『窓ぎわのトットちゃん』を見て

映画見終わった直後にふせったーに置いた感想べた貼りなので見にくいかと思いますがご了承ください。本当に良い作品なのでみんなに見てほしい。

他にもわたしよりはるかに詳しくて、詳細まで見ている人が沢山呟いてるけど、自分の言葉で書いておかなければと思ったからnoteにも載せる。

メインとしてはトットちゃんと、泰明ちゃん、それを取り巻く周りを描きながら穏やかに暖かく進んでいく話で、ただ、大人の涙を見せる作品なんだな、と言うのと、直接的に触れずに状況の変化を描くのがすごく上手い作品だな、と思った。

例えば、パパママをお父様お母様と言わなければいけない、お父さんが演奏できなくなる、切符を回収してくれるおじさんがおばさんに変わっている、飼い犬のロッキーの首輪だけがぽつんと置いてある、とか。
作中でタクシーの前を贅沢は敵!みたいな行進が横切るシーンがあるんだけど、それが凄く恐ろしくて なんというか 大人しかった女の子が「お腹空いた」に怒るようになるのとか、ご飯食べられるなら兵隊さんになりたいなとか、そういう、こうやって戦争に国全体が向いていくのかなって。
なんか、生活と戦争が切り離されて描かれている(戦地や兵隊だけ)とかだと多分遠くてそんなに怖くないんだけど、日常の中に何気なく戦争があって、だんだん侵食してくのって、すごく怖いなと思う。戦争が静かに、穏やかに、圧をもって生活を侵食していくさまが、直接触れずに、でもたしかになにかの事象でそれを表されていて。

トットちゃんのお父さんがコンマスなんだけど、食べ物の供給の代わりに軍歌を弾いてくれないかって打診されて、朝、バイオリンを弾いた後に「僕のバイオリンで軍歌は弾けない」みたいなことを言ったシーンが、朝の綺麗な色合いの空気で、なんか共感じゃないけど、繰り返しになるけど、そうだよなあって そうだよなあって、ほんとに
作品の色合いが穏やかで明るくて、だからこそひたひたと忍び寄る戦争の足音がすごく恐ろしく感じられた。本当に。
校長先生が倒した?倒された?艦隊の一覧を破りとるところにすごく、なんというか、そうだよなあと思って、もう書いてる今も泣いてる

電車待ってる間に落ち着いてきた。

多分トットちゃんのおうちは相当裕福なご家庭なんだよな、お母さんが服飾でお父さんはオーケストラのコンマスで。赤い屋根が綺麗なすごく素敵なシルバニアファミリー見たいなお家に住んでいて。適切な例えじゃないけどこれ以外浮かばない。学校に馴染めないからと転校できるくらいではある。

お父さんがコンマスだけあってやっぱりすごく音楽が綺麗で、環境音もちりばめられていて、とにかく音響がものすごくいい。クラシック以外の音響も含めてこれは映画館で見た方がいい作品だ、絶対に。と思った。環境音も、効果音も、音楽も、そしてリズムもすべてが効果的に使われていて、映画館で見るべき作品だと思う。
作中に何度も繰り返される歌、「よくよく噛めよ食べ物を、噛めよ噛めよ噛めよ噛めよ食べ物を」歌詞は正直自信なくて「よく噛め噛めよ、噛め噛めよ」だったかもしれないんだけど、この歌が最初は明るく元気のいい歌として出て来て、後半に行くにつれて食料が乏しくなる状況とも相まってすごく悲しく響く歌だな、と思う。「噛めよ嚙めよ嚙めよ嚙めよ食べ物を」のところの音の下がり方が凄くきれいで、綺麗だからこそ。

家族仲もすごく良くて、お父さんもお母さんもすごく優しくて、トットちゃんは心の底から愛されていて、転校した先の校長先生もああこういう先生になれたらどんなにいいか、っていうくらいの人格者で。
でもそれはそれとして自分が教師としてやってるクラスにトットちゃんがいたらストレスでおかしくなるかもとは一瞬よぎった。
序盤は子供特有の無茶やあぶないよ〜って大人の目線から見てハラハラするシーンこそあるもののすごく穏やかで、満ち足りていて、暖かくて優しくて、だからこそ戦争の足音が徐々に近づいてくるとすごく怖い。やめて、壊さないで、って思う。

あと本当に校長先生の対応が教育者としての理想すぎる。すごく、すごくいい先生で、女の先生がちょっとからかうような、あんまり気にしない人も多いかも、みたいな発言をきちんと叱ってたのが本当にいい先生だなと思った。子供が何をしてても怒らなくて、理由を聞くだけ。大人目線でどうしてもダメなことをしていたら、頭ごなしに辞めさせるんじゃなくてやり方や場所を変えさせる。すごく良い先生。

泰明ちゃんがトットちゃんの去り際になにか呟いてたの、ああキリスト教の何かかなって思ってたらやっぱりキリスト教だった。天国の話をしてたのもきっとそれだよね。泰明ちゃんも天国で自由に飛び回ってるのかな、と思う。

作品の絵がすごく綺麗で、中でもイメージ……って言うのかな、想像の世界に飛び込む時に絵のテイストが色々変わるんだけど、それがすごく良かった。穏やかな方も、悪夢の方も。

トットちゃん、って優しく呼んでたお母さんが「てつこ」って呼ぶようになってて、ああ、って声が漏れそうになった。トットちゃんじゃなくなったんだ。トットちゃんじゃ、なくなっちゃったんだ。

わたし本当に知識がなくて、「建物疎開」というものを知らなくて、見終わってからすぐに調べたんだけど、あらかじめ建物を壊して防火地帯を作るんだね。
幸せの象徴、幸せな場所としてなんどもなんども、外観も家の中も繰り返し出てきた家が引っ張って壊されるのに、そもそもその家があの穏やかさを失って汚れて傷ついているのに、どうしようもなく泣いてしまった。

物語冒頭でチンドン屋さんが出てくるんだけど、最後にもチンドン屋さんが電車の窓から見えてトットちゃんがなんか電車と電車の間の?ドア?を開けてそれを眺めてから閉じるんだけど、ああ、トットちゃん大人になったんだ、と思って 思って もう涙が止まらないし、エンディングでも涙が止まらない。

ていうかさ、わたしWW2って昭和のことだと知識として知っててもなんというか、実感がわかないんだよね。当たり前かもしれないけど。すごく遠い昔のように思えるのに(わたしからしたら携帯がない時代が既に遠い昔だしその前はもっと遠い昔に感じる)、昭和なんだよな。

見てよかったし、いい映画だったし、みんなにも見てほしいと思った。嗚咽が漏れそうになるくらい泣いてしまった。普段はこういう、映画とか読書とかに際して「~すべき」みたいな強い言葉は使わないようにしてるんだけど、この映画は見るべきだと思ったよ。
こんなに言っておいてなんだけど勧めるときに具体的な言葉が何も出て来なくて、でもうまく言語化出来ないときに無理やり言葉にして固定してしまうのも違うと思ったから、みんなにも見てほしい、とだけ書いておく。

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