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女性化乳房(Gynecomastia)について

定義  
女性化乳房は、男性において乳腺組織が異常に発達し、乳房が女性のように拡大する状態を指す。片側または両側に発生することがある。

原因  
女性化乳房の原因は多岐にわたり、以下のように分類される。
1. 生理的原因
・新生児期:母体由来のエストロゲンの影響
・思春期:一過性のホルモンバランスの乱れ
・老年期:テストステロンの減少、エストロゲンの相対的増加
2. 病理的原因
・ホルモンバランスの異常:低テストステロン血症、エストロゲン過剰
・肝疾患:肝硬変などによるホルモン代謝の障害
・腎不全:慢性腎不全に伴うホルモンバランスの乱れ
・甲状腺機能異常:甲状腺機能亢進症
・肥満:脂肪組織でのエストロゲン生成の増加
3. 薬剤性原因
・抗アンドロゲン薬:スピロノラクトン、フルタミド
・抗精神病薬:リスペリドン、ハロペリドール
・抗うつ薬:三環系抗うつ薬
・その他:デジタリス、シメチジン、アナボリックステロイド

病態生理  
女性化乳房は、エストロゲンとアンドロゲンのバランスが崩れることによって発生する。エストロゲンの過剰またはアンドロゲンの不足により、乳腺組織が刺激され、増殖する。

症状  
女性化乳房の症状は以下の通りである。
・乳房の腫脹:片側または両側の乳房が拡大
・乳房の圧痛:触れると痛みを伴うことがある
・乳房の硬結:乳腺組織が硬くなる

診断  
診断は以下の基準を基に行う。
1. 身体診察:乳房の腫脹、圧痛、硬結の確認
2. 血液検査:ホルモンバランスの評価(エストロゲン、テストステロン、LH、FSH、プロラクチン)
3. 画像診断:乳腺超音波、マンモグラフィー、胸部CTスキャンによる腫瘤の確認
4. 病歴の確認:薬剤使用歴、基礎疾患の有無

治療  
治療には以下の選択肢がある。
・原因の除去:薬剤性の場合、原因となる薬剤の中止や変更
・経過観察:思春期や一過性の症例では経過観察が選択されることが多い
・薬物療法:症状が持続する場合、選択的エストロゲン受容体修飾薬(タモキシフェン)やアロマターゼ阻害薬(アナストロゾール)が使用されることがある
・外科的治療:重症例や持続する症例では、乳腺組織の外科的除去が行われることがある

予後  
多くの場合、原因を取り除けば女性化乳房は改善する。思春期や一過性の症例では、自然に解消することが多いが、持続する場合は適切な治療が必要である。

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