新生児低血糖症とは?
新生児低血糖症は、出生後に母体からの糖供給が途絶えることで、さまざまな原因から血糖値が低下する疾患です。低血糖が放置されると、中枢神経に後遺症が残る可能性があるため、早期の発見と治療が非常に重要です。
新生児低血糖症とは?
新生児が母体からの糖供給を失った後、体内の糖代謝に問題があると血糖値が正常に維持できなくなることがあります。この状態を新生児低血糖症と呼びます。適切に対応しないと中枢神経にダメージを与える可能性があるため、注意が必要です。
新生児低血糖症の原因
低血糖を引き起こす原因は、グルコースの消費増加、グリコーゲンの不足、インスリンの過剰分泌の3つに分類されます。
1.グルコース消費の増加
周産期の異常や疾患によって、体内でのグルコース消費が増加します。
・新生児仮死後の回復期
・低体温
・呼吸窮迫症候群(RDS)
・感染症
・心疾患
・赤血球増加症
2.グリコーゲンの不足
糖を蓄えるグリコーゲンが不足している場合、低血糖を引き起こしやすくなります。
・早産児や低出生体重児
・Small-for-Gestational-Age(SGA:在胎期間に比べて小さく生まれた児)
・多胎児
・妊娠高血圧症候群
・飢餓状態
3.インスリンの過剰分泌
インスリンが過剰に分泌されると、血糖値が急激に低下します。
・糖尿病母体児(母親が糖尿病の場合)
・薬剤の影響:子宮収縮抑制薬(リトドリンなど)
・遺伝子異常:先天性高インスリン血症や遺伝的要因による持続性高インスリン血症
新生児低血糖症の症状
成人の低血糖とは異なり、新生児では症状が非特異的で気付きにくいことがあります。見逃さないために注意深く観察することが重要です。
主な症状
1.交感神経刺激症状
・振戦(震え)
・顔面蒼白
・発汗
・頻脈
2.中枢神経症状
・活動性の低下
・無呼吸発作
・けいれん
・嗜眠(強い眠気)
・異様な啼泣
・筋緊張の低下
新生児低血糖症の診断
血糖値の測定によって診断します。
・血糖値基準
一般的に30〜50 mg/dL以下が低血糖の診断基準となります。
・持続性低血糖の場合の検査
原因を特定するため、以下の項目を追加で測定します。
・インスリン
・遊離脂肪酸(FFA)
・ケトン体
・アンモニア
・血液ガス
・ホルモン基礎値
新生児低血糖症の予防
1.授乳の早期開始
母子ともに状態が安定次第、できるだけ早く授乳を始めましょう。母乳やミルクでエネルギーを補給することが重要です。
2.ハイリスク児のモニタリング
早産児や糖尿病母体児などのハイリスク児では、定期的に血糖値を測定し、必要に応じて予防的にブドウ糖液の投与を行います。
新生児低血糖症の治療
低血糖が確認された場合、迅速に治療を開始します。
基本治療
1.授乳の促進
早期の母乳またはミルクの摂取を促します。
2.ブドウ糖液の静脈注射
血糖値が改善しない場合、静脈注射で血糖値を上昇させます。
持続的な低血糖の場合
・ブドウ糖液の持続静注
通常、6~8 mg/kg/分の速度で投与します。
・グルカゴン筋注
血糖値の改善が見られない場合に使用します。
・ヒドロコルチゾンの静注
グルカゴンでも効果がない場合、ステロイドを投与します。
・ジアゾキシドの投与
高インスリン血症が疑われる場合に使用します。
注意点:輸液の糖濃度
・新生児では、糖濃度が12%以上の高濃度ブドウ糖液を投与する場合、血管炎を防ぐために中心静脈路を確保する必要があります。
新生児低血糖症は、早期発見と治療で後遺症を防ぐことができます。以下のポイントを押さえておきましょう。
・リスク児を把握する
早産児や糖尿病母体児などは定期的に血糖値を測定する。
・症状を見逃さない
振戦や筋緊張の低下など、微細な変化にも注意を払う。
・迅速に治療を行う
授乳の促進やブドウ糖液の投与を行い、血糖値を安定させる。
新生児の健康を守るためには、早期の診断と適切な対応が欠かせません。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。