大学で研究室を決めた。チームで動くのは難しい。

私は大学3年生だ。

大学では、「研究室配属」なるものがあり、
3年生の後半に、1つの研究室に配属される。
研究室では、
先生ひとりと大学院生、大学3・4年生合わせて15人程度がいて、
研究をしたり、勉強会をしたりする。

基本的にひとりの先生がひとつの研究室を持っている。

今まで授業を受けてきた感じとか、
先生に質問に行ったりして喋った感じで
「この先生、俺と相性良さそうだな~~。」
「俺、この先生についていきたい!!!」という人を選んで
その人の研究室に入る。

一応、先生の研究内容とかも聞く機会があるのだが、
大学院ならまだしも学部レベルでは大した研究はできないので、
研究内容よりも先生で選ぶように言われている。


うちの学部には、20人以上先生がいる。
そのなかから、ひとり決めなければならない。
最終的にひとりの先生の研究室に行くことにはなるが、
候補は数人用意しておかなければならない。

研究室を決める権利は、大学でのこれまでの授業の成績順。
私の成績は、中の上くらい。
真ん中より少し上くらいだ。

自分より前に数十人が選択してしまうので、
いくつかの研究室は定員に達する。

自分の行きたい研究室が埋まっていることも考えられるので、
いくつか候補を考えておかなければならないのだ。

研究室の決め方

どのように先生を選ぶか、考えるのは難しかった。

とりあえず、質問に対してちゃんと答えてくれる印象がある先生を候補に選んだ。

どの先生も、仕事なので学生からの質問には当然答えてくれる。
でも、よく聞くとちゃんと答えてくれていない人もいたりする。
私の質問に対して、「○○が××だからこうなるんだよ」と答えてくれる。
それに対し私が「○○が××というのはどういうことですか?」と再質問すると、
「あの~、○○が、ね?××ということだから、こういう風になるのね。」といった具合に、ほぼ全く同じ文言を言うだけの先生がいる。
何度聴いても、ほぼ同じことを言うだけ。

私の言う「質問に対してちゃんと答えてくれる印象がある先生」は、
私が「○○が××というのはどういうことですか?」と再質問すると
「○○っていうことは、△△が◇◇ってわかるじゃん?ってことは、それが★★になるから、××なんだよ~」
と、より過程を詳細に述べてくれるとか、別の言葉で言い換えてくれる先生だ。

これまでの授業や実験で先生に質問する中で、このようにちゃんと答えてくれた先生数人の研究室を候補にした。

もちろん、きちんと答えてくれなかったように感じた先生も、
単に私の前提知識や理解が不足しているとか、
質問の内容が悪いとか、そういうこともあるかもしれない。
だが、ひとつの判断材料として質問への受け答えの経験を振り返るのはいいだろう。
(別に書かなくても当然わかっていることであるし、長くなるだけなのでこんなことはいちいち書かなくていいのだが、書かないと「いや!君の頭が悪いだけで先生はきちんと答えてくれているはずだ!先生のせいにするな!」などと言い出してしまう人がきっと出てくる。)


しかし、全ての先生に質問したことがあるわけではない。
1回も1対1で対話したことのない先生もいる。

そのような先生はどうしようか。

私はどんな先生に好感を持っているだろうか。


授業のときに、立ってこちらの様子を見て授業してくれる先生が好きだ。

授業は教室前方のスクリーンにパワーポイントの画面を映して、プレゼン形式で行われることが多い。

先生によっては、
ずっと座ってパソコンの画面を見ながら、マウスをポインター代わりにしてパソコンを操作しながら講義する人もいる。

レーザーポインター兼スライド送りに使える棒を持って、
立って前を歩いて学生の顔を見ながら授業してくれる先生もいる。

私は後者のほうが圧倒的に好きだ。

知人に聞くと「別にどっちでも良くね?」と言われたが、
私は立って学生の様子を見ながら講義してほしいなと思う。

こちらの様子をみながら進めてくれる先生の授業は、
私も頷いたり首を傾げたり積極的にリアクションするようにしている。

時々目を合わせながら、反応をみてくれていると、
わざわざ大学に来て教室で講義を受けている意味があるなと思う。

先生がパソコンを見て一方的に話しているだけだと、
コロナ禍のオンライン授業と大して変わらないように思う。

大学のコンピュータ室で講義のとき、
とある先生は、コンピュータ室備え付けのパソコンを立って操作しながら授業してくれた。

先生も座って授業するように、
先生用の卓上マイクスタンドも用意されていたのだが、
それを使わず、立ってピンマイクをつけて授業していて、
私はそれを見たときに、とてもいい先生だなと思った。

確かに、タクシーなんかでも
車外で立ってお客さんを待っている運転手を見ると
車内で座って待っている人よりも良い人そうだなと思う。

座るか立つか選べるとき、立っている人のほうが
なんかいい人そうに見えるものだ。

だから私はバイトのとき、
塾で生徒を待つときは立って待つようにしている。

そんなこんなで、
立って授業してくれる先生たちの研究室も候補にした。

そこから、授業の分かりやすさや
先生オリジナルの授業スライドのつくりなども考慮し、
先生達を絞っていき、
最終的に候補を4人に決めた。

研究室配属の日、私が研究室を選ぶ番になったとき、
候補になっている先生が2人残っていたので、
そこから1人選んだ。

希望する先生を選べて良かった。

なんとか中の上の成績を取っていて良かった。

研究室メンバーとの顔合わせ

私の選んだ研究室に配属された3年生は、6人。

4年生と大学院生が合わせて8人いて、
学生は合計14人。

先日、14人+先生で初顔合わせがあった。

研究室配属が決まったら、
先生に自分の取っている授業の時間割を送る。
そうすると、先生が、誰も授業が無い時間帯を探して
勉強会などを開いてくれるのだ。

先生からメールが来た。

「明後日の17時、学部生と院生で初顔合わせを行います。○○教室に来てください。もし都合が悪い場合は早めに連絡すること。」


明後日の予定を確認すると、バイトが入っている。塾だ。
以前noteに書いた、無料塾。

しかも、ただ生徒に勉強を教える日ではなく、
その日はイベントが開催される日だ。

生徒同士、そしてスタッフも含め交流を深めるため、
みんなでカードゲームをしたりクイズ大会をしたりするイベントが
年に数回開催される。
私は毎回、司会進行を務めている。
明後日のイベントも、司会をすることになっている。
司会はひとりだけ。

結構重要な任務だ。

しかし、バイトより学業が当然優先だ。
今後1年半お世話になる研究室の集まりの初回。

初回から休むなど、ありえない。

入学当初から、先生たちに
「アルバイトをしすぎるな」「バイトは勉強時間を減らす言い訳には全くならない」「バイトで講義を欠席する残念な学生がいる。そうならないように」などと散々言われてきた。

学生を雇う側も、当然学生は学業を優先するということは分かったうえで採用しているはずである。

私はすぐに塾の本部に連絡を入れ
「大変申し訳ないのですが、急遽大学の予定が入ってしまいまして…」と事情を説明し、本部の人にイベントの司会を代わってもらえることになった。


そして2日後。

初めて会って、これから1年半いっしょに勉強する仲間と軽くあいさつを交わす。

人数を数えると、ひとり足りない。

時間になっても、その子は現れない。

電話してみると、「忘れてた」とのこと。

研究室の集まりは授業終わりに開かれたのだが、
授業が終わったらそのまま帰路に着いてしまったらしい。

その子は20分ほど遅れてやって来た。

初回から忘れて遅刻とは、考えられない。


初回の集まりは、全員の自己紹介からスタート。

名前を言って、趣味を述べる程度。
そこから先生や他の学生から質問する。

みんな、自己紹介が短いし、質問も全然しない。
別に、時間が押しているとかそういうわけでもないのに。
先生は「何かないですか?何かつついてあげてください」と言う。
私だけほぼ全員に質問した。
私ばかり質問してもなぁ、という気持ちはあるので
途中から一応他の人が質問するのを待った。

でも、誰も何も聞かないので私ばかり質問した。


私だけ自己紹介も少し長めにした。
「ブログが炎上したことがあります。仲良くなった人には何で炎上したか打ち明けるので、是非気になる人は私と積極的に喋ってください」ということも言った。

研究室に行く前、知人と
「俺、今から研究室の集まりがあって、まずは自己紹介とかするんだよね~」などと話しているとき、
「自己紹介でブログが炎上した話しようかな。ブログが一番俺の人柄分かってもらえるし」と言ったら
知人3人に「絶対に黙っておいたほうが良い。言うのは仲良くなってからのほうがいい」と止められたので、
炎上の内容は言わずにとどめた。

そんなこんなで、自己紹介をして、
先輩方の研究がどんな感じなのか聞いて、
研究の進捗報告会を見学して初回は終了。
「次回については、またメールで日程連絡するので」とのことだった。


2度目の集まり

先生から、2度目の集まりの日程の連絡がきた。
「3日後、16時30分に○○教室に来てください。」


その数時間後、
先生から再びメールが来た。
「都合が悪い方がいたので、集まりは朝10時~に変更します。」

私は、都合が悪い理由が気になった。

大学生に、研究室の集まりよりも優先すべき用事などあるだろうか。

葬式とか?
そういうのは仕方ないと思う。

就活していて、面接を受ける予定があるとか?

面接の日程を急に変えるとなると、確かに印象が悪いだろうし、
研究室の予定をずらしたくなるのも分かる。

「まさか、バイト優先なんてことないよな?」と少し心配した。


2度目の集まりの日。
ひとりの子が、来てすぐ「都合悪いって言ったの俺」と正直に言ってくれたので
「なんの予定あったの?」と聞いてみた。

すると、
美容院の予約を入れていた、とのこと。

信じられない。
バイトで休むより酷い。

私は言った。「えぇ?美容院?そんなのいつでも行けるでしょうよ。そんなことでいちいちスケジュール変えてたら、みんな全然集まれないよ。研究も勉強会も進まないじゃん。ひとりならいいけど、研究室の皆で動くんだから、よっぽどのことが無い限りはこっちを優先してくれないと…」

初回の集まりで実はイベントの司会をする予定だったこと、
謝って本部の人に代わってもらったことなども話した。

「だったらバイト行くけどねぇ」
「うん、俺もバイト行くと思う」
と、みんな私と同じ立場だったら司会のほうを優先するらしい。

「いやいや!バイト優先なんてありえないって、さんざん先生たちに言われてきたじゃん!」などと喋っていると、

10時になり、予定の時間になった。

しかし、初回に遅刻してきたあの子の姿が無い。

連絡すると、
「忘れてた。まだ家に居るから間に合わない」とのこと。

1回目忘れて遅刻して、
2回目も忘れることがあるだろうか。


どうしたらいいのだろう。

私は集まりのたびに彼にモーニングコールでもしたほうがいいだろうか。



2回目の集まりでは、
今後、この研究室のOBの方を呼んで
その方の就職先の会社説明や就活の話などを聞かせてもらうという会をするとのことで、その日程を調整した。

先生が候補日を挙げると
「あ、この日はちょっと、友達と遊ぶ約束があって…」と言い出した奴がいた。
信じられない。
学外から、働いている方を呼ぶわけだし、候補日や時間はかなり限られている。
そして、そもそも先生も結構忙しい。
「え?だから、研究室はグループで動くわけで、そんな自分勝手な用事でこの日はダメとか言ってたら、全然集まれないじゃん。何にもできないし、何にも進まないって、さっき言ったじゃん!あり得ないですよね?先生」と私が言うと

先生は「まぁ、普通は社会では考えられない…」と言いつつ
その日を候補日から除外した。

優しい先生だ。

日程の決定ではなく候補日の段階なので、許してくださった。

これから就職して社会に出れば、
そんな勝手なことで休むことは許されない。

法で休む権利は認められてはいるものの、
「休む権利は認められてますから!」などと言って休んで会社に迷惑をかければ、
他の社員から嫌われ、当然それなりの仕打ちが待っているだろう。

私の好きな先生が
「人間はひとりで生きていない。”わたし”というのは存在しない。”わたし”は常に”わたしたち”である」ということを言っていたのがずっと印象に残っている。
人は常に集団で、まわりの支えがあって成り立っているのだ。
自分勝手なことをしていてはいけない。
勝手に会社を休んで迷惑をかけてはいけない。

いまのうちから、
急用で友達との遊びを断ったり、その他予定をリスケジューリングする練習をしておいたほうがいい。

遊びをキャンセルしなければならないつらさにも慣れたほうが良い。
就職してしんどい思いをして、
さらに休みが潰れるしんどさも初体験だと、
心が持たないかもしれない。

鬱病になったりしないで済むように、
今のうちからなるべくつらさに慣れておかなければならない。
少なくとも、私はたくさんのつらいことを一気に受け入れられる心は持っていないと自覚しているので、
少しずつつらさに慣れておきたい。


話は変わるが、
大学1年生の春、1日だけ土曜日に授業というか行事ごとがあり、
グループで発表をしなければならなかった。
入学が決まってすぐ告知されたが、
私はその時点で、
その日は東京に行く予定があった。
東京でバカリズムの単独ライブを観る予定だった。
でも、当然大学のほうが優先なので、チケットはリセールに出した。
(リセールというのは、チケットを他人に定価で販売できる制度。チケットを販売しているチケットぴあのサービスなので、転売禁止のチケットを買ってにヤフオクに出したとかではなく、きちんと正式なサービスを利用している。バカリズムやライブ主催者に迷惑がかかるわけではない。)
バカリズムのライブは人気で、今後チケットが取れるかどうかも分からない。
しかも今回、取れた座席は前から2列目だった。
とても楽しみにしてたライブだったが、仕方がない。
今回は行事ごとで、チーム単位で準備して発表を行うため、
チームのみんなに迷惑がかかる。
普通に先生の話を聞くだけの授業を1回欠席するのとは、訳が違う。
だから、「今頃バカリズムはライブやってるな~…」と思いながら、発表会に参加した。


というように、
私は東京に行く予定さえキャンセルしている。

友達と遊ぶから、美容院に行くからなどといって
チームのみんなに迷惑をかけることは、認められない。
と私は思う。

でも、みんな、
「司会のバイト行ってもよかったのに」
「なんなら別に研究室は休んでもいいんじゃない?」
くらいの感じだ。

そして、先生もやさしくて、
美容院で休んだ子にも特に指導しなかった。

先生が認めてくれているし、他の学生も全員
休むことやスケジュールの変更に寛大なので、
私はそこに合わせようと思う。
そういう人達の空間なので。

ただ、他人の都合での予定変更はまぁ大目に見るが、
私は研究室の集まりを優先しようと思う。
そこの意思は変わらない。


そして、そんなことを思いながらOBの方の会社説明会の候補日を決めた後は、
今後の3年生での勉強会をどうしようかという会議をした。

研究室の集まりをすっかり忘れていた1人は来ないまま、内容を決めた。
輪講に決定。
輪講というのは、本を1冊決めて、章や節ごとに担当者を決めて
学生が学生に対して授業のようなことをするというもの。

これから1週間のうちに
何の本にするか、1人1冊選んで
研究室のグループチャットに投稿することが宿題となった。

私は、集まりを忘れていた子にその旨を連絡した。

「何にも参加してないし、コイツにたくさん本挙げさせよう」ということになり、
1人1冊でいいのだが、そいつには「1人6冊挙げるように」と連絡した。

そして、期限も本当は1週間後なのだが、「期限は3日後」と伝えた。
(1週間後にどうせ「忘れてた」と言って何も本を探さないだろうから、あらかじめ期限を短めに伝えておくという対策だ。)



その集まりから、今日で3日経った。

あの子にとっては、今日が輪講の本を選ぶ期限のはずだが、
今のところ彼からは何の投稿もない。


この先、私たちの研究室はどうなるのだろうか。

ちゃんとみんなで研究できるのだろうか。

卒業できるのだろうか。

これからも社会に出れば、
やる気のない人も自分勝手に休みを取る人も含め、
いろんな人が居るチームで動くことになるだろう。

その良い練習だ。

チームのみんなが良い思いをできるように、
輪を乱すようなことのないように、
頑張っていきたい。

”わたし”は常に”わたしたち”だから。

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しゅんき
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