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アルツハイマー型認知症(AD)について
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も一般的なタイプであり、記憶障害をはじめとする認知機能の低下が特徴である。
原因と病態
・原因 : 正確な原因は不明だが、遺伝的要因、環境要因、生活習慣が関与するとされている。
・病態 :
・アミロイドβ(Aβ): 脳内に異常蓄積し、神経細胞の間で斑状のアミロイドプラークを形成。
・タウ蛋白 : 異常なリン酸化により、神経原線維変化を引き起こし、神経細胞内に蓄積。
症状
・初期症状 :
・記憶障害(新しい情報を覚えられない、短期記憶の低下)
・見当識障害(時間や場所の認識が困難になる)
・言語障害(言葉が出にくくなる、単語を思い出せない)
・中期症状 :
・日常生活動作(ADL)の低下
・性格・行動の変化(怒りっぽくなる、無気力になる)
・認知機能の全般的な低下(判断力、計画力の低下)
・後期症状 :
・身体機能の低下(歩行困難、嚥下障害)
・完全な介護依存状態
・重度の認知障害(身近な人の認識ができなくなる)
診断
・問診・家族からの情報収集 : 症状の経過や日常生活の変化
・認知機能検査 : MMSE(Mini-Mental State Examination)、ADAS-Cog(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive)
・画像検査 : 脳のMRI、CT、PET(アミロイドイメージング)
・血液検査・髄液検査 : アミロイドβ、タウ蛋白の測定
治療
・薬物療法 :
・コリンエステラーゼ阻害薬 : ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン(軽度~中等度ADに使用)
・NMDA受容体拮抗薬 : メマンチン(中等度~重度ADに使用)
・非薬物療法 :
・認知リハビリテーション
・生活リハビリテーション
・音楽療法、アロマセラピー、回想法などの心理社会的介入
看護・介護のポイント
・環境整備 : 安全で安心できる環境を提供し、転倒や事故を防ぐ
・コミュニケーション : 簡単で明確な言葉を使い、ゆっくり話す
・日常生活の支援 : 食事、排泄、入浴、着替えなどの日常生活動作のサポート
・家族支援 : 家族の負担軽減のための情報提供や相談支援
・問題行動への対応 : 徘徊や暴力行動に対する適切な対応策の提供
予防と早期発見
・生活習慣の改善 : バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、適度な飲酒
・社会参加 : 社会的活動や趣味を持つことで、認知機能の維持を図る
・定期的な健康診断 : 認知機能のチェックを含む