一期一会(2/17)
会社で
また新人さんが一定期間私たちのところで仕事を覚えることになった。
iさんは一回説明したら一度ですぐに理解をして、上手にできるので
教えるのが楽しくなってきていた。
彼女が上手にお客さんの質問に受け答えをしているのを横で聞きながら、心の中で「ちょあ!ちょあ!(韓国語)」とグッドサインを送っていた。
いい!
「この職場ではいろんな人がいろんなことを言ってくるけれども
この人たち(私が信頼する特定の先輩たち)の言動をよく観察して真似をしてみて下さい」と初日に言ったら、
ちゃんと実行してくれているっぽかった。
仕事面では言うことないし、
これまでの仕事でしたきたこととか、
お互い母親でもあるので、子どもたちの話とか、
仕事の合間にいい分量でコミュニケーションが取れる。
小学生の息子さんのことが大好きで「周りから少しは子離れをしなきゃと言われるんです」と彼女が言うので、
「大丈夫です、ここのお母さんたち(うちの職員さん)は、全員子供のことめちゃめちゃ大好きです!!」と言う。
なんていうか、、
私が過去いろんな職場で出会ったその時々で親しくなった美しくておもしろい女の人たちに、iさんは似ていた。
しばらくしたら別の部署になるのは確定しているのだけど
この先も一緒に働けたらいい感じ。
ある日、ふとiさんが、「子供が学校に行けてないんです」と私に言う。
学校に行けない子供はもうずっと沢山いて、「学校に行きたくない」 が むしろ正常な反応と思っている私は、「行きたくないよねぇ、、学校」
「子どもをみないといけないので、明日お休みをします」とiさん。
「了解了解」と私。
そっか、もっと話を聞いたらよかったね、、ごめんね、 と言ったものの、
少しばかり様子を見るくらいのニュアンスで2・3日程度のお休みととらえていた。
しかし、有能故けっこう短期間で戦力になってきている彼女がいないとなると
彼女の代りに別の人を入れなければとなり、実質的に、そこを別の人にお願いするとなると
正確にいつ休むのか把握しなきゃ、、と再度、お休みはいつまで?と聞き直す。
「いつまでか分からない」と・・・。
「あ、、けっこう長期な感じ?」
あっかん~(>_<)これは
「ちょっと休憩いこう」って
周りには黙ってさりげなく二人で更衣室に行く。
話を聞く。
それによると、彼女はもうすでに部長に退職を申し出たが、しばらく「休業」したらいいと言われていること。私や私の先輩たちには知られてもいいのだけれど、子供の不登校のことは他には知られたくないこと。
その後ずっと「子供」の話を聞く。彼女は子供のことを話しながらちょっと泣く。
会社とか仕事がとか、、そこのネガティブではなく、「子供」のこと一点で。
私もだけど、親である彼女も、不登校がダメとか一切思っていないんです。
むしろ、それが子供の正常な反応だとも思っている。次を考えようとしている。
なのに、それでも、子供がしんどうそうなのは、母親の自分のせいではないかと責めるの、、自分を。
分かるの、、分かりすぎる。
本当のところは私は何も分からない。
でも、彼女が今この仕事ではなくて、子供と一緒にいたいのならそうするのがいい。
「(辞めることを)私たちに悪いとか、一切思わなくていい。何も気にしなくていい」と言った。
あくまで短い時間共にした同僚として。
会社や採用サイドとしては、どれだけ無駄なコストかかったかと迷惑な話なのだけど。
iさんの話を聞いた後、夜に部長がやってきて、廊下で話を聞かれる。
iさんが私には話をしたと部長に言ったから。
「どう思う?」と。
私はiさんは辞める気持ちだし、iさんが部長に話した内容も加味するともう戻ることはないと思ったけれど、彼女を採用した部長に、そして、すぐに辞められる方が迷惑と思っている部長に、彼女が戻る希望は薄い と断言できず、
とりあえずは「家庭の事情と説明する」と言う部長に
他の人には伏せておくけれど、私の仕事の相方Mさんだけには状況を話しますと言っておいた。
翌朝、iさんが出勤しない。朝礼をやっている間、私はMさんを別室に呼び、iさんからの話と部長からの話をまとめてする。
私が、彼女は私たちや会社へのネガティブではなくて、他の人には知られたくないけれど私たちだったらいいと言ってくれた「子供」の問題故に仕事を続けられないだろうという内容を話すと
でもMさんの見解では、やはり、多少、この会社や仕事へのネガティブがあったのではとのこと。
更に、自分の言動のせいでは(冗談だと思った)と。
「そんなことがあるわけがない」と全否定する。
Mさんはいつだってちゃんと筋の通ったことをして優しい。
iさんが来なくなったことで、先輩のTさんも私に、自分が(私のいない)日曜日に変なお客さんが来たときにちゃんと彼女をフォローできなかったからなんじゃないかと、、、、と気にしてる。
「そんなことがあるわけがない」と全否定する。
今日、部長が、彼女が正式に退社することになったと言いに来て
それまでの経緯は「知らなかった」ことにするとしても
先輩のOさんまでもが、私的なちょっとした質問をしたのが悪かったかなとか言うので
「そんなことがあるわけがない」と私はまたも先輩たちの邪推を全否定する。
言えないけれど、、私は彼女に直接話を聞いたから。
「皆さんが悪かったから、、とかは断じてないです」
私は先輩たちに言う。
「ここの人たちは、誰かが辞めることになると、自分が何かしたから自分が何か言ったからじゃないかと気に病む、それが私には不思議なんです。」
ひょっとしたら
それを自分のせいじゃないと最初から思っていない私こそが原因であるのかもしれないが
そのひとつのエピソードも思出せないくらい付き合いが薄い。
「私自身が転職をしてきたからかもしれないですが、
会社や経営者へのネガティブはあったとしても、誰か個人に何かを言われたから が原因で辞めることはないです」
中にはそういうケースもあるかもしれない。私が違っただけで。
だけど、言い切る。彼女の場合はそうではないし、スタッフが全員好意的に彼女に接していたのは明白。彼女から一言も職員やお客さんへののネガティブは出なかった。
バイトを含めて、向こうの事情も含めて、沢山「辞めてきた」自分の過去の職場を思い出す。
誰かに何かを言われて辞めたことなんか一度もない。
今までなんで辞めたんだろう?
長期で海外に行きたかったから。
バイトばかりしていられくなったから。
採用されたもののこの会社では働きたくないと思ったから。
飽きて違う仕事がしてみたかったから。
会社都合
倒産
任期満了
家庭の都合
などなど
沢山の人に会ったけれど、誰かに何かを言われてそれが辞める原因になったことなんかない。
誰に何を言われようと、辞める時には辞めるんです。自分の意志で。
iさんが「あたりですね」と私に言った。
教育係的な私が、ゆるいものだから、彼女にとっての「あたり」って意味かと思ったら
「説明、分かりやすいし。~さんにあたったお客さんは、あたりですね」と。
そんなことを、わざわざ何気なく言ってくれる人なんかいなかった。
「一期一会」をずっと
今でも毎日続けているようです。