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脳性麻痺(Cerebral Palsy:CP) とは?

脳性麻痺(CP) は、生まれる前から新生児期にかけて、脳の形成異常や損傷によって運動や姿勢の制御が困難になる病態です。日本では約1,000人に1〜2人の割合で発生し、低出生体重児や新生児仮死の既往がある場合に多く見られます。

脳性麻痺の原因
脳性麻痺の原因は、大きく3つの時期に分けられます。
1.出生前
・脳の形成異常
・胎児期の低酸素・虚血
・放射線被曝
・胎内感染や中毒

2.周産期(出生時期)(最も多い原因:全体の約70%)
・早産や低出生体重児
・脳室周囲白質軟化症(PVL)
・新生児仮死(低酸素性虚血性脳症)
・頭蓋内出血
・低血糖やビリルビン脳症

3.出生後
・脳炎や髄膜炎
・低酸素や虚血
・頭蓋内出血

特に、痙直型は早産や低出生体重児によるものが多く、ジスキネジア型(アテトーゼ型)は新生児仮死やビリルビン脳症が原因となることが多いです。

脳性麻痺の病態と分類
障害された部位により、運動障害のタイプが異なります。
1.痙直型(Spastic Type)  
・原因部位:錐体路系  
・特徴:筋トーヌス(緊張)が亢進し、バビンスキー反射陽性。動きがぎこちなくなる。  
・頻度:最も多く、全体の約80〜90%。

2.ジスキネジア型(Dyskinetic Type)  
・原因部位:大脳基底核  
・特徴:不随意運動が見られ、筋トーヌスが亢進する。アテトーゼ型とも呼ばれる。  
・頻度:全体の約10%。

3.失調型(Ataxic Type)  
・原因部位:小脳  
・特徴:筋トーヌスが低下し、平衡感覚が損なわれる。歩行や動作が不安定になる。

さらに、片麻痺、対麻痺、四肢麻痺などの麻痺の種類で細かく分類されます。

脳性麻痺の合併症
・知的障害:一部の子どもに見られる。
・脳神経障害:構音障害(言葉がはっきりしない)や嚥下障害。
・てんかん:運動障害に加え発作が見られることも。
・二次障害:痙直が強い場合、関節拘縮や脊柱側弯症が進行することがあります。

脳性麻痺の治療
脳性麻痺には根治療法はありませんが、早期からの治療により運動機能や生活の質(QOL)の向上が期待できます。
1.理学療法・作業療法
・早期から運動訓練を行うことで、運動機能の改善や骨関節の変形予防を目指します。

2.薬物療法
痙直に対する薬物:  
・ベンゾジアゼピン系薬やダントロレンを経口投与。  
・重症例では、髄腔内バクロフェン療法(ITB)を実施。  
・ボツリヌス毒素注射:局所の痙縮を軽減。

3.合併症や二次障害への対処
・関節拘縮や脊柱側弯症などには対症療法を行います。

まとめ
脳性麻痺は早期発見と治療が鍵となる病態です。適切なリハビリテーションや薬物療法により、運動機能や生活の質の改善が期待できます。また、合併症への対処や日常生活の支援も非常に重要です。

早期からの介入によって、子どもたちの可能性を最大限に引き出すことができるため、専門医やリハビリ専門家との連携が欠かせません。


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