聞きたいことはなんですか?【1話】
鈴木 「佐藤くん。」
佐藤 「鈴木さん。」
鈴木 「帰り遅くない?もう下校時間だよ。」
佐藤 「ここの方が集中できるんだよ。勉強とか読書とか。というか、遅いのはお前もだろ。」
鈴木 「私は部活だもん。」
佐藤 「茶菓子食ってるだけだろ。」
鈴木 「茶菓子ばっか食べてないから!ちゃんと漫画描いてるもん。」
佐藤 「本当か?怪しいもんだな。というか、美術部だってあるのにわざわざ部活分ける必要あるか?」
鈴木 「美術と漫画じゃ作ってるもの全然違うじゃん。」
佐藤 「絵を描いてるってとこは同じだろ。」
鈴木 「同じだけど違うの。石膏描いたり彫刻掘ったりなんて漫画家はしないでしょ。」
佐藤 「あー、そっか。そんなもんか。」
鈴木 「ねぇ、佐藤くん。ちょっと聞いていい?」
佐藤 「なんだよ、改まって。」
鈴木 「佐藤くんが私のこと好きってほんと?」
佐藤 「な、何だよ、いきなり。」
鈴木 「風の噂で聞いて。なんか気になっちゃって。」
佐藤 「いや、その…。」
鈴木 「ほら、分からないことがあれば聞きなさいって先生がいつも言ってるじゃん。だから、今日のうちに聞いちゃおうかなって思ってさ。」
佐藤 「いやいやいや、聞いちゃおうかなって。それは授業の話だろ。」
鈴木 「授業も人生も同じようなもんでしょ。」
佐藤 「人生って。どんだけ広いんだよ。そんな間口広げたらなんだって当てはまっちゃうじゃん。」
鈴木 「うん。だから聞いてるの。大事なことはすぐに聞く。お、今の名言じゃない?」
佐藤 「どこがだよ。ありきたりだわ。お前なぁ。そんなデリケートな問題、ほいほい聞くなって。相手にとって黙っておきたい秘密かもしれないだろ。」
鈴木 「でも私の問題でもあるよ。」
佐藤 「じゃあ、鈴木さんはもし俺から“好きです”って言われたら付き合ってやってもいいと思ってるんだな?」
鈴木 「あっ。」
佐藤 「あ?」
鈴木 「それは盲点だった。」
佐藤 「はぁ…。」
鈴木 「考えてくるから、また日を改めてもいい?」
佐藤 「えっ!?」
鈴木 「じゃ、また明日。」
佐藤 「いや、ちょっと待てよ。」
鈴木 「無理。寄りたいとこあるから。じゃね。」
佐藤 「あ、ありえないだろ。あいつ。」