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顔面神経について

顔面神経は、脳神経の一つで、表情筋の動きや味覚、涙や唾液の分泌など、様々な機能を担っています。顔面神経に障害が起こると、顔面麻痺、味覚障害、涙や唾液の分泌障害などの症状が現れます。
 
顔面神経の機能
・運動神経成分:表情筋の運動、あぶみ骨筋反射を司る。
※あぶみ骨筋反射は大きな音がした時に、内耳への音の伝達を弱めて内耳を保護する反射です。
・感覚神経成分:舌の前2/3の味覚、外耳道、鼓膜などの温痛覚を司る。
・副交感神経成分:涙、鼻汁、唾液の分泌を司る(涙腺、顎下腺、舌下腺を支配)。
 
顔面神経麻痺
顔面神経麻痺は、顔面神経の障害によって起こる病気です。
・症状:額のしわ寄せ不能、兎眼(閉眼不能)、患側の口角下垂、あぶみ骨筋反射消失など。
※兎眼は、顔面神経麻痺により眼輪筋の筋力が低下することで、閉眼が不十分になり、乾燥性結膜炎を起こして眼球結膜の充血が生じた状態です。
※あぶみ骨筋反射の消失により、聴覚過敏が起こります。
 
顔面神経麻痺の種類
末梢性:顔面神経の末梢部分が障害されたもの。
・原因:Bell麻痺、Ramsay Hunt症候群、腫瘍(聴神経腫瘍、耳下腺腫瘍など)、側頭骨骨折、真珠腫性中耳炎など。
中枢性:顔面神経を支配する脳の部位が障害されたもの。
・原因:脳血管障害、多発性硬化症、脳腫瘍。
 
顔面神経麻痺の鑑別
中枢性と末梢性の顔面神経麻痺を鑑別するには、額のしわ寄せができるかどうかが重要です。末梢性では額のしわ寄せができませんが、中枢性では可能です
 
Bell麻痺
Bell麻痺は、末梢性顔面神経麻痺の中で最も頻度の高い病気です。
・原因:HSV-1の再活性化によって顔面神経に浮腫が生じ、顔面神経管内の神経が圧迫されるためと考えられています。
・症状:急性に発症し、多くは片側性で、顔面筋麻痺、兎眼などにより特有の顔貌を呈します。
・治療:副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド)単独または抗ウイルス薬(バラシクロビルあるいはアシクロビル)との併用投与、リハビリテーション、ビタミンB12製剤、ATP製剤、循環改善薬、人工涙液、星状神経節ブロックなど。
※重症例では外科的減圧術が行われることもありますが、星状神経節ブロックや手術について、薬物療法以上の有効性は証明されていません。
・予後:経過良好で多くは数ヵ月以内にほぼ症状が消失しますが、後遺症の残る例もあります。
 
Ramsay Hunt症候群
Ramsay Hunt症候群は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって起こる病気です。
・症状:片側の末梢性顔面神経麻痺(額のしわ寄せはできない)、味覚障害、耳介・外耳道の発疹および疼痛(耳性帯状疱疹)、感音難聴、聴覚過敏、めまい。
・治療:アシクロビル or バラシクロビル、副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド)など、Bell麻痺と同様です。
※ただし、抗ウイルス薬はBell麻痺よりも多量を要します。
・予後:Bell麻痺より不良です。
 
顔面神経の障害部位と症状
顔面神経の障害部位によって、現れる症状が異なります。
・例えば、顔面神経管の上位で障害が起こると、顔面筋麻痺に加えて、涙や唾液の分泌障害も起こります。
・一方、顔面神経管の下位で障害が起こると、顔面筋麻痺のみが起こり、涙や唾液の分泌障害は起こりません。
 
発音と脳神経の関係
顔面神経は、「パピプペポ」などの発音に関与しています。
・他の脳神経もそれぞれ特定の発音に関与しており、「パタカ」などを復唱させることで、脳幹障害の有無や、障害のレベルをおおまかに推定することができます。

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