聞きたいことはなんですか?【2話】
鈴木 「佐藤くん。」
佐藤 「鈴木さん。」
鈴木 「今日も帰り遅いんだね。」
佐藤 「宿題やっちまいたかったしな。」
鈴木 「家でやればいいのに。」
佐藤 「家だと集中できないってこの前も言ったろ。」
鈴木 「あー、そうだっけ。忘れてた。」
佐藤 「まぁ、そんなもんか。」
鈴木 「佐藤くん。ちょっと教えてもらいたいことがあるの。」
佐藤 「今度はなんだよ。」
鈴木 「安心して。佐藤くんの話じゃないから。」
佐藤 「そうかよ。まぁ、別にいいけどさ。」
鈴木 「好きって何?」
佐藤 「えっと…それはどういう…。」
鈴木 「だから、恋愛として好きって友達とか家族への好きと何が違うのって聞いてるの。」
佐藤 「全然違うだろ。もっと一緒に居たいとか、相手のことよく知りたいとか強く思う相手のことだよ。」
鈴木 「でも友達も家族も相手によって知りたいって思う度合いはまちまちでしょう?そうじゃなくって、決定的な違いがしりたいの。」
佐藤 「決定的な違いって言われてもなぁ…。ほら、相手のこと目で追っちゃうとか相手に触れたくなっちゃうとか。」
鈴木 「じゃあ私、自分以外の人なら大体当てはまっちゃうんだけど。」
佐藤 「鈴木さん?」
鈴木 「だって、おデブの中居くんがいると、あごとかお腹とか触ってみたいなぁって思ってガン見しちゃうし、胸が大きいのに細い女子とか見てると、何が違うのか確かめたくてガン見しちゃうし、袖まくってる男子とかいると筋肉エロいなぁって思ってガン見しちゃうし…。」
佐藤 「ちょっと待って、ちょっと待って。それは恋じゃない。好奇心だ。」
鈴木 「でも、好きと似てるんでしょう?」
佐藤 「んー…。改めて言われると、説明できないなぁ。」
鈴木 「でしょ?私、恋愛と無縁だったからイメージできなくて。」
佐藤 「でもほら、漫画読むだろ?登場人物が恋をするとかよくあるじゃん。」
鈴木 「私が一番読むのってホラーかバトルロワイヤルみたいなやつなんだよね。」
佐藤 「片っ端から死んでいきそうだな。」
鈴木 「そうなのよ。恋したやつから死んでいく。それがセオリー。」
佐藤 「あ。恋をしたやつから死んでいくんだよ。」
鈴木「そう。お約束ね。」
佐藤 「じゃなくって。恋をしたら今までの自分が死ぬんだ。」
鈴木 「よく分かんないんだけど…。」
佐藤 「だからさ、俺たちって、やることいっぱいあるし、コミュニケーション取る相手もたくさんいるから、毎日いろんなものに目移りして1つだけに焦点を当てるってできないだろ?」
鈴木 「まぁ、そうだね。」
佐藤「それがいつのまにかその人にだけ焦点が当たるようになるんだ。」
鈴木 「それでどうして恋をしたら死ぬのよ。」
佐藤 「つまりね、焦点がその人にだけ当たるってことは、その人にどう見られて、どう思われてるか、そのことばっかり気になるってことなんだよ。その人に良く見られたいから、相手に好かれる自分にちょっとずつ作り変えていく。」
鈴木 「元の自分じゃなくなるから、恋をしたら死ぬってことね。」
佐藤 「そういうこと。」
鈴木 「じゃあ私、今、瀬戸際に立ってるのかもしれない。」
佐藤 「え?」
鈴木 「ううん、こっちの話。ありがとう。助かったわ。」
佐藤 「別に、大したことはしてないよ。」
鈴木 「そんなことないって。すごく楽しかった。じゃ、また明日ね。」
佐藤 「ああ、じゃあな。」