我慢できない強い尿意!!! 過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)について
高齢者の多くの方が悩んでいる「過活動膀胱(OAB)」。突然の強い尿意や頻繁なトイレ通いで生活の質が低下している方も多いのではないでしょうか。過活動膀胱は適切な治療で症状を改善することが可能です。
過活動膀胱とは?
過活動膀胱とは、「尿意切迫感」を必須症状とし、通常は頻尿や夜間頻尿を伴う症候群です。ときには、トイレに間に合わずに尿が漏れてしまう切迫性尿失禁を起こすこともあります。
・尿意切迫感:突然に強い尿意を感じ、我慢するのが難しい状態。
・頻尿:日中の排尿回数が多い(通常8回以上)。
・夜間頻尿:夜間に排尿のために1回以上起きなければならない状態。
・切迫性尿失禁:強い尿意により、トイレに間に合わず尿が漏れてしまう。
過活動膀胱の疫学・好発年齢
・高齢者:加齢に伴い発症率が高まります。
・中枢神経疾患や下部尿路閉塞疾患を持つ患者さんにも見られます。
・男女問わず発症しますが、特に高齢女性に多く見られます。
過活動膀胱の原因・誘因
過活動膀胱の原因は一つではなく、以下のような神経因性および非神経因性の要因が考えられます。
神経因性の原因
・脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)
・パーキンソン病
・多発性硬化症
・脊髄損傷や脊髄疾患
非神経因性の原因
・下部尿路閉塞(前立腺肥大症、尿道狭窄など)
・加齢による筋力低下
・骨盤底筋群の脆弱化
・肥満
・妊娠・出産による骨盤底への影響
過活動膀胱の症状
・尿意切迫感:我慢できない強い尿意を急に感じます。
・頻尿:日中の排尿回数が増加します。
・夜間頻尿:夜間に何度も目が覚めてトイレに行く必要があります。
・切迫性尿失禁:強い尿意により、トイレに間に合わず尿が漏れることがあります。
これらの症状により、日常生活や仕事に支障をきたし、心理的なストレスも増加します。
過活動膀胱の診断方法
1.症状の聞き取り
・尿意切迫感の有無:診断の必須条件です。
・排尿回数や失禁の頻度:詳細な症状を確認します。
2.過活動膀胱症状質問票(OABSS)
・患者さん自身が症状を評価するための質問票です。
・点数化することで症状の程度を客観的に把握できます。
3.除外診断
・膀胱腫瘍、膀胱結石、尿路感染症(膀胱炎など)といった他の疾患を除外するため、尿検査や超音波検査を行います。
4.他の疾患との鑑別
・間質性膀胱炎:尿意切迫感や頻尿を呈しますが、治療法が異なるため注意が必要です。
過活動膀胱の治療・管理方法
過活動膀胱の治療は、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行います。
1.薬物療法
・抗コリン薬(プロピベリン、ソリフェナシン、フェソテロジンなど)
・作用機序:膀胱の過剰な収縮を抑制します。
・β3受容体刺激薬(ミラベグロン、ビベグロン)
・作用機序:膀胱の平滑筋を弛緩させ、蓄尿能力を高めます。
2.非薬物療法
・膀胱訓練
・排尿間隔を徐々に延ばし、膀胱容量を増やす訓練です。
・生活指導
・飲水制限:過剰な水分摂取を控えます。
・排尿習慣の改善:規則的な排尿を心がけます。
・理学療法
・骨盤底筋訓練(ケーゲル体操):骨盤底筋群を強化し、尿失禁を予防します。
3.難治性過活動膀胱への治療
・電気刺激療法
・磁気刺激療法
・仙骨神経電気刺激療法
・ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法
これらの治療法は、一般的な治療で効果が得られない場合に検討されます。
日常生活での注意点
・カフェインやアルコールの摂取を控える
・これらは膀胱を刺激し、症状を悪化させる可能性があります。
・適度な運動
・体重管理や筋力維持に役立ちます。
・排尿日誌の作成
・自分の症状を把握し、医師との相談に役立ちます。
過活動膀胱と間質性膀胱炎の違い
過活動膀胱と間質性膀胱炎は、症状が似ているため混同されやすいですが、以下の点で異なります。
間質性膀胱炎
・膀胱の慢性的な炎症により、頻尿や膀胱痛を引き起こします。
・尿意切迫感よりも、下腹部や膀胱の痛みが主な症状です。
・治療法:抗アレルギー薬、抗うつ薬、膀胱内注入療法など。
適切な診断と治療のために、専門医の受診が重要です。
まとめ
過活動膀胱は、高齢化社会においてますます重要な問題となっています。しかし、適切な治療と生活習慣の改善により、症状の改善が期待できます。
重要なポイント
・尿意切迫感がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
・自己判断で水分摂取を極端に制限しないように注意してください。
・薬物療法と非薬物療法を組み合わせることで、効果的な治療が可能です。
最後に
過活動膀胱の症状に悩んでいる方は、一人で抱え込まずに専門の医療機関で相談してください。生活の質を向上させ、快適な日常生活を取り戻すために、一緒に対策を考えていきましょう。