終わらないえんそく〜つれづれメモ1〜

 えんそく、というバンドについて書こうと思う。
 私がえんそくというバンドを知ったのは2021/04/10、CRUSH OF MODEの配信ライヴであった。いや、キャリアが長い彼らのバンド名自体は知っていたし、いつだったか仙台貨物&Jin-machineとのNHKでの共演をVHSに録画はしていた。ただ、その時は「This is a pen.」に若干憤りを感じて、そのまま深く追求することなく蓋をしたような気がする。
 そういうわけで、私がきちんと「えんそく」を知った、のはやはり21年の春であったと言えるだろう。

 その私がえんそくを発見したライヴは、とんでもないものであった。なぜなら、あまりにキャッチーという衣に包まれたマニアックだったのだ。コロッケか。

 まず驚かされたのは「大銀河戦艦ナガト」である。もうこれはタイトルからしてふざけているというか、「宇宙戦艦ヤマト」のパクリおっとオマージュであり、それだけでも呆気に取られてしまうのにかなり壮大なロック・オペラなのである。
 あと「ヘドバンエンジン点火!」って……筋少がヘドバンで発電するならえんそくはヘドバンでエンジンを動かすらしい。
 もうひとつ突っ込みたいのが、この曲を聴いてメンバーは確実に私と同年代だと確信したのだが(そしてそれは裏付けされた)、一部コード進行がマクロスFである。宇宙に宇宙を混ぜるな!!
 またこの曲はメンバー総出でコーラスしており、そのコーラスがきちんと「大銀河戦艦ナガト」という物語の一部として機能している。こういうタイプのコーラスは初めて聴いたかもしれない……。

 しかもこのロック・オペラを行ったあと、演奏されたのは「狂い時計のネジ巻きマキナ」だ。この楽曲、一切予習のない状態でみたものだから衝撃が大きかった。
 なんと、全員一列になって踊る。
 ドラムも前に出てくる。
 楽器は置く。
 可愛らしい、メルヘンな楽曲に合わせて、おそらくいい年齢であろうおじさんたちがお尻をふりふり踊る。
 びっくりしないわけがない。

 ガッツリと心を掴まれたのは、筋肉少女帯のカバーである「僕の宗教へようこそ〜Welcome to my religion〜」である。筆者は大槻ケンヂを敬愛しており、筋少のカバーをあまねくすべてのバンドマンが行えばいいと思っているくらい偏愛しているのだが、この「僕の宗教へようこそ〜Welcome to my religion〜」には心底驚かされた。
 この楽曲、本来ならばヤケクソ気味に歌唱される本編と少年教祖の語る口上の対比を楽しむものであり、それ以上の楽しさというものはあまりない、筋少内でもあまり目立たない楽曲である(タイトルのインパクトはすごいが)。しかしえんそくのカバーは、「そこまでアレンジして大丈夫なんか!?」という演奏全編を通してのリフのアレンジがまずあり、ボーカル・ぶうの口上のあとにはメンバー全員が楽器を置き、ラップをかますという構図になっている。さらにV系ではおなじみの「フリ」で宗教感をより出し、花道の先の小ステージでぐるぐるとメンバーが回るという、「V系にしか不可能な(そして演奏することに拘らない「バンド」にしか不可能な)カバー」となっていたのだった。
 カバーがオリジナルを超えるのを久しぶりに観た。

 さて、この日のセットリストは以下のようになっている。

アイツが町に帰ってきた
神様は盲点色
ーMCー
大銀河戦艦ナガト
狂い時計のネジ巻きマキナ
ーMCー
This is a pen.
僕の宗教へようこそ(筋少カバー)
最後のえんそく

 今思うと、「初めてえんそくというインパクトを受ける人間のためのセトリ」としては百点満点のセトリなのではないだろうか。
 そして見事に、筆者はえんそく沼にずぶずぶと片足を突っ込んでしまったのだった。

 この日のダイジェストはYouTubeのARTPOPのチャンネルで1年間限定で公開されており、今ならギリギリまだ観られるので、是非目撃して欲しい。

開始二演者目、5:00〜がえんそくの出番である。

 こうしてえんそくという新たな沼にわけいった筆者は、しれば知るほど「私がハマらないわけがなかった」という思いに駆られることになる。99年に中二病まっさかりでPIERROTと大槻ケンヂで青春をやり過ごした人間が、えんそくを回避できるわけがなかったのである。

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