂(わら)。君平以為猾狸為悪戯。自若不動。彼亦数撫之。君平徐徐伸手、待其撫執之。唯是一条布索。少有腥氣而已。乃踏之足下事畢。欲投之河。忽有一婦。年可二十。蓬髮、粗服。痩顏如病。急止之曰。請返我。君平怪曰。汝一婦人。更深過堤。且戯弄行人。何其大膽也。如此汚物為何用曰「妾、縊死(くびれてしぬ)之鬼也。以此索絶命。今欲復用之。請速返之」。君平曰汝既殞命。非陽世之人。何以復用之。曰非子之所知不返恐有驚。言未畢。乍変形。頭如酒甕。眼如巨杯。口如張傘裂至耳辺。吐舌尺余。両手握髪。噴血而進。君平笑曰「伎倆止於此乎。何其拙也」。鬼再変面。忽生雙角。巨手尖爪。一躍欲攫。君平益笑。曰「幻容不足觀」。乃鑽燧、悠然喫烟。婦人復本形。俯伏曰「妾、不知豪傑。妄為鄙技妨行路。罪不軽。願返其索。欲求代人免苦役」。君平曰、「汝、既死矣。何以苦役」。曰く「死後、未得転生。為土地神所役。昼夜酷使。不能堪命。使得一代人充之。妾欲択好地生人間。偶有某氏之婦。為姑所嫉日夜懐怨恨。使彼代於妾。妾得免焉。君平曰「噫(ああ)汝誤矣。人壽自有命。禀(う)之天。長短不可動。若半途殺之、其人、非命也。非命而死、其鬼、亦怨之。特怨之。殺者亦乱定数。必受冥官厳罰。汝、今、願生於好地。若殺人重罪。安得善果。彼若欲自死。宜妨之全其壽救其命。積善積悪。幽顕何異。汝、在幽間。亦復造罪。永劫沈没悪処。可不能再出於陽世禀幸福。能忍苦役積歳月。豈無消滅之期。冥官亦不使無罪之人永処苦役。其熟思之」。婦人、喜拝謝時遠雞報晨。東天將白。婦人漠然失形。乃寸斷其索。沈水而去。

https://dl.ndl.go.jp/pid/896582/1/16

ここから先は

3,591字 / 1画像

家族になろう!

¥1,000 / 月
このメンバーシップの詳細

記事は日本史関連記事や闘病日記。掲示板は写真中心のメンバーシップを設置しています。家族になって支えて欲しいな。