入浴中の事故が多発しています!その原因と対策は?ヒートショックに注意!
毎年、入浴に関連して亡くなっている人は推定19,000人に上り、入浴中の事故は冬に多く発生します。特に11月から増え始め、1月にピークを迎えます。
多くは高齢者の事故で、2021年には4,750人が死亡しています。これは交通事故の死亡者数の2倍に当たります。
入浴中の死亡事故の原因の多くは、ヒートショックによるものです。ヒートショックは温度の急激な変化によって起こる健康被害です。このとき、血管の収縮や拡張が起こり、血圧が大きく変化します。高齢者は動脈硬化が進んでいるため、脳卒中や心筋梗塞、不整脈を発症しやすくなります。さらに、寒暖差を感じづらいため、気づきにくく、対応が遅れがちになるという問題があります。
入浴前後の血圧の変化
1.暖かい室内:血圧は安定しています。
2.寒い脱衣所:寒い脱衣所に移動すると血管が収縮し、血圧が上昇します。
3.寒い浴室:服を脱いで寒い浴室に入ると、さらに血管が収縮し血圧は上昇します。
4.入浴中:湯船に入ると血管が拡張し、血圧は急降下します。
血圧の急激な変化は、脳卒中や心筋梗塞、不整脈といった健康被害のリスクを高める可能性がありますので、入浴前後の急激な温度変化には注意が必要です。
急性心筋梗塞、脳梗塞、不整脈の徴候は?
急性心筋梗塞、脳梗塞、不整脈は命に関わる危険な病気です。早期発見・早期治療が重要になりますので、少しでもいつもと違う症状があれば、ためらわずに救急車を呼ぶようにしてください。
急性心筋梗塞の主な徴候
・経験したことのない胸の痛み
・冷や汗や息苦しさ
・左肩・あごの痛みなど
脳梗塞の主な徴候
・意識がもうろうとする
・手足の力が入らなくなる
・ろれつが回らない
・視野が狭くなる
・めまい・ふらつきなど
不整脈の主な徴候
・息が苦しい
・めまい
・動悸
・脈が飛ぶ、または速くなる
高齢者の場合、上記の典型的な症状が出ない場合もあるため注意が必要です。
少しでも異変を感じたら、入浴を中断し浴室から出て助けを求め、救急車を呼ぶようにしてください。
入浴前にできる対策、入浴中の対策、入浴後の対策について
ヒートショックを予防するために、入浴前に浴室と脱衣所を暖めておくこと、入浴前に水分を補給すること、家族と同居している人は入浴することを一声かけておくことなどが推奨されます。
入浴中は10分以内、お湯の温度は41℃以下にするのが良いとされています。
入浴前の対策
・脱衣所と浴室を暖めておく
温度差を少なくすることで、血圧の急激な変化を防ぎます。脱衣所にはヒーターや電気ストーブなどを置き、浴室はシャワーでお湯を張り、蒸気で暖めておきましょう。
・入浴前に水分補給をする
冬場は長湯をしがちですが、気づかないうちに脱水症状を起こすことがあります。入浴前にコップ1杯の水、またはスポーツドリンクを飲むようにしましょう。心筋梗塞・脳卒中を予防できます。
・飲酒後の入浴は厳禁!食後1時間ほどあけて入浴する
アルコールによって血圧の変動が大きくなります。アルコールには利尿作用があり、脱水を起こしやすくなります。また、食後は血圧が下がりやすい傾向にあります。食後すぐに入らす、1時間位あけて入りましょう。
・家族に「お風呂に入る」と声をかける
高齢者や持病のある方は、入浴中に体調を崩す可能性があります。家族と同居している場合は入浴を始める前に一声かけ、異変があった場合にすぐに対応できるようにしておきましょう。一人暮らしの場合は、入浴前に家族や友人に連絡を取り、安全を確認してもらうようにしましょう。
入浴中の対策
・湯船に入る前にかけ湯をする
いきなり熱い湯船に入ると血圧が急降下する可能性があります。手足の先から心臓に近いところに向かってかけ湯をし、徐々に体を温めるようにしましょう。
・入浴はほんのりの汗ばむ程度に
長湯は体に負担がかかるため、10分以内を目安にしましょう。お湯の温度は41℃以下に設定するのがおすすめです。
・急に立ち上がらない
入浴後は体が温まっているため、急に立ち上がると血圧が急降下し、脳貧血を起こすことがあります。湯船の縁や壁に手をつき、体を支えながらゆっくりと立ち上がるようにしましょう。
・もしもに備え、蓋を体の前に置いて入浴する
入浴中に意識を失うなどして溺れてしまう可能性があります。もしもの時に備え、蓋を体の前に置いて体を支えられるようにしておきましょう。
入浴後の対策
・バスタオルを掛けて体を冷やさないようにする
入浴後は体が温まっているため、湯冷めしやすくなっています。浴室から出た後はすぐにバスタオルを体に巻き、温かい部屋でゆっくりと体を冷ますようにしましょう。
・濡れた手で電気ストーブなどのスイッチを入れない
感電の恐れがあります。
浴室で意識がない人を見つけたら
もし浴室で意識がない人を見つけた場合は、意識と呼吸の確認を最初に行います。
救助法は
浴室の中の人を洗う方向に体を向け、背中の下から脇の下に両腕を入れて前腕をつかみ、一気に体を引き上げます。水に浮力があるため、救助しやすいはずです。助け出す際に、助ける人も転倒しないよう十分注意してください。
引き上げるのが無理そうな場合は、お湯を抜いて、救急車を呼びます。
意識があるかどうかにかかわらず、救急車が来るまでは意識と呼吸を確認し続けます。
入浴中に意識がない人を見つけた場合、落ち着いて行動することが大切です。まずは以下の手順で対応しましょう。
1.意識の確認
まずは意識があるかどうかを確認します。名前を呼んだり、肩を軽くたたいたりして反応を見てください。
2.119番通報
意識がない場合は、すぐに119番通報し、救急車を要請します。
3.呼吸の確認
呼吸をしているか確認します。胸やお腹の動き、息の音、吐息の温かさなどを見て、呼吸がなければ心肺蘇生を開始します。
4.浴槽からの救出
意識があり、救出可能な場合は、浴槽から引き上げます。お湯に浮力があるので、比較的簡単に引き上げることができます。水中で両腕を相手の脇の下に入れ、前腕をつかみ、一気に引き上げます。
意識がない場合は、浴槽の栓を抜き、お湯を抜いてから救出します。その際、頭部が水面より上に出ているか確認し、出ていなければ顎を上げて気道を確保します。
5.保温
バスタオルなどをかけて、体が冷えないようにします。
6.救急隊への引き継ぎ
救急隊が到着したら、状況を詳しく説明します。
救出する際の注意点
・助け出す際、自分も転倒しないよう注意する
・濡れた手で電気製品に触らない
その他、入浴中に異変を感じたらすぐに湯船から出て助けを求める、飲酒後の入浴は控えるなど、入浴中の事故を防ぐための対策はたくさんあります。ご自身の体調や状況に合わせて、適切な対策を講じるようにしてください。
入浴中の事故は、冬場に多く発生します。特に高齢者や持病のある方は注意が必要です。
日頃から、入浴前の水分補給や浴室の温度管理など、予防策を心がけましょう。