初デートの約束をした女性が、待ち合わせ場所に来ませんでした。

2024年12月中旬
マッチングアプリで、とある女性とマッチングした。
私がマッチングしたらまずチェックする項目は、相手女性の「会うまでの希望」の欄。彼女の希望は「気が合えば会いたい」。
会うまでの道のりは長そうだ。
プロフィール欄を見ると、彼女はディズニーが好きらしい。
彼女の宣材写真は、ミッキーマウスとのツーショットだ。ディズニーランドで撮影したものだろう。
私はディズニー作品を1つも観たことが無い。ディズニーの話題でやり取りするのは難しい。
だが、彼女のプロフィール欄にはそれくらいしか取っ掛かりが無いので仕方ない。まずはディズニーの話をして、そこから徐々に話題を変えていけば良い。簡単な自己紹介の後は、ディズニーの話を聞くくらいしかなかった。
知ったかぶりしてもあとで困るので、ディズニーを全然知らないということを素直に伝え、魅力を聞いてみた。
彼女はキャラクターの動きの可愛さにいつも癒されているそうだ。キャラクター同士の戯れとか仕草が好きらしい。
私は最近King&Princeのファンクラブ動画を見漁って永瀬廉君たちの戯れに癒されているが、その感覚に近いのかもしれない。なにか面白いことを言っているとか面白い動きをしているというわけではないが、観ていると癒され、心が浄化され、気づけばニコニコしている。

興味ないディズニーの話だが意外と共感できた。
趣味は合っていないが、意外と彼女とは気が合う。

彼女が「紅白歌合戦でディズニー企画があるんです!めっちゃ楽しみです♪」と言うので、私は「じゃあそれ始まるとき連絡してください!観てみます!」と言ってみた。こう言っておけば、この後話題に困ったり会話のラリーがストップしても、大晦日になれば彼女が連絡をくれる。

結果としては大晦日には双方すっかりそのことを忘れていたものの、大晦日を過ぎても会話は続いた。

マッチングした女性とは普段3日しか会話が続かないが、彼女とは1か月くらい続いた。

彼女は返信のペースが遅い。私がメッセージを送った2日後くらいに返事が来る。だから、1か月会話が続いたといっても、そこまでたくさん喋ったわけではない。

でも、毎日ラリーするより、2日に1回少し喋るくらいのほうが、私には合っていた。ちょうどいいペースだ。
相手が返信ペースが遅いと、こちらもそこまで急いで返事することを意識しなくて良い。少し文言を考えられる。
彼女とやり取りするのは楽しかった。
次第に彼女のことが気になり、会って話したいと思った。

ラリーの総数は少なめとはいえ、1か月会話を続けてくれているので、彼女なら私と会ってくれるだろう。
プロフィール欄の設定は「気が合えば会いたい」だが、1か月話が続いているのだから、じゅうぶん気が合うといえるだろう。

1月半ばごろ、食事に誘うメッセージを送った。
私は2月は基本的にいつでも暇だ。大学が春休みなのだ。逆に1月は忙しい。大学の定期試験があるため、勉強を頑張らないといけない。私は彼女に、2月の空いている日を聞いた。

「スケジュール確認次第連絡する形でも良いですか?」と返され、私は了承した。

その後、1週間、メッセージが途絶えた。

私は催促の連絡をしようかとも思ったが、もうしばらく待つことにした。

もちろん、待ちながらも他の女性とラリーをするし、どんどん新しい女性を探す。しかし、みんな2日か3日で返事が来なくなる。

やはり、私は彼女と会いたい。
せっかく1か月続いたのに、ここまでか。
会うにはまだ早かったのか。

そう思った次の日、
「2月の予定がまだ出ず、何とも言えなくて。もう少し待ってもらっても良いですか?」と連絡が。

よかった。まだ予定が出ていなかっただけで、私に会いたくないわけではなかったのだ。彼女は大学生ではなく、高卒で就職している。社会人なので、忙しいだろうし、次の月の仕事のスケジュールがなかなか決まらないこともあるのだろう。

私は「全然待ちますよ!なんか予定全然出なくてソワソワすること、ありますよね(笑)」と送信。

それから数日後、彼女からついに日程の提案が来た。
「2月前半だと○日と×日が空いてるよ!」という情報が来た。
特に時間帯などの指定は無かった。

嬉しいことに、彼女からのメッセージは敬語からタメ口に変わった。
最近は会える日程を調整するラリーをしただけだし、ここ数日で距離が縮まったという感じは無い。でも、会う日を調整しているなかでタメ口になったということは、彼女の中では、会おうと決めた人とはタメ口にするルールなのかもしれない。
だとしたら、私は彼女に少しお近づきになれた。
会えるまで、もう少しだ。

私は「じゃあ、○日にしよう!時間帯いつ頃が良いとか、何駅のあたりが良いとかある?」と聞いた。
彼女は名古屋の人らしいが、名古屋といえども、広い。名古屋駅以外にも栄えている駅はいくつかある。なるべく彼女の移動の負担が無いように、電車で彼女の最寄駅くらいまでは行ってあげたい。

彼女からの返事が来た。

書かれていたのは「うんうん」という4文字だった。

意味不明だった。タメ口になったのは良いが、距離が近づいたというか、近づきすぎてテキトーになったというか、なんだかよくわからない。
時間帯や場所はいつでもどこでもいいのだろうか。

これは勝手な予想だが、彼女は会話の項目の1個目にしか返せないのかもしれない。
私は「じゃあ、○日にしよう!時間帯いつ頃が良いとか、何駅のあたりが良いとかある?」と
①会う日は○日にするということ
②時間帯の質問
③場所の質問
の3つを一気に送ってしまっていた。3つの項目を処理できないのかもしれない。彼女は②③を無視して、①に対して「うんうん」と返事したのかもしれない。

時間帯と場所について、順番にひとつずつ決めていこう。

とりあえず、「○日はお昼ごろ会おうか!いっしょにランチしよう」と送信。時間帯を昼に設定した。2月なので、夜は寒い。1日空いているのなら、用事は絶対に昼のほうが良いだろう。

「いいよ!」と返ってきた。よかった。
やはり、会話1ラリーにつき1トピックのほうが良いのだ。

私は次に「ありがとう!名古屋駅集合で良い?」と尋ねた。

彼女は「栄駅の近くで用事あるから、栄集合が良いなって思ってますが…」と、別の駅を言ってきた。
※名古屋には、栄(さかえ)という繁華街がある。

何故私が何駅のあたりが良いか尋ねたときにそれを言うことができなかったのだろうか。やはり1回のラリーで1つの情報しか処理できないのか?

私は別の可能性として、
彼女は「うんうん」しか言わないし、男に全部決めてほしいのかな、何でも聞かれるよりバシッと決めてもらいたいのかなと思った。
それで今回「何駅が良い?」という言い方をやめて「名古屋駅集合で良い?」という聞き方にしてみたのだ。
「栄集合が良いなって思ってますが…」とはどういうつもりだろうか。私が非常識なことを言ったみたいな感じになっている。

不信感が募った。彼女と会って、まともな会話ができるのだろうか。付き合っていけるのだろうか。次回以降待ち合わせするときも場所や時間を決めるのに難航しそうだ。

その後、会話を続けていると、待ち合わせをした日は、彼女が栄のどこかのショッピングモールで開催されるアイドルだかアーティストだかのミニライブと特典会に行く予定だとわかった。私に会うのは、栄でアイドルに会うついでなのだ。

まぁ仕方ない。2つの予定を1日で済ませられたほうが良いに決まっている。

アイドルのライブは13時スタートで、その15分前くらいには現場にいなければいけないらしい。整理番号順に並んだりするのだろう。
私達は11時に会う約束をした。11時に栄駅で合流し、喫茶店に向かう。(ランチをしようという誘いに「うんうん」と言っていた彼女だったが、後日「時間あんまり取れなそうだし、喫茶店で話す程度が良い」と言われてランチをやめて喫茶店に変更したのだ。)
喫茶店で小一時間喋り、解散。彼女はアイドルに会いに行く。
喫茶店は予約制ではないので、あらかじめ行く店を決めることはできない。当日行ったら席が空いていない可能性もある。
栄駅は文字通りとても栄えていて、とある出口のあたりには、歩いて1分以内に喫茶店が4件くらいある。
私たちは駅の出口で合流し、そのとき空いている喫茶店を選んで入るということにした。

そして、ついに迎えた、彼女と会える当日。

10時50分、待ち合わせ場所に到着。
彼女に「○○出口の××の前に立ってるからね~。」と連絡。
一応着ている服装の写真も送信。アプリの宣材写真には自分の顔を載せているし、宣材写真は何枚もある。彼女がこちらの姿を見れば「コイツがマッチングした奴だな」とすぐにわかる。
彼女は宣材写真の顔も微妙にボカしているし、1枚しかない。雰囲気はなんとなくわかるものの、これだけでは駅で歩いてきても彼女かどうかは分からないと思う。彼女のほうから私に話しかけてもらおう。
服装の写真を撮ってもらうのも手間だ。女性はたかが服装の写真1枚撮るにも変にこだわって時間がかかってしまうかもしれないし。


待ち合わせ時間の11時になった。まだ、彼女の姿はない。
「少し遅れる」とメッセージが入った。
文言は本当にこのままで、このあとに汗の絵文字がついていたが、具体的に何分遅れるのか、どういう事情で遅れるのか等は書いていない。
できれば何分遅れるかくらいは聞きたかったが、
私は「慌てないで大丈夫よ」と、気遣いのメッセージを送信。
事故などに気をつけておいでね、という意味で 文の最後に「気をつけてね」と書いて送信しかけたが、 遅刻しないように次からは気をつけろ、という意味に取られる可能性を考え削除した。
遅刻したときに焦らせてくる人間だと思われたくない。

私は駅の出口で彼女を待った。

寒い。

店の中で待ち合わせにしておけばよかった。

待ち合わせ時刻から25分が経過した。

暇すぎて私はTwitterのスペース(音声生配信。Twitter内のラジオ)で待ち合わせ場所から現状をフォロワーに報告し、相談するなどしていた。

寒すぎるので、どこかの店に入ってしまおうと思った。

私は「空いてる喫茶店に先に入っておいて良い?店の場所言うから、そこに来てくれる?」と言った。

彼女からの返事はなかった。

寒いので、私は店に入った。

オレンジジュースを頼み、着席。
先週私のnote読者の女性と会った時に「デートのときは、女性をソファー側に座らせろ」と言われたことを思い出し、一応ソファー側の席を空けた。

これは余談だが、先週会った私のnote読者は、私を見て
「会ってみると、結構普通の人ですね!なんか、もっとカマキリみたいな人かと思ってました~」と言っていて、ここ10年で聞いた全発言の中でいちばん意味が分からなかった。

そして、待ち合わせ時刻から40分が経過。電話をしているふりをしながら小声で生配信で皆さんに現状を報告しつつ、彼女の到着を待った。
待ちくたびれた私は「何時に着きそうかの目途だけでも教えて!」と彼女に連絡。

5分ほどして「12時には着きそう」と返信がきた。
良かった。正直、もう会えないかと思った。
1時間遅刻だが、来てくれるみたいだ。
私は今自分がいる喫茶店の場所、店名を伝えた。

そして12時頃、再び彼女から連絡が来た。

「店の中にいるんですか?」

当たり前だ。今までの私が送ったメッセージを見ていないのか?
寒いから店に入って良いかと言ったのを見ていないのか?

私が店の中にいることを伝えると、
「外出られます?今○○(ショッピングモールの名前)にいるんですけど」と返信が。

訳が分からない。いつの間に駅について、いつの間にショッピングモールに移動したのだろうか。私は駅の出口のすぐ近くの喫茶店に居るのだから、絶対私の居る店を素通りしてショッピングモールに行っている。

私は戸惑いながら、とりあえず店を出なければならないと思いオレンジジュースを一気に飲み干した。
すると、再び連絡が。

「イベント始まっちゃうので、今難しいです」

意味が分からない。まだ12時。イベントまで1時間近くあるはずだ。

彼女は13時のイベントだと言っていた。なぜもう会えないのだろうか。

イベントの詳細は聞いていないが、彼女の今居るというショッピングモールが、おそらくイベント会場であろう。
彼女はアイドルに心奪われ、アイドルに会うことで頭がいっぱいで、もう私のことなどどうでもよくなっているのだろうか。

Twitter生配信で引き続き現状をレポートしていると、フォロワーからはDMで「そいつは変な奴だからもう帰ったほうが良い」などと言われ始めた。

彼女に「今日もう会えない?」と連絡すると
「カフェ行けるタイミングがあるかなってところ」と返ってきた。

彼女の参加するイベントは確か2回公演だと言っていた。1回目と2回目の間に会えるタイミングがあるだろう。イベント終わりに会場で待ち伏せしておけば会えるはずだ。

私はショッピングモールに向かいながら、
「栄の○○っていうショッピングモールで今日行われるアイドルのイベント、調べて詳細DMください」と生配信を聞いているフォロワーに調査を依頼。歩いたり、彼女とメッセージをしたり、ショッピングモールの場所を探したり忙しいので、イベントの詳細の調査はフォロワーに頼った。
一応「ショッピングモール今から来れる人、向かってください」とフォロワーに要請。
マッチングした彼女とは会えないかもしれない。せっかく栄まで電車に乗ってきたのだから誰かと会いたい。
栄なら都会だし、フォロワーが来てくれるかもしれない。生配信のラジオは100人ほどが聴いていた。ひとりくらい近くにいるかもしれない。このままひとりで帰るのは嫌だ。

2人の心優しきフォロワーがアイドルのライブ情報を教えてくれて、私はイベント会場を突き止めた。
「今から栄向かいます!」という頼もしいフォロワーはいなかった。残念だが、仕方ない。

私はひとりで会場に着いた。

特設ステージがあったが、客席には誰もいない。入場の受付は始まっていないようだ。
受付らしき場所のあたりに、ファンであろう人達が20人くらいいる。

全然イベントが始まる気配はない。
「イベント始まっちゃうので、今難しいです」という連絡はいったい何だったんだ。全然余裕で私と会っている時間があるじゃないか。

ファンらしき人は、5人組、4人組、3人組などグループでかたまって喋っている。ひとりでマッチングした男を待っているような感じのする人はいない。
私は先ほど述べたようにアプリ内では彼女の写真を1枚しか見られず、しかもその顔はぼかされていてよくわからない。

どの人が彼女か分からない。

私は「ショッピングモール着いたよ!」「ステージの所いるよ!」「受付のところいるよ!話しかけてきて!」などとメッセージを送る。

彼女も「エスカレーターの所います」「1階にいます」などと返信はしてくれるが、どこにいるんだか全然よくわからない。本当にいるのだろうか。

彼女は返信自体はくれるし、メッセージは読んでいる。
ということは、会場に居る20人の女性全員のスマホ画面を確認し、マッチングアプリを開いている女性がいれば、それが私の会いたい彼女だ。
私はたくさんメッセージを送り、みんなのスマホ画面をこっそり見ながら、彼女が読んでくれるのを待った。

私の顔も服装も彼女は知っているわけだし、私を見つけたら話しかけて良いはずだ。だが、どうしても人違いをする可能性が怖くて話しかけられないなど、何か事情があるかもしれない。知らない人に話しかけることがどうしてもできない人だっている。

高校で文化祭の準備をしていて同級生の女子と2人で買い出しを頼まれたとき、目当ての商品の場所が分からず、私が女子に「あの店員にちょっと聞いて」と言うと「嫌だよ!しゅんきが聞いてよ!」とめちゃくちゃ拒絶されたことがある。その女子は知らない店員に話しかけることが苦手らしい。私はこのとき、他人に話しかけるのが本当にできない人も一定数居るんだな、と学んだ。

今回マッチングした彼女も、もしかしたら自分から話しかけるのが苦手なのかもしれない。これだけ私は分かりやすいのに話しかけてこないということは、そういうことだろう。
だから私は、なんとか彼女を特定してこちらから話しかけてあげたかった。

ショッピングモールは吹き抜けになっているので、私は2階に移動した。
2階から下を見て、女子のスマホを見る。

遠いので、画面の詳細は見えない。ちょうどいい。
あまり近くから他人のスマホをガン見しては、個人情報というか、プライバシーの侵害になってしまう。

2階からなら、「LINEを見てるな」「Twitterしてるかな」「コイツはインスタ見てるな」などと、なんとなくのアプリくらいはわかる。

メッセージを送りながら、マッチングアプリの画面を開いている人を探した。

しかし、見つからなかった。

そうこうしているうちに、イベントの集合時間になってしまった。
イベントで整列してしまえば私の入る余地はなく、話しかけることはできなくなるので私は一時退散、近くの別のショッピングモールで昼食を食べた。
栄には私の大好きな洋食屋さんがある。
洋食屋は混んでいた。
受付で名前を書き、店の外で待機。

待機しながら、私は再びTwitterで生配信を開始。
今日の流れを改めて初めから一通り報告した。

喋っているうちに私は
「やっぱりこんな仕打ちはおかしい」
「もう彼女に会いたくない」と思った。

フォロワーにも「もうブロックして良い」などと背中を押され、
私は彼女をブロックすることにした。


マッチングアプリを始めて、早4か月。
彼女は初めて私と1か月間ラリーを続けてくれた。
ディズニーを1作品も観ていない私に魅力を教えてくれた。
とあるダンスボーカルグループの曲の良さを熱弁してくれた。
どうでもいい世間話もしてくれた。
初めて敬語からタメ口に移行してくれた。
初めて待ち合わせをしてくれた。

1度で良いから、会って話してみたかった。

でも、今日の彼女は、いつもの彼女ではなかった。

今日というか、よく考えると待ち合わせの日程を決めたくらいから、少しおかしかった。

本当は、私と会いたくなかったのだろうか。

では、なぜタメ口に移行したのだろうか。

なぜ会うことを了承したのだろうか。

なぜ一応連絡を途絶えさせることなく今日も会話を続けたのだろうか。

なぜ一応居場所らしきところは伝えたのだろうか。

最後まで、私は彼女のことがよくわからなかった。

会いたかったけど、会いたくなくなった。

さようなら。

1か月間、いや、会うことを決めてから日程調整だけしていたような期間も含めると約2か月間。

ちょうどいい温度感で、2日か3日に1回のペースで進んでいく、ゆっくりなやり取り。楽しかった。

会えずに終わってしまったけれど、楽しい2か月間を、ありがとう。
私は次の恋に進みます。


今度こそ、会えるといいな。