![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160959322/rectangle_large_type_2_383c76154999c21426c8d818c8bb3cf1.jpeg?width=1200)
リウマチ性多発筋痛症(Polymyalgia Rheumatica:PMR)について
定義
リウマチ性多発筋痛症とは、主に50歳以上の高齢者に発症する炎症性疾患であり、肩や首、腰、臀部の筋肉に痛みやこわばりが生じるのが特徴である。特に朝起きたときや長時間座った後に症状が強く現れ、日常生活に大きな影響を与えることがある。
症状
リウマチ性多発筋痛症の主な症状は以下の通りである。
1.筋肉の痛み
・特に肩、首、腰、臀部、太ももの筋肉に痛みが生じ、対称的に現れることが多い。
2.こわばり
・朝起きたときに強いこわばりが感じられ、日中も長時間同じ姿勢を取った後に症状が強くなる。特に朝のこわばりは1時間以上続くことが多い。
3.倦怠感
・全身の倦怠感や疲労感を感じ、筋肉痛と相まって活動が制限されることがある。
4.発熱
・微熱が見られるが、高熱になることはまれである。
5.食欲不振・体重減少
・長期間の痛みや倦怠感により食欲が低下し、体重が減少することがある。
6.うつ症状
・長期間の痛みや運動制限により気分が落ち込み、うつ状態になることもある。
原因
リウマチ性多発筋痛症の正確な原因は不明であるが、免疫システムの異常が関与していると考えられている。以下の要因が関連していると考えられる。
・加齢:50歳以上の高齢者に多く発症し、年齢が上がるほどリスクが増加する。
・遺伝的要因:家族歴がある場合、発症リスクが高まることがある。
・感染症:一部の研究では、ウイルス感染が発症の引き金になる可能性が指摘されているが、明確な因果関係は確立されていない。
診断
リウマチ性多発筋痛症の診断は、症状と血液検査の結果に基づいて行われる。
1.臨床症状
・肩や腰、首の筋肉の痛みとこわばりが対称的に現れ、特に朝方に強いこわばりを感じることが特徴である。
2.血液検査
・炎症反応を示す指標として、赤血球沈降速度(ESR)やC反応性蛋白(CRP)の値が高くなる。リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体が陰性であることも、リウマチ性多発筋痛症を示唆する重要な診断指標である。
3.画像検査
・超音波やMRIで筋肉や関節の状態を評価することもあるが、通常は診断に必要ではない。
治療
リウマチ性多発筋痛症の治療は、主にコルチコステロイド(副腎皮質ステロイド)を使用して行う。ステロイド療法が非常に有効であり、ほとんどの場合、症状が速やかに改善する。
1.ステロイド療法
・プレドニゾロンなどのステロイドを低用量で使用する。最初は症状がほぼ完全に抑えられる量を投与し、その後、数か月から数年にわたって徐々に減量する。治療期間は患者によって異なるが、1年以上にわたることが多い。ステロイドの投与を急に中止すると症状が再発することがあるため、減量は慎重に行う。
2.NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
・ステロイドに加えて、痛みの軽減や炎症を抑えるためにNSAIDsを使用することもあるが、ステロイドほどの効果は期待できない。
3.免疫抑制剤
・ステロイドに対する反応が悪い場合や副作用が強く出る場合には、メトトレキサートなどの免疫抑制剤を併用することがある。
4.リハビリテーション
・痛みやこわばりにより筋力が低下することがあるため、リハビリテーションも重要である。軽い運動やストレッチが筋肉の柔軟性を保つのに役立つ。
予後
リウマチ性多発筋痛症は適切な治療を行えば予後は良好である。特にステロイド療法によって症状が速やかに改善することが多い。しかし、治療が長期間にわたる場合があり、ステロイドの副作用(体重増加、骨粗鬆症、高血糖など)には注意が必要である。また、約10〜15%の患者では側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)という合併症が発生し、頭痛や視力障害などの症状が見られた場合には、直ちに医師に相談することが重要である。
まとめ
リウマチ性多発筋痛症は、高齢者に多く発症する炎症性疾患であり、特に肩や腰、首の筋肉に痛みやこわばりが現れる。ステロイド療法が非常に効果的であり、多くの場合速やかに症状が改善するが、治療は長期間にわたることがある。治療中はステロイドの副作用や合併症に注意し、適切なリハビリテーションや栄養管理を行うことが重要である。