【原因分析】日本×イラン 2023アジアカップ なぜ日本はなすすべなく敗れたのか。
こんにちは。シュル部と申します。
今回は昨日行われた20223アジアカップ準々決勝、日本vsイラン戦の原因分析を行っていこうと思います。
個人的には完膚なきまでの完敗だと思っていますが、W杯での快進撃からどうしてここまでになってしまったのか?初心者の方でも分かりやすいようにまとめていきたいと思います。
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両チームの戦術プラン
①日本の攻撃×イランの守備-日本をハメる罠-
試合開始時、左から攻めるイランは「4-1-4-1」右から攻める日本は「4-2-3-1」という格好でした。
日本がボールを持って前進すると、ほぼすべての選手に守備の選手(マーク)がつくことになります。これはパスを出してもすぐボールを奪われてしまいます。この試合を通して、日本がゴールキーパーからボールをつなげなかったのはこれが原因でした。
それでも、前半では久保選手がドリブルでマークをはがす・前田選手が守備選手を追い越すような動きをするなど、チャンスを作っていました。しかし、審判が激しいプレーにも笛を吹かないこと・後半ではイランが前がかりにボールを奪いに来たこと・交代策が裏目にでたことで日本の攻撃は停滞します。このことは後で詳しく説明します。
②日本の守備×イランの攻撃-高さという武器-
イランが攻めるときは、図のようにCB(黄色ハイライト)の選手がかなり左右に広がり、プレッシャーのかからない状態で一気にフォワードに長いパスを送る・・という攻撃をしていました。日本はそのパスに対してヘディングで競り合いこぼれたボールを両チームが奪い合うという展開でした。
しかし、日本代表の平均身長は181cmイラン代表の183.8cmとおよそ3cmほど低い形となっておりヘディングでの競り合いでは負ける場面も多くありました。
なぜ日本が先制し、イランが逆転したのか?
ここまでの話を聞くと、競り合いに強いイランと久保選手が孤軍奮闘する日本、前者が先制しそうなものです。しかし、両者垂涎の先制点は日本に訪れます。
①個人技と気持ちで奪った先制点
サイドに追い込まれた守田がドリブルで一人かわし、上田へのパスコースを作ります。この時、久保はあえて低い位置を取っていたため相手の8番の選手の戻りが遅くなりました。それを見た守田は、パスと同時に上田の横を駆け上がります。
キープして時間を作ったことで守田にパスが通り、そこから3人のディフェンスを無理やり押しのけた守田選手がゴールを奪います。
ボールがこぼれた位置が良いなど、ラッキーも一部ありましたが両選手の個人技によって日本が先制点を奪います。
②ボール回収人、前田大然
机の上では成立しそうなイランの攻撃も、日本代表の起点によって封じられていました。というのも、スピードスター・前田大然がイランにプレッシャーをかけまくっていたからです。
ゴールキーパーまでボールが下げられたとき、日本は途中から上田・久保の二人で左右に広がるCBにプレッシャーをかけるように戦術を変えました。するとキーパーはCBを飛ばした、滞空時間の長いパスを出すようになります。時間のかかるパスと前田のスピードが合わさることで、ボールが奪えたり奪えなくても選手が集まってイランの攻撃を封じられる場面が多くありました。
③ギアを上げたイラン、勇気を失った日本
しかし、後半に入るとイランがギアを上げて来ました。フォーメーションのかみ合わせは変わらないものの、ゴールキーパーに戻すパスを合図にボールへのプレッシャーをかけるようになったのです。
失点直前の53分では相手の20・14・6・21が一気にGKとCBにプレスをかけてきます。パスが出せなくなった鈴木が苦し紛れに蹴ったボールが相手に奪われ、陣形を崩していた日本は失点してしまいます。
このとき、相手のプレスは鈴木から見て右側からかけることで、左足で蹴らざるを得ない状況にし鈴木のキック力を封じていました。
このイランからの圧力を前にした日本は、失点後から消極的なプレーが目立つようになりました。フォーメーション的にはSB・CBがボールを持つことができるものの前に進むことを恐れたようなバックパス、それをスイッチとしたイランのプレス発動など悪循環に陥っていきます。
62分の場面では、DFラインが低すぎ相手20番に後ろのスペースに抜けだされてしまいます。(ゴールネットを揺らされたが、かろうじてオフサイド)
④本質をとらえない交代策、戦術三苫の機能不全
ここで、森保監督は久保→南野、前田→三苫の交代策を切ってきます。しかし前線の選手が変わったところでそもそもそこまでボールが渡っていないのですから、意味がありません。
前田・久保双方とも単純なパスミスやスプリントの減少がみられていたので、交代選手としては悪くないと思うのですが。
三苫が下りてきて2人相手にドリブルを仕掛ける場面は3度ほどありましたがいずれも失敗に終わっています。
このまま押され続けた日本は最後、板倉選手がPKを与えてしまうという形でアジアカップを去ることになりました。
どうすれば日本は勝てたのか?
イランが形作るこのサッカーは対日本対策というわけではありません。アジアカップの他の試合(シリア戦など)ですでに行っていたことですからスタートから戦術プランを見直すことはできたはず。
【①あえて中央を使う】
終盤のイランは14番の選手が20番の選手と2トップ気味にプレスをかけていました。そうすると相手は「2-4-4」のような格好となります。しかし日本が横に広い陣形を取っているならば、イランもそれに合わせた陣形を取らざるを得ません。そうすると日本のフォーメーション上ではGK鈴木から南野への直通のパスコースが生まれたはずです。ここを効果的に突ければ、結果は変わっていたのではないでしょうか。
【②つなぐフリをして競り勝ちまくっていた上田を使う】
①に通じる部分もありますが、上田は終始その高い身体能力を生かしてヘディングの競り合いに勝っていました。図10のようにCBがワイドに開き、ボランチまでつなぐフリをして選手を引き付ければ最前線で3対3の構図を作ることができます。ここで上田を狙った鈴木のキックでこぼれ球を拾うことができれば一気にチャンスを作れそうです。
ただし、この戦術は日本にとってもリスクがあるので鈴木の滞空時間の長いキックの間にDFラインを上げることと、三苫・堂安ではなくプレスバックの早い前田・浅野をウイングに配置するのが良いでしょう。
【③3バックを形成する】
日本が3バックを形成し、GKを入れた4人でパス交換ができればGKが一人を新たに引き付けることができるので、新たパスコースができたはずです。このとき、南野はソロピボーテの位置まで下りてくれば守田or三苫へのパス、上田への直通パス、遠藤or堂安へのパスができたはず。
さらに守田が上がって三苫へのパスコースを作れば、戦術三苫が機能したのではないでしょうか。
ただしこれも、GK含めたパス回しというリスクある行為が必要になるので、一朝一夕でできるものではないと思います。
最後に
日本代表の未来
私がここまで書いたものは試合が終わった後、暖かい家で何のプレッシャーもなくゆっくり書いたものです。現場ではこれを高速で判断しPDCAを回さなければいけない…はるかに難易度が高いことは言うまでもないでしょう。
ただ一方で、後半のサッカーは日本がなすすべなく殴られ続けるようなものであり、いちサポーターとして辛いものがありました。
ここからは全くの想像ですが、交代策のメッセージや核となるような戦術が見受けられなかったのは、恐らく森保監督が選手に主体性を求め、それを第一としてきたからではないでしょうか。
そんな中、守田選手の発言で以下のようなインタビューを見かけました。
私はこれは、首脳陣批判とはとらえていません。皆さんも学校や職場でよくあるように「こういう風に仕事や授業の仕方を変えた方が良いのでは?」という、一つの提案だと思っています。
実際森保監督は、過去選手の主体性を重んじる発言を続けていました。
ここで重要なのは「選手の総意を主将の吉田が森保監督に進言し」という部分だと思います。カタールから主将が吉田から遠藤に代わり、組織マネジメントやコミュニケーションの部分でも遠藤選手が抱えいていたタスクは相当だったのではないでしょうか。
そういう意味では、守田選手の発言が「メディアを通じて」森保監督に伝わっていないことを願います。チームであれば主将や監督に直接言うのが筋でしょう。それをメディアを通じてしか言えないような雰囲気になっていないか…その辺りが心配でなりません。
選手が考えることを誰が、どのように伝えるのか?監督コーチ陣はどうするのが最適だと思っているのか?それを直接ぶつけ合ってよりよい議論ができるような環境と関係性ができることが日本代表立て直しに向けた、急務なのではないでしょうか。板倉選手もかなり自責の念が強いようなコメントを出されていましたが、遅かれ早かれあのままのサッカーでは負けていたでしょうし、チームとしてJFAとして板倉選手へのケアを丁寧に行ってもらいたいと思います。
サポーターとしては、日本代表を応援し続けるのみです。W杯で日本に負けたドイツもきっとこのような批判・議論が渦巻いていたことでしょう。このような負けて悔しい経験があるからこそ、一勝一つのタイトルの喜びもひとしおというものです。
必ずや、日本代表がW杯の優勝を勝ち取ってくれると信じてこの記事の結びとしたいと思います。ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
以上