慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)とは?
COPDは、たばこを主とする有害物質を長期間吸入することで生じる肺の疾患で、慢性的かつ緩徐に進行し、一度発症すると正常な状態には戻らない気流制限を特徴とします。
COPDの疫学と好発年齢
・喫煙歴のある40歳以上に多く見られます。
・日本では男性に多い傾向がありますが、近年では女性の喫煙者も増えており、注意が必要です。
主な症状と所見
・慢性的な咳嗽(せき):長期間続くせき。
・喀痰(かくたん):痰が多く出る。
・労作時呼吸困難:体を動かしたときに息切れがする。
これらの症状は徐々に進行し、日常生活に支障をきたすことがあります。特に呼吸困難は最も多い主訴で、体動の制限から日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)の低下につながります。
COPDの検査と診断
スパイロメトリー(肺機能検査)
・1秒率(FEV1%):気管支拡張薬投与後に70%未満であれば、閉塞性換気障害と診断されます。
動脈血液ガス分析
・酸素飽和度(SpO2)や動脈血酸素分圧(PaO2)の低下。
・二酸化炭素分圧(PaCO2)の上昇(または正常)。
・pHの低下(または正常)。
胸部X線検査
・肺の過膨張:肺が通常より膨らんでいる状態。
・肺野透過性の亢進:X線が通りやすくなるため、画像が黒く見える。
・滴状心:心臓が水滴が落ちる直前のような細長い形状をしている。
・横隔膜の平低化:横隔膜が平らに低くなる。
治療と管理方法
COPDは根本的な治療法がないため、症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させるための包括的な管理が重要です。
1.安定期の治療
⑴薬物療法
・気管支拡張薬:抗コリン薬やβ2刺激薬で気道を広げ、呼吸を楽にします。
・吸入ステロイド:炎症を抑えるために使用します。
⑵その他のアプローチ
・禁煙:COPDの進行を防ぐ最も重要なステップです。
・感染症予防:インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種を推奨します。
・呼吸リハビリテーション:運動療法、呼吸訓練、栄養指導などで体力と呼吸機能を維持・向上させます。
・呼吸管理:在宅酸素療法(HOT)や換気補助療法を行います。
・外科療法:内科的治療で効果が不十分な場合、肺容量減量手術(LVRS)を検討します。
2.増悪期の治療
症状が急激に悪化した場合の対処法です。
⑴薬物療法
・抗菌薬:感染症が原因の場合に使用します。
・気管支拡張薬とステロイド:症状の緩和と炎症の抑制を目的とします。
⑵呼吸管理
・酸素療法:低下した酸素レベルを補います。
・換気補助療法:呼吸筋の疲労を軽減します。
COPDと喘息の違い
COPDでは、気管支拡張薬の吸入後も完全には正常値に戻らない閉塞性換気障害が特徴です。これは喘息との大きな違いで、喘息では気管支拡張薬により正常な状態に回復することが多いです。
生活上の注意点と予防
・禁煙の徹底:喫煙はCOPDの最大のリスク要因です。
・定期的な検診:早期発見と治療が進行を遅らせます。
・適度な運動:医師の指導のもと、呼吸リハビリテーションを継続します。
・バランスの良い食事:栄養状態を良好に保つことで体力を維持します。
・感染症の予防:手洗いやマスクの着用、ワクチン接種を心がけましょう。
まとめ
COPDは、長年の喫煙から生じる深刻な肺の疾患です。症状は徐々に進行し、一度発症すると完全に元の状態に戻ることは難しいため、早期の発見と禁煙が何よりも重要です。適切な治療と生活習慣の改善により、症状の進行を抑え、生活の質を向上させることが可能です。
心当たりのある症状や長期の喫煙歴がある場合は、早めに医療機関で検査を受けることをおすすめします。