石綿肺(アスベスト肺)とは?
石綿肺(Asbestosis)は、高濃度の石綿(アスベスト)を吸入することによって引き起こされる疾患です。特に、長期間にわたり石綿にさらされる職業環境にあった人々が罹患しやすいため、職業歴の確認が診断において重要です。
石綿肺の特徴的な所見
石綿肺は、特発性肺線維症(IPF)と類似した所見を示しますが、胸膜病変が特徴的です。
1.身体所見
・ばち指(指先が太くなる症状)が見られることがあります。
・両側の肺底部にfine crackles(細かい断続性ラ音)が聴取されます。
2.画像所見
・胸部X線:
両側の肺の下部に不整形な陰影(網状影など)が現れ、進行すると中〜上肺野にも広がります。肺全体が縮小することや胸膜肥厚も見られます。
・胸部CT:
線維化は両側下部の胸膜下領域を中心に発生し、微細な網状影から蜂巣肺(蜂の巣状の肺病変)まで確認されます。また、胸膜病変(プラークや石灰化)も特徴的です。
※画像所見だけでは特発性肺線維症(IPF)との鑑別が難しいことがあります。
3.呼吸機能
・拘束性障害(肺の拡張が制限される状態)
・拡散能の低下(酸素と二酸化炭素の交換が低下)
・時には閉塞性障害(気道が狭まる状態)も見られることがあります。
4.病理検査
・呼吸細気管支を中心とした線維化が特徴で、その線維化が周囲の肺胞隔壁に広がります。
・BALF(気管支肺胞洗浄液)や肺組織中からアスベスト小体を確認することで、診断の確定に寄与します。
石綿肺の合併症
石綿肺は、他の重篤な疾患を引き起こすリスクが高く、以下の合併症が重要です。
1.肺癌
・石綿への曝露は、肺癌リスクを大幅に高めます。
・喫煙との相乗効果によってリスクがさらに上昇するため、禁煙指導が重要です。
2.悪性中皮腫
・胸膜や腹膜の悪性腫瘍で、アスベスト曝露との因果関係が確立されています。
・初期症状が乏しいため、進行してから診断されるケースが多いです。
3.アスベスト関連疾患
・良性石綿胸水(胸水の貯留)
・円形無気肺(肺の局所的な虚脱)
・びまん性胸膜肥厚(胸膜の広範な肥厚)
まとめ
石綿肺は、職業環境での石綿曝露が主な原因となる疾患であり、胸部画像所見や呼吸機能検査、病理検査が診断の要となります。また、肺癌や悪性中皮腫などの合併症を防ぐためには、早期診断と適切な管理が重要です。
石綿を扱う職場での安全対策や定期的な健康診断が、予防において大きな役割を果たします。健康維持のためにも、職業歴を含む丁寧な問診が欠かせません。