魔女の愛した永遠【第十四話】
名無しの魔女は事切れた二人の亡骸を眺めていた。
とてもとても呆気ない最期を遂げた同胞に弔いの言葉をかけることもなかった。私の手で殺したのだから、当然といえば当然と言えた。
ねぇ。なぜ貴女が魔女になったか知っているかしら。貴女が森で遊んでいる姿を見た時、一目で恋に落ちたの。久しく感じていなかった淡い想いは、貴女と永遠に過ごしたいとさえ思わせたわ。
だから、貴女が熊に襲われたあの日、咄嗟に貴女を魔女にする呪いをかけた。何年も貴女が同胞を探し始めるのを待っていたけれど、貴女は病んでいくだけだった。
魔女には人を生き返らせることはできない。だから、少しでもその気が晴れるならと死の呪いをかけたの。
この呪いはきっと、貴女が私を愛するきっかけになると信じていたわ。結局貴女は気付きもしなかったけど。
彼は吸血鬼。だからその身体は無傷で、その命は永遠を伴った。街で起きていた事件を考えれば分かりそうなものだったのに、やっぱり愚かな少女のままだったのね。
最近では、ただの暇つぶしと思って気持ちも冷めた気でいたけれど、死んでしまった貴女を見ると心に穴が空いてしまったようだわ。
また私は孤独になる。でも、幸せになった貴女を永遠に見続けるよりもずっと幸せだと思わない?
吸血鬼さん。あの世でこの子を頼むよ。
走馬灯のように駆け巡る想いを振り払うように名無しの魔女は館を後にした。誰もこの敷地に入ることのないよう、深い深い森で覆ってしまおう。
こうして魔女はこの世に一人だけの存在となったのだった。