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宇治の橋姫

橋姫伝説(はしひめでんせつ) 

 街道を結ぶ橋に古来神を祀るのは、住民としては境を守る神威を頼むことであり、旅人としては往来の安全を祈ることにあった。しかし橋の神は一般に女性であって、橋姫の伝えは多く嫉妬の神として語られた。
 甲府市の国玉(くだま)大橋で謡曲「葵の上」を謡うと道が暗くなり、また「三輪」を謡うと明るくなるといい、山梨県大月市の猿橋にも同様の伝えがあった。この二橋のいずれかで他の噂をすると怪異があったともいう。この種の言伝えは各地にあった。
 山城国の宇治橋の橋姫には、嫁入行列がこの祠前を通るのを禁忌した。両岸の人々が縁を結ぶには橋の下を舟で渡ったという。京の妬婦が夫を恨んで、生きて鬼となり路人を悩ましたので、橋畔に祀ったなどとも伝えた。

『国史大辞典』

♦博多の人魚は長橋の橋姫か?

「宇治の橋姫」は、宇治橋の守り神だという。

さむしろに衣かたしき今宵もや我をまつらん宇治の橋姫(『古今和歌集』)
あじろ木にいさよふ浪の音ふけて獨や袮ぬる宇治の橋姫
(『新古今和歌集』)

https://dl.ndl.go.jp/pid/2546485/1/11

はし姫の心をくみてたかせさすさほのしつくに袖そぬれける
 宇治はしひめは橋下姫大明神と申神也。離宮の神、この姫神にかよひ給ふといふ説あり。又、一説、住吉大明神の宇治の橋下にかよひ給ふといふ。 「さむしろに衣かたしき」の歌は住吉明神の御歌といひつたへたり。
六帖 むは玉のよむへもかへる今夜さへ我をかへすなうちのはし姫 家持

一条兼良『花鳥余情』

橋姫の心を汲みて高瀬さす棹のしづくに袖ぞ濡れぬる
(橋姫の(夫の帰りを待つ)寂しい心をお察しすると、高瀬(川の瀬の浅い所。浅瀬)にさす舟の棹の雫(実は涙)で袖が濡れる。)
 「宇治の橋姫」は「橋下姫大明神」という神である。離宮八幡宮(石清水八幡宮の元宮)の神がこの姫神に通っておられたという説がある。また、一説に、住吉大明神が宇治の橋下に通ったといい、「さ筵に衣かたしき今宵もや我を待つらん宇治の橋姫」(『古今和歌集』(巻第14)「恋歌四」689。詠み人知らず)の歌は、住吉大明神の御詠歌だと言い伝えられている。
「ぬばたまの昨夜は帰しつ今夜さへ我れを帰すな道の長手を」(『万葉集』巻4-781。大伴家持)

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