誤植


読者から電話がかかってきた。業界誌なので読者がすぐに電話をかけてくる。
その電話は誤植の指摘だった。僕が書いた記事だった。

どんな誤植かというと、肩書きの書き間違い。〇〇検定3級保持者というのを、2級と書いてしまった。

かけてきたのはおばあちゃんで、僕も取材で会っていたから、顔はすぐに思い出せた。
過去に一度だけ誤植をしたことがあり、その時は半ギレのメールが届いた。だからこの電話もキレてるんだと思ったけど、声はとても優しかった。綺麗に写真撮ってくれてありがとねぇ、友達に自慢するわァって。僕はそのおばあちゃんの写真をカラーで大きく使ったのだ。

その1週間後、別の読者からメールが届いた。誤植の指摘だった。また僕の記事だった。今度の誤植も同じ特集記事の中だった。作品のジャンルを間違えていた。純文学と日記くらい似ているジャンルだったので、間違いに全く気づかなかった。

このメールも怒ってはいなかった。僕はそれで少しホッとした。メールなので本当は怒っているのかもしれないが、少なくとも初めて誤植した時のキレ具合とは程遠かった。僕はお詫びのメールをした。

今回の誤植だが、校了前に何度も確認した。記事と参考資料を突き合わせて、てにをは、人名や会社名の漢字、全部照合した。でも間違った。それも2個。どうしたものかなぁと思う。もちろん残業すればもっと照合できたんだろうけど、それをやりだすとキリがない。これ以上どうすればいいんだということだ。

僕の思い込みが強い性格が、こういうミスを招いている。文章だけでなく、友人や恋人との日常生活でも、この思い込みで色々な問題を起こしてきた。

でもその瞬間は、思い込んでいるかどうかは自分では分からない。いつも後になって気づく。大体の原因は焦りである。早く次の記事に取り掛かなければ……だからこの記事は早く終わらせないと……これ。僕が無心でキーボードを叩いている時に「今、思い込んでるよ」って教えてくれる人がいれば助かるんだけど。

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