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マイコプラズマ肺炎について

マイコプラズマ肺炎は、Mycoplasma pneumoniaeによる飛沫感染が原因で発生する非定型肺炎の代表的な疾患の一つです。この病原体は細胞壁を持たないため、β-ラクタム系抗菌薬が効かず、他の抗菌薬が必要です。
 
原因
・原因菌:Mycoplasma pneumoniae(無細胞培地で自己増殖可能な最小の微生物)
※この菌には細胞壁がないため、ペニシリンやセフェムなどのβ-ラクタム系抗菌薬は無効です。
 
疫学
・主に5〜25歳の若年層に好発します。5歳未満では稀です。
 
症状
・自覚症状が強く、X線所見の割に胸部理学的所見に乏しい(聴診してもラ音が聴取できない)点が特徴です。
主な症状
・激しい発熱
・頑固な乾性咳嗽
・胸部痛
・特有の発疹、耳痛、鼓膜炎、中耳炎、関節痛などがみられることがあります。
 
検査
マイコプラズマ肺炎を確定診断するには以下の検査が有効です。
血液検査:CRP上昇、白血球数正常(約50%)
胸部画像検査:スリガラス状陰影や間質性陰影など多彩です。
血清学的検査
・補体結合反応(CF法):単独で64倍以上またはペア血清で4倍以上の上昇で陽性となります。
・受動赤血球凝集反応(PA):単独で320倍以上またはペア血清で4倍以上の上昇で陽性となります。
・イムノクロマトグラフィー法:急性期の迅速診断ができますが、特異性に劣ります。
寒冷凝集素値
マイコプラズマDNA検出:PCR法、LAMP法など。
喉頭ぬぐいからの抗原検出
 
治療
第一選択薬
・マクロライド系、テトラサイクリン系(アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシンなど)
・小児や妊婦ではテトラサイクリン系は避けます。
重症例
・副腎皮質ステロイド(全身投与)を検討します。

※マクロライド耐性マイコプラズマ感染症が増加しています。
 
合併症
・Guillain-Barré症候群:末梢神経系に影響を及ぼす疾患。
・Stevens-Johnson症候群:皮膚の重篤な発疹。
・脳炎・無菌性髄膜炎:稀だが重篤。
・胸膜炎、皮膚紅斑、発疹、溶血性貧血、肝機能異常など。
 
予後
一般的には良好な経過をたどりますが、合併症を伴う場合や耐性菌感染の場合は注意が必要です。
 
ポイント
・発疹を伴う肺炎では、第一にマイコプラズマ肺炎を考慮します。
・幼児・学童で咳がひどく、発熱が続く場合は聴診でラ音がなくてもX線撮影を行い診断します。
 
マイコプラズマ肺炎は、一般的な肺炎とは異なり特徴的な臨床像を持つ疾患です。早期診断と適切な治療が重症化を防ぐ鍵となります。
 

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