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学校感染症について
学校感染症対策の重要性
学校や保育所は、子どもたちが集団生活をする場であるため、感染症が発生すると広がりやすく、健康と安全を守るための対策が必要です。学校や保育所は医療機関や行政と協力し、正確な情報を共有し、感染症の拡大を防ぐために取り組む必要があります。
学校保健安全法に基づく対応
学校における感染症対策は「学校保健安全法」に基づいて行われ、予防すべき感染症の種類や出席停止、臨時休業の規定があります。例えば、特定の感染症に罹患した生徒は、治癒するまで出席を停止し、感染が広がらないようにします。さらに、差別や偏見が生じないよう配慮も求められています。
感染症の分類と対応
・第一種感染症:エボラ出血熱やSARSなど、特に危険度の高い感染症。治癒するまで出席停止。
・第二種感染症:インフルエンザや風疹など、学校で広がりやすい感染症。感染が治まるまでの期間に基づき出席停止。
・第三種感染症:腸管出血性大腸菌感染症など、学校で流行の恐れがある感染症。感染の恐れがなくなるまで出席停止。
出席停止期間の基準
出席停止期間は、例えばインフルエンザの場合、「発症後5日が経過し、解熱後2日(幼児は3日)が経過するまで」と定められています。期間の計算は、発症日や解熱日を含まずに、翌日から数えます。
第一種感染症
第一種感染症は、特に危険度が高く、重大な健康被害をもたらす可能性がある感染症です。このため、感染予防や迅速な対応が求められ、治癒するまでの出席停止が義務付けられています。これにより、感染が広がるリスクを最小限に抑え、社会全体の安全を確保することが目的です。
第一種感染症の具体例
第一種感染症には以下のような重篤な疾患が含まれています。
・エボラ出血熱:エボラウイルスによる急性の出血性疾患で、高い致死率を伴います。
・クリミア・コンゴ出血熱:ダニ媒介のウイルス性疾患で、出血症状が特徴的です。
・痘そう(天然痘):致死率が高く、伝染力も強いウイルス感染症ですが、現在は根絶されています。
・南米出血熱:アレナウイルス属ウイルスによる出血性疾患で、南米地域に分布。
・ペスト:細菌による感染症で、肺ペストは人から人への感染力が高く致死率も高いです。
・マールブルグ病:エボラウイルスと同属のウイルスによる出血熱。
・ラッサ熱:西アフリカで見られるウイルス性の出血熱。
・急性灰白髄炎(ポリオ):ポリオウイルスにより発症し、麻痺を引き起こします。
・ジフテリア:細菌感染症で、喉や気道に深刻な炎症を引き起こすことがあります。
・重症急性呼吸器症候群(SARS):コロナウイルスによる呼吸器感染症で、2000年代に流行。
・中東呼吸器症候群(MERS):コロナウイルスによる呼吸器感染症で、高い致死率があります。
・特定鳥インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザ):鳥類から人に感染し、重症化することが多いインフルエンザ。
また、感染症法では「新型インフルエンザ等感染症」や「指定感染症」、「新感染症」も第一種感染症に分類されることがあります。これらは、突発的な流行や未知の病原体による感染症であり、社会的な影響を考慮して指定されます。
対応方法
第一種感染症に罹患した場合は、以下の対応が行われます。
・出席停止:治癒するまで出席停止とし、他の人に感染させないようにします。
・医療機関での隔離治療:病状に応じて、専門的な医療施設での隔離や治療が行われます。
・公衆衛生当局との連携:感染拡大を防ぐため、医療機関と公衆衛生当局が緊密に協力します。
第一種感染症に対する早期の対応と適切な管理が、学校や地域社会での感染拡大を防ぐために重要です。
第二種感染症
第二種感染症は、学校や保育所などの集団生活環境で広がりやすい感染症であり、早期の予防・対策が重要とされています。これらの感染症は、主に飛沫感染や空気感染を介して広がり、子どもを含む集団において罹患率が高くなることが多いです。そのため、出席停止期間を設けるなどの対応が取られます。
第二種感染症の具体例
第二種感染症には、以下の感染症が含まれます。
・インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く):冬季を中心に流行し、高い伝染性と発熱、筋肉痛などの全身症状が特徴です。
・百日咳:長引く激しい咳が特徴で、乳幼児に重篤な影響を及ぼすことが多いです。
・麻しん(はしか):強い発疹や高熱が出るウイルス感染症で、空気感染のため伝染力が非常に高いです。
・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ):耳下腺の腫れや痛みが特徴で、特に小児に多く見られます。
・風しん:発疹とリンパ節の腫れが特徴で、妊婦が感染すると胎児に影響を及ぼす可能性があります。
・水痘(みずぼうそう):水疱を伴う発疹が全身に広がる感染症で、特に乳幼児に多く見られます。
・咽頭結膜熱:夏季に多く発生する感染症で、発熱と目の充血が特徴です。
・新型コロナウイルス感染症:呼吸器症状や発熱が主な症状で、変異株によって感染力や重症度が異なります。
・結核:主に呼吸器を侵し、長期にわたる治療が必要な感染症です。
・侵襲性髄膜炎菌感染症:髄膜炎菌によって引き起こされ、急速に重症化する可能性があります。
出席停止期間の基準
第二種感染症では、以下の基準に基づいて出席停止期間が設けられています。
・インフルエンザ:発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで。
・百日咳:特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗菌薬治療が完了するまで。
・麻しん(はしか):解熱後3日を経過するまで。
・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ):耳下腺などの腫れが現れてから5日を経過し、全身状態が良好になるまで。
・風しん:発疹が消失するまで。
・水痘:すべての発疹が痂皮(かさぶた)化するまで。
・咽頭結膜熱:主要な症状が消退してから2日を経過するまで。
・新型コロナウイルス感染症:発症後5日を経過し、症状が軽快してから1日を経過するまで。
なお、出席停止期間は解熱や症状の軽快がみられた日を「0日目」とし、翌日から数え始めます。例えば、解熱が月曜日に確認された場合、火曜日からが1日目となり、基準に従って登校が再開できる日が決まります。
対応のポイント
第二種感染症に罹患した場合、以下の対応が重要です。
・適切な隔離と治療:感染拡大を防ぐため、治療と隔離が行われます。
・早期発見と早期対応:早期の診断と対応が、感染の広がりを防ぐ上で重要です。
・衛生管理の徹底:手洗いや咳エチケットの励行、教室や施設の消毒が推奨されます。
第二種感染症に対する迅速かつ適切な対策を行うことで、学校や保育所での感染拡大を防ぎ、子どもたちの健康と安全を守ることができます。
第三種感染症
第三種感染症は、学校において流行が広がる可能性がある感染症で、集団生活の中で発生することで、他の生徒や教師に影響を与えることがあります。第一種・第二種ほどの重篤度はありませんが、学校教育活動に支障をきたす可能性があるため、必要に応じて出席停止措置が取られます。
第三種感染症の具体例
第三種感染症には、以下のような感染症が含まれています。
・コレラ:水や食物を介して感染し、激しい下痢や脱水症状を引き起こすことがある細菌感染症。
・細菌性赤痢:大腸菌などが原因で、腹痛や下痢を伴う感染症。
・腸管出血性大腸菌感染症:腸管出血性大腸菌(O157など)が引き起こす感染症で、下痢や血便、重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こすことがあります。
・腸チフス、パラチフス:サルモネラ菌の感染症で、発熱や消化器症状を伴います。
・流行性角結膜炎:アデノウイルスによって引き起こされる目の感染症で、目の充血や痛みを伴います。
・急性出血性結膜炎:エンテロウイルスなどが原因で、急性の眼の充血と出血を引き起こす結膜炎です。
これらの感染症は、学校内での流行を防ぐため、適切な感染予防対策が求められます。また、第三種感染症は、地域の感染状況に応じて柔軟な対応が行われ、感染拡大が懸念される場合には、校長の判断で臨時に出席停止が指示されることがあります。
出席停止期間と対応
第三種感染症の出席停止期間は、医師の診断に基づき「感染の恐れがなくなるまで」とされます。感染が他者に広がる可能性がないと判断された場合、学校復帰が許可されます。
対応のポイント
第三種感染症においては、感染の予防と早期対応が重要です。
・感染源の特定と隔離:感染症発生時には、感染源となる生徒や教員を速やかに隔離し、他の生徒や教員への感染拡大を防ぎます。
・衛生管理の徹底:手洗い、消毒、換気などの衛生対策が推奨されます。特に、流行性角結膜炎や急性出血性結膜炎は接触感染するため、手指消毒やタオルの共有禁止が重要です。
・保健指導の実施:感染予防のための保健指導を通じて、衛生管理の習慣化を促します。
第三種感染症は、発症すると教育活動や生活に影響を及ぼす可能性があるため、地域社会や医療機関と連携し、感染の拡大防止に努めることが求められます。