偏食で友達ゼロでも、私は飲み会を戦い抜いた。
大学の春休みを利用して、5日間、インターンシップに参加した。今回は諸事情により詳しい内容を言うことができないのだが、日本全国から約10人の参加者が名古屋に集まった。
日中はみんなでインターンに参加し、夜に解散。
私は近場から来ているので家に帰るし、遠方から来ている人はホテルに帰る。
インターン参加者はみんな、異様に仲が良かった。
インターンのために集まっただけなのに、初日から友達のようだった。
友達のような存在。
私は勝手に「疑似友達」と呼んでいた。
2日目にして、インターンが終わった後、飲みに行くことになった。
参加者のひとりに飲み会大好き男がいて、そいつがみんなで飲みに行きたいと言い出したのだ。
私は今まで何社かのインターンに参加したことがあるが、参加者全員で飲みに行くようなことは1回もなかった。
参加者の一部で昼休みにランチに行くことはあったが、終わったらみんなそそくさと帰ってしまい、飲みに行くなんていう話がでることは1度もなかった。普通はインターン生みんなで飲みに行くなんてないのだろう。
だが、飲み会大好き男がひとりいたせいで、飲み会をする感じになってしまった。
私はかなり偏食であるし、お酒も飲まない。だから、正直飲みに行くことに対して乗り気ではなかった。
だが、飲み会大好き男は「夜都合悪い人おる?」などと聞いて回って、飲みに行く気満々であったし、まわりもみんな乗り気であった。
私だけ断るわけにもいかないし、友達の居ない私には飲み会という場を経験するチャンスは貴重なことだし、参加することにした。
2日目の昼休み開始5分の時点で、今夜飲みに行くことが決定。
飲みに行く前に、まずは昼食。
会社の近くの店でみんなでランチを食べるか、コンビニ弁当かの2択。
私は「コンビニで良いよね。どうせ夜飲みに行くんだし。昼も飯行ってたら金かかってしょうがない」と提案した。
みんな賛同してくれて、全員で最寄りのコンビニへ買い物へ向かった。
みんな、買い物するのが遅い。
インターンは5日間基本的に全員が毎日ランチはコンビニ飯だったが、私は毎回一番に買い物を済ませて店を出ていた。
私は入店して20秒後にはおにぎりを2つ取り、レジに並んでいる。
毎回同じおにぎりを2個買うというわけではなく、レジでお会計する寸前に咄嗟の判断でアメリカンドッグを購入するなどのアドリブも効く。
店を出ると、そそくさと会社には戻るのではなく、他のインターン生を待ってやる。
待っていると、各々買い物を済ませると徐々に店を出て私のもとにやってくる。
外に出てきた組は、喋りながら残りのメンバーの買い物を待つ。
この日の話題は、今夜予定している飲み会について。
私は言った。
「○○(飲み会大好き男の名前)が飲みたいって言い出したんだから、アイツに金払わせよう?だってさ、俺ら実家組なんてさ、飲みに行かなきゃ夕飯代タダなんだよ?なのに、アイツが言うから仕方なく行くんじゃない。ね?」
文章だけで見ると本気で言ったように見えるかもしれないが、実際は半分冗談であるし、冗談な感じの言い方で言ってある。
ちなみに、飲み会大好き男はこの会話時点では店内で買い物中。
他のメンバーは「まぁまぁまぁ、確かにね。でもさすがに全部払わせるわけには…」などと笑いながら言う。
私は「いやでも、多少は多めに払わせよ」などと言った。
真剣な表情で「しゅんき、それはいけないと思うよ」などと言う者はいなかった。みんな、笑いながらツッコミを入れる程度だ。私が冗談半分で言っていることを理解している。
そして私は「アイツに予約させようか。ね。アイツが言い出したんだから。こんな大人数だと居酒屋でも予約しないとパッと入れないかもしれないし」と言った。
これは本気だ。飲み会をしたいと言い出した者が、責任をもって予約すべきである。
会社で序列があり、先輩が部下に「飲みに行こうぜ。ちょっと予約しといてくれよ」と言うなどの場合は別だが、今回はインターン生同士対等な立場である。ここは言い出しっぺが予約すべきだ。
店を出てきた飲み会男に私は「○○(名前)、夜飲む店探して予約しといて」と言った。
男はすぐに了承して、予約してくれた。
私は「そんなこと言うならお前が予約しろよ」と言われる可能性もあるのではないか?と考えたりもしていたが、すんなり予約してくれて助かった。さすがに言われるはずがない。私は飲みたいと言っていないのだから。彼が言い出したのだから、当然のことだ。
最近、ネット上の人からのいろいろな意見を取り入れすぎて、頭がこんがらがる。
取り入れて成功だったものもある。
私は普段大学で知人を呼ぶとき「お前」としか呼ばないし、知人も私を「お前」と呼ぶ。そのことをTwitterに書いたとき「名前を呼べ」と何人もに言われた。
今回のインターンでは、インターン生のことをきちんと名前で呼んだ。
というか、みんな仲が良くてあだ名もついていたので、あだ名で呼んだ。飲み会大好き男のことも、きちんとあだ名で呼んだ。
男が予約してくれた店は、私にも食べることができそうなメニューがあって、助かった。これで安心して午後の業務にも取り組める。
店に入ることができず会社の近くを彷徨う必要もない。
私は、コンビニで買い物をするとか、空いているお店を探すとかそういう段取りが嫌いだ。そういうことは、さっさと終わらせたい。
早く買い物を済ませてゆっくり喋りながら食事したいし、早く店に入って座ってゆっくり話しながら飲みたい。
午後もインターンでためになる情報をたくさんゲットして、いざ飲み屋へ。
今回の私のミッションは、喋りすぎないこと。
前回、大学の研究室の忘年会に参加したとき、ほぼ私しか喋っていなかった。
聞き手になれるように頑張ろう。
そう思いながら、入店し、着席。
私は左利きなので、左端の席を取った。
着席すると、まずは注文を決める。
最初は、飲み放題にするか否か。
飲み放題にするならば、全員飲み放題を注文しなければならない。
私はお酒を飲まないので、高くつく飲み放題はなるべく避けたいところだ。
しかし、過半数がお酒を飲み、飲まないのは3人だけだったので飲み放題にされてしまった。まぁ仕方ない。
飲み会大好き男に至っては、飲み放題のことを「のみほ」と略して呼んでいた。なんか、その感じがすごく嫌だった。店をすんなり予約してくれて彼の好感度は私の中で結構上がっていたが、ここで再びゼロに戻った。
私は「ノミホって何?菅野美穂さんのことですか?」というユニークな冗談を思いついたが、言うのはやめた。
今は注文が先だ。ユニークな冗談は、注文の段取りが終わってからだ。
そして今この文章を書いていて気づいたが、この冗談はユニークではなかった。
注文していると、私のすぐ隣に座った男がお酒を飲まないタイプの人間だとわかった。これは大きい。隣の男を味方につけることができると、今後の会を有利にできる可能性が高い。
9人で飲みに行ったが、
注文するのは私達左側陣営4人と右側陣営5人で別れた。
座席はくっついていて一応ひとつのテーブルに9人いるのだが、
私と、隣に座った酒飲まず男、そしてその向かいの2人が私たちの陣営だ。
私はメニューを開き
「コレはとりあえず食べるよね?」などと注文を決めていく。
右側陣営から「枝豆…」などと聞こえ
私は「向こう陣営に枝豆取られた!やばい!なんか良いもん頼め!向こうより良いやつ!」などと言う。
右側陣営から「いや、別に勝負じゃないのよ」とツッコまれた。
私は、居酒屋というのは膨大なメニューの中からいかにナイスな注文をするかというのが大事だと思っていた。
さらに私の場合は偏食なのも相まって、何を注文するかというのはかなり大事だ。食べられないものばかり注文されると困る。
枝豆は私の食べられる数少ない食べ物のひとつなので、右側陣営に取られたのはかなり痛い。
しかし、ここで、左側陣営と右側陣営で同じものを頼んでも良いということが発覚。
食べ物は左側は左側だけで、右側は右側だけでシェアするのが基本だから両陣営で同じものを注文しても問題ないのだ。
私はてっきり、右側陣営が注文した枝豆はまず右側で4分の3くらい消費され、残りが左にまわってくるのかと思っていた。
こちらも枝豆を頼んでよかったのだ。
私は気が楽になった。
しかし、私が気を緩めた途端、我々左側陣営の、私の向かいに座る男が
「馬刺し食べたい」と言い出した。これはいけない。
私は馬刺しなど食べられない。
「馬刺しなんか誰が食うんだよ!なぁ?」と私は味方につけた隣の男を見た。
男は「うん。俺も食べれないな…」と言った。
なんて私と相性が良い奴だ。私は隣の男を気に入った。
「誰が食うんだよ!って…(笑)」と右側陣営の男がこちらを見て笑う。
さすがに言い方がきつすぎた。私も冗談めいた口調で言ったとはいえ、本当に馬刺しを食う奴の気が知れないので内容はマジといえばマジだ。
私は「頼みたかったら頼んでも良いけど、ここ2人は食べないからね」と修正した。
その後も注文を決めながらメニュー表を最後のページまでめくりきったところで、驚愕。
私は言った。
「居酒屋なのに唐揚げもポテトもだし巻きもないの!?」
メニュー表を最後まで見て、本当にその3つがなかったのだ。あり得ない。
居酒屋に行ったときは私は大体
枝豆、唐揚げ、ポテト、だし巻き、焼き鳥などでやり過ごす。
唐揚げ、ポテト、だし巻きがないなんて。本当にここは居酒屋なのだろうか。信じられない。
動揺する私に対し、向かいに座る男は動揺する素振りひとつ見せずに言った。
「油淋鶏ならあるよ」
私はまず、油淋鶏が何なのか知らない。
油淋鶏という名前は聞いたことがあるが、どんな料理なのか全く知らない。
私は聞いた。
「何?油淋鶏って」
男が言うには、唐揚げに何かタレをかけたようなものらしい。
私はタレが基本的に好きではない。
焼肉のタレが嫌いだから、焼肉屋では牛タンばかり食べてその場をしのぐ。
ドレッシングも嫌いだから、サラダは嫌いだ。
タルタルソースが嫌いだから、かけずにエビフライなどを食べる。ウスターソースは好きだ。
唐揚げにタレがついている…
どんなタレか知らないが、とりあえず食べてみることにした。基本は唐揚げなので、タレがおいしくなくても食べられるだろうと踏んだ。
頼んだ料理が続々と運ばれている。
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油淋鶏、正直タレがない普通の唐揚げのほうが美味しいと思うが、タレがかかっていても、食べられないことはなかった。普通に美味しく食べることができた。よかった。
「唐揚げのほうがいい…。なんで唐揚げ水浸しにしちゃうかなぁ…」
「水浸しって何?タレのこと水浸しって言わんって!」
などと、会話を楽しむ。
喋りながら、食事を嗜む。
最初の話題は、みんなの出身地。
今回のインターンには、全国から人が集まってきている。
私の隣の酒飲まず馬刺し食べず男は、愛媛から来ていると言う。
私は言った。
「福田和子のところだ!ね?」
彼は「誰…?」と困惑していた。
ここまでお酒や馬刺しのことで相性が合うと思っていたが、ここにきて福田和子がわからないとは。
非常に残念。
愛媛で有名人といえば福田和子だと思う。愛媛県民で福田和子を知らないなんて、そんなことがあるのだろうか。
だが、確かによく考えてみると、その地方出身の有名タレントであれば役場に写真やパネル、垂れ幕があったり、場合によっては広報大使をしていたりするだろうが、福田和子は愛媛の広報大使をしていないし、役所に写真は貼りだされておらず、貼られていたとしても指名手配の写真くらいだろう。愛媛に住んでいても福田和子を知らないこともあるのかもしれない。
「あと友近も愛媛だよね!」
「絶対友近のほうが先だろ!なんでまず福田和子なんだよ!」
「福田和子と友近とミカンの街、愛媛」
など、みんなで会話を楽しんだ。
しばらくして、右側陣営の男が言う。
「アイツ真ん中に置く?めっちゃ話すし」
私を真ん中に座らせようと言い出した。
これはマズい。
また私ばかり喋っているということだ。
研究室の飲み会よりかは、みんなよくしゃべっていて、沈黙はない。
研究室の仲間のほうがたくさんの時間をいっしょに過ごしているはずだが、会って2日目のインターン生のほうがなぜか仲が良い。
みんなたくさん喋っているとはいえ、その中でも私が特に喋ってしまっていた。
私は左利きなこともあるし、あまり喋りすぎないためにも、座席は移動しなかった。
そして、みんなお酒が入って結構テンションが上がってきている感じがするし、私が黙ってもみんなで勝手にどこまでも盛り上がっていけそうだ。
みんな、結構飲んでいる。
会を取り仕切っている飲み会大好き男が、とにかくみんなに飲ませようとする。
「○○、次何飲む?」とみんなに聞いている。
まだグラスに半分くらい酒が残っている人に対しても「何飲む?」と聞き始める始末。
この男はなぜこんなに飲ませようとするのだろうか。
良く言えばグラスが空いていることを気にしてくれる気が利く男だが、普段からそんなハイペースでみんな飲むのだろうか。
予約もするし会話も回すし酒も飲ますし、コイツは単なる飲み会大好き男ではない。飲み会マスターだ。
私の好きなKREVAが所属する音楽グループ「KICK THE CAN CREW」の楽曲の歌詞の中で「飲み会マスター」と出てくるものが何曲かあるが、アイツはまさに飲み会マスターだ。こういう人間のことを飲み会マスターと呼ぶのだと思った。
飲み会マスターは酒を飲まない私に興味は無いので、
飲み会マスターが酒を注文するときについでに私は
「あと、カルピス1つください」と言う。
すると、隣のお酒を飲まない男が「○○ジュース、ください…」と小声で言う。
私が毎回「自分の注文に自信持て!酒飲む奴らに負けるな!」と言う。
隣の男が小声で注文して、私が「自分の注文に自信持て!」と言うノリができあがった。
たのしい。
それでも、私があまり喋らないように目立たないようにしていると、話題はいつの間にか女性関係の話、恋愛話へ。
誰かの元カノだか何だかの話になり、
「写真見せてや」などと誰かが言い出し、みんなに見せる。
「めっちゃ可愛いやん!」などと言ってはしゃぐ。
そして、各々元カノや今付き合っている人との写真を全員に見せてまわる。
私にも一応見せてくれる。
みんな楽しそうに、各々の写真を見ている。
私にはその感覚がよくわからない。
長年の付き合いのある友人とかならまだしも、会って2日目の奴の元カノを見ても、何も思わない。
途端に話についていけなくなった。
私は元カノも今付き合っている女性もいない。
仕方ないので、カメラフォルダを漁って見つけた、
数年前にオリエンタルラジオの中田敦彦と撮ったツーショットをみんなに見せて対抗した。
これくらいしか対抗できるものがなかった。
天竺鼠川原とのツーショットもあったが、これはおそらくお笑いファン以外からの知名度は高くないだろう。
中田との写真にして正解だった。
みんな「え、すご」などと反応してくれた。
でも、相変わらず恋愛の話にはついていけない。
会を回している飲み会マスターがとにかく女好きな感じで、ギャルが好きらしい。ずっと女の話をしたがる。
みんな、経験人数を発表し始めた。
「1人」「2人」と言う人がほとんど。
飲み会マスターだけ「2。軽いの入れたら6くらい」とよくわからないことを言っていた。
確かに、そう言われてみると、飲み会マスター、ちょっとだけイケメンな気もする。ロンTの白さと、上に羽織っているシャツの爽やかブルーさでイケメンに演出されているだけな感じもあるが、飲み会での立ち振る舞いなど見ると、モテそうな感じもする。
私も経験人数を聞かれたので「めちゃめちゃ童貞や」と言った。
その後、もうひとり童貞がいたが、そいつは「ゼロ」と答えた。
私は経験人数を聞かれたときに「ゼロ」と言うのがあまり好きではない。
せっかく「童貞」という熟語が用意されているのだから、言うべきだ。
「ゼロ」というのは、どこか潔さが無い。
私は「友達もろくに居ないのに、彼女なんか居るわけない」などと喋った。
すると、右側陣営の男が「俺たち、友達だろ」などと言い出した。
こういう人、よくいる。
今まで何人も見てきた。
学校の授業で、ペアを組む。グループを組む。
普段私とは喋らない、明るい人間たちと喋る。
何かの拍子に「俺、友達とか居ないからな~」と私が言う。
すると、明るい男は「なに?俺たち、友達だろ?」と言う。
私は素直に喜び「ありがとう!友達初めてできた!うれしい!」と言う。
その後の休み時間、彼に話しかける。
彼らは「何?」という顔をする。
「本当に友達の感じで来るのは違うだろ」
「便宜上というか建前というか、それで友達と言っただけで、本当に来るのは違うだろ」みたいな雰囲気を出す。
もしくは、軽くあしらわれるというか、部外者、遊びに来た よそ者の感じで扱われる。
休みの日に遊びに行こうと誘えば、断られる。
まだ日程も場所も何も示していないのに、「今度どっかみんなで遊びに行かない?」くらいの提案で、もう断られる。
「俺たち、友達だろ?」という言葉は、その場を和ますために言うだけであって、本意ではないのだ。
悲しい思い出が、蘇ってきた。
飲み会の最後の数十分、私はほとんど何も喋らなかった。
飲み会マスターが言う。
「しゅんき、口数減ってね?なんか酔って疲れた人みたいになってるけど、1杯も飲んでないやろ」
私は「いやいや、大丈夫大丈夫」と言う。
彼は「疲れた?大丈夫?」などと、私に気を遣ってくれた。
飲み会マスター、こういうのがモテるんだろうな。
まぁ良い。
今回の飲み会は失敗だ。
前半は福田和子の話など楽しく喋っていたが、中盤の恋愛話からついていけなくなり、後半は一言も喋らず飲み会マスターに心配される始末。
飲み会マスターが一度お会計を全部払ってくれて、その後ひとり数千円ずつ、飲み会マスターに支払う。
支払いを済ませると、もう帰るだけだ。
私はそそくさと上着をハンガーから取り、荷物を持って、店を出た。
みんな、何やらゆっくりと上着を着たり立ってゆっくりしている。
店を出て、帰りの電車に乗った。
何気なくスマホを開くと、数分前にひとりの男からのLINEと不在着信が入っている。
私に連絡をくれたのは、今回のインターンのメンバーだ。
何の用だろう。何か忘れ物でもしただろうか。
私はLINEした。「何?どうした?」
すぐに返事が来た。
「急にいなくなってたから、生存確認」「もう電車乗ってる?」
よく分からなかった。
翌日会って喋ってわかったのだが、
私はもうお会計も済ませたし帰るだけだと思っていたが、店を出たところで1度待って、全員が店を出たところで「じゃ、今日はありがと~また明日ね~バイバイ」みたいな感じで解散するはずだったのだ。
だが、私だけ店を出てそそくさと駅に歩いて電車に乗ってひとりで帰ってしまったので、連絡が来ていたのだ。
今思えば、確かにみんなが店を出るのを待つべきだと思う。
だが、私の言い分として聞いてほしいのは、
あのとき、店を出たところで、外人の団体が居て、それがすごく嫌だったのだ。
だから私は、店を出た瞬間「うわ!外人の団体!最悪!」と思い、とにかくそこを離れたくて、すぐに駅に歩いてしまったのだ。
これは外人の団体がたまたまそこにいたことによるものであって、私が何か悪いというわけではない。(外人の団体が居るのもまぁ仕方ないことだ。私が退店するタイミングとたまたま被ってしまったというだけのことで、外人差別をしたいとかそういうことを言っているわけではないことに注意)
私は次の日の朝みんなと会ったとき、そのことを喋った。
「ほら、外人がいっぱいいたでしょ?」
「いたねぇ。」
「だからさ、私それがすごい嫌で、すぐ歩き出しちゃった。大丈夫だった?みんな私のこと探してた?」
「いや、大丈夫。『オモロっ』てなってた。実はめちゃくちゃ飲んでてどっかで倒れてんじゃね?とか言ってた」
よかった。私を待ってみんなの帰宅が遅れるというようなことはなかったみたいだ。
でも、今回の飲み会は失敗だ。
その後、もう1度飲み会のチャンスがやってきた。
1度目の飲み会の数日後、飲み会マスターが「明日もう1回みんなで飲み行こうや」などと言い出した。
今度こそ、良い塩梅で喋ろう。
前半喋り倒して、後半置物にならないようにしよう。
2度目の飲み会開始。
飲み放題1杯目はジュースにしたが、2杯目でお酒に挑戦した。
母にほろ酔いをコップ1杯分わけてもらって飲んで「いらないいらない!」などと騒いでいた私だったが、グラスいっぱいの酒を頼んだ。
私はみんなに「私が飲むなら何が良いかな?」と聞いた。
飲み会マスターが「ファジーネーブル、ほとんどジュースみたいな感じだから良いよ」とおすすめしてくれたので、マスターの指示通りファジーネーブルを注文。
ファジーネーブルというのは、オレンジジュースと桃ジュースを混ぜたお酒らしい。
確かに飲んでみると、オレンジと桃が混ざった味がする。
なぜ混ぜるのだろうか。意味が分からない。
オレンジジュースと桃ジュースは別物だ。別々で飲んだほうがおいしいに決まっている。
オレンジと桃を混ぜるなんて、ドリンクバー初体験の幼稚園児がやることだ。
だが、慣れてくると意外と飲めた。
なんとか1杯飲み切った。
私の対角線上の席に座る男が言う。
「マズい?」
私は、食事がおいしくないと、すぐ顔に出る。
男は私の偏食具合に興味があるらしく、
「これは食べれる?」などとしつこく聞いてくる。
私はいつもの偏食トークを披露。
「水浸しのご飯が嫌い。卵かけご飯とかダメだね」
「お茶漬けとかは?」
「お茶漬けも絶対食べれない」
「炊き込みご飯は良いの?」
「炊き込みご飯はOK」
「チャーハンは?」
「チャーハンも大丈夫」
「オムライスは?」
「オムライス?オムライスをほとんど食べたことないのよね…。多分、1回食べて嫌だったから親がつくらなくなったと思う。でも、食べれると思う。チャーハンを卵で包んでるだけだから」
「いや、チャーハンじゃないよ!オムライスの中身チャーハンじゃないって!」
みんな、爆笑している。
意味が分からない。
私はオムライスの中身はチャーハンだと思っていた。
確かに色味こそ少し赤いが、あれもチャーハンの一種だろう。
私の偏食トークで場が結構盛り上がった。
とある男が言った。
「これでデータ取って、何が食べれないか分析して、論文書けるわ!」
私は言った。
「いいね!卒業論文にそれ書いてよ!そしたら私、今後会う人にはいちいち説明しなくてもその論文見せるだけで良い」
彼は「いや、自分で書けよ!」と言って笑った。
意味が分からない。論文にできると言い出したのは彼のほうなのに。
そんなことを言いながら、私はお酒とジュースを交互に飲んだ。
桃とオレンジのファジーネーブルのあとは、ピーチウーロンというお酒を飲んだ。
桃ジュースとウーロン茶を混ぜたものらしい。
これも、幼稚園児がドリンクバーでふざけてつくるようなメニューだ。
飲んでみると、お茶とジュースの相性が悪く、全然おいしくなかった。
さっきのファジーネーブルのほうがよほど良い。
ジュースでお口直しをしたあとは、再びファジーネーブルを飲んだ。
そういえば、今回の飲み会、誰か参加者の友達が来る可能性があるみたいな話があった。
飲み会マスターが「○日に飲みたい」と言ったとき、ひとりの男が「俺その日、友達3人と飲む予定あるんだよね…」と言った。
マスターは「ええやん!そいつらも連れて来てや!」と言った。
そんな初対面の知らない人を連れて来てどうするつもりか。
結局その男は友達3人と飲みに行き、今回の飲み会には来なかった。
その話になったとき、私は冗談半分で「じゃあ、代わりに私のTwitterのフォロワー呼んでみようか」と言った。
本当に呼んだら来てくれそうなくらいフットワーク軽めな女性がひとり、私のフォロワーに居る。
その人は以前1度だけ私と会ったことがあったが、そのときも、昼ごろに「会いませんか?今日でも明日でも!」みたいな連絡が私の元に来て
「今日会えますよ」と言ったら2時間後に待ち合わせになった。
そのくらいの感じで急に会える人なのだ。
本当に来たら面白そうだ。
みんな最初は「なんで?」「何しに呼ぶんだよ(笑)」みたいな感じになったが、飲み会マスターが「女の子?」と聞いてきて私が「うん」と答えると、
「え?女の子?呼ぶ?」とギャル好き飲み会マスターが乗り気になり、本当に呼ぶことになった。
私はDMを送り、その子を呼んだ。
マスターは「しゅんき、返事来た?」と私に3分に1回くらい聞いてきた。
私は「返事来たらすぐ言うから!」と言うが、それでも
「返事来た?」と何度も何度もしつこく聞いてきた。
その後、返事が来て、女性が1人で来てくれることになった。
知らないインターン生の集まりに、ひとり関係ない女性が合流。
そして、座席の位置関係上、私しか知り合いが居ないのに、私のフォロワーなのに、彼女は私がいないほうのテーブルに座ることになってしまった。
でも、私のフォロワーも結構喋りがうまくて、飲み会は大盛り上がり。
私もうまい具合に喋れて、飲み会は成功した。
そして、今回はまさかの2次会へ。
なぜかみんなでダーツに行くことになった。
2次会でダーツ。
しかも、ダーツバーとかではなく、ボウリングやダーツやカラオケなどがそろったアミューズメント施設のダーツ。
私はダーツなど人生で1度もやったことがなく、ルールもわからなかった。
でも、みんなに教えてもらい、なんとなくで挑戦した。
ダーツの的は点数の配置が結構バラバラで、どこを狙えばいいのかよくわからない。
一応教えてもらったが、考えてもよくわからない。
だから私は勘で、テキトーに投げた。
矢を1回のターンで3本投げるのだが、3本連続でサッサッサと投げた。
すごいテンポ感で投げた。
みんなに「早い早い!」「そんなスピードで投げなくていい」「もっと狙って」などと散々ツッコまれた。
全員にツッコまれながらも、1ゲーム目でなぜか私が優勝した。
意味が分からない。
奇跡的に勝ってしまった。
何故勝ったのか分からない。
でも、よく思い返すと、思い当たる節がひとつある。
私は去年、家族旅行で金沢に行った。
金沢で、手裏剣体験を行ったのだ。
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手裏剣とダーツは、投げ方がほぼ同じだ。
あのときの手裏剣体験が、功を奏したのだ。
そのことを力説したが、全員に「絶対関係ない!!」と否定された。
全員で楽しくダーツを遊び、私は終電の時間に帰宅した。
とても疲れたけれど、充実した楽しい1日になった。
インターンに参加しに行った5日間だったが、もちろんインターンでの学びはたくさんありつつ、人間関係とか、飲み会の感じとか、インターン外の時間にもたくさん学びがあった。
ところどころ小馬鹿にしたような書き方に見えたかもしれないが、私は飲み会マスターも他のみんなも凄いと思うし、私より人間としての飲み会での立ち振る舞いは上手だと思う。
インターン先の社員からは仕事について、
学生からは職場の外での飲みの場、社交の場での振る舞いを勉強させてもらった。
2回飲みに行って、ダーツにも行って、今回こそ、本当に友達になれたような気がする。
今回のメンバーは、全国から来ている。
最終日、みんな各々の家に帰っていった。
私は「結構ライブで全国行くんだけど、みんなの住んでる近く行ったら、遊びに行っても良い?」と聞いてみた。
何人かは「いいよ!」と快諾してくれた。
初めての経験だ。
今までの人たちなら
「本当に来るのは違うだろ」みたいな顔をして断っていた。
飲み会マスターは「また女の子連れて来てくれたらいいよ!」と言っていた。
コイツは私ではなく私のフォロワーの女やギャルに興味があるだけだ。
まぁでも、今までに知り合った、中学や高校のクラスメイト、大学の知人よりも、過ごした時間こそ短いが、関係性はかなり深まった感じがする。
疑似友達から、本当の友達になれたような気がする。
いつも遠征先ではアパホテルでひとりで泊まっているけれど、
その土地の友達と楽しい夜を過ごせたりするといいな。
またみんなに、会いたいな。