コロナ感染者への差別(明治大学文学部准教授・内藤朝雄さん)
フォーリンラブ・バービーがお送りするTBSラジオ「週末ノオト」。
2020年10月10日の放送では、バービーさんも身近に感じる出来事があった、「コロナ感染者への差別」について取り上げました。
解説いただいたのは、差別や偏見、人間の暴力性について研究されている、明治大学文学部の准教授で社会学者の内藤朝雄さん。
今回はリモートでお繋ぎして、コロナ差別、そして差別や偏見そのものについて、お話を伺いました。
◆コロナ感染者への差別や偏見
個人感染では、感染した人の自宅に、その人を罵った音声が録音されたテープが送られてきたり、100人以上のサッカー部員の集団感染が起きた松江市の高校では「日本から出ていけ」「学校をつぶせ」といった誹謗中傷が相次ぎました。
そして、医療従事者の方の中には、食事をした飲食店から「もう来ないでください」と言われたり、「子供を保育園に連れてこないで」と言われたり、職業差別も問題に。
◆差別の歴史
日本だけでなく世界的にみても、差別や偏見は、人類の歴史と同じぐらい古く、「人はすべて等しく尊い」といった考えは、この数百年、西洋社会の中から生まれたもの。
そのため、身分がある社会では、差別や偏見は「正しいこと」とみなされてきた歴史があるそうです。
今の感覚では、かつての「正しいこと」がど真ん中の差別や偏見。それを無くそうと数百年努力してきましたが、それが今、コロナにより壊れかけているんだとか。
◆現代の日本における差別
内藤先生によると、日本は、学校と会社では同調圧力と人格支配が強く、それは少なくとも、先進諸国では常軌を逸しているといってもよいぐらい。
政府や国家を批判するのは許されるが、家庭と国家の中間にあたる会社や学校への批判は許されない、会社や学校に恭順する「中間集団全体主義」で根付いた感覚・習慣が、コロナ禍において悪い方向に出てしまった。
こういった感覚を正すには、周りの目や感情をいつも気にする生活習慣から、一人一人、自分自身を大事にするものへと変化させることが必要で、今のコロナ禍は見直す良い機会と言えるかもしれない。
◆そもそも人間はなぜ差別をするのか
身分や立場の上下が生じることは、人間だけでなく、さまざまな動物で見られるもの。
これは進化の過程の中で見ついたと考えられるもので、例えばチンパンジーは、病気になった仲間がいれば、そのチンパンジーを仲間外れに。
そのため、人類としても、差別をする方が普通、いわば「自然」だった。それが近代になり、先進国の中で意識変化が生まれてきた。しかし、社会の基盤の弱さにより、その考えに綻びができ、結果として、現代においても差別が生まれてしまう。
◆近くに感染者が出たら、どう接すればよいか?
大切なことは、「あなたが悪いのではありません。ウィルスが悪いのです」と、はっきり口に出して言うこと。
感染した人ではなく、あくまでも悪いのはウィルス。そのことを伝えることが一番大切。
しかし、感染防止のためには、距離を取ることも必要で、その距離の取り方は人それぞれ。日本人は距離を取られると、「人格否定」を受け取る人が多く、その距離の意味をどう相手に伝えるか。
その方法の一つとして、親指と人差し指をクロスさせて作るハートマーク。
距離を取ることにネガティブな感情が無いことを、しっかりとアクションで示す。そういったことを世の中に広めることが今は必要。
◆差別と偏見に対し、この先、必要なこと
差別を無くすことは当然だとしても、一人で社会を変えるのは難しいもの。そこで動くべきは、やはり国。
ちゃんと法を整備し、差別や偏見に対し、法律や条例で厳しく罰する。
国家や政府は、「井戸」のようなもの。
みんなで作った井戸は公共財産。国家や政府も、崇高なものでなく、みんなで作ったもの、つまり公共財産。だからこそ、公共財産として差別を禁止するルールを作る必要がある。
先が見えないコロナ禍、誰が感染してもおかしくない今、どう人と接していくか、その指針となる貴重なお話、内藤先生、本当に有難うございました。
今回お話しいただいた内藤先生のお考えに興味を持たれた方は、下記のリンクからもどうぞ!
●学校のいじめに通じる「日本のコロナ差別」、内藤朝雄氏が語る「人が怪物になる」とき
https://www.bengo4.com/c_1018/n_11748/
●日本社会は変われるのか――「中間集団全体主義」という桎梏
http://toshoshimbun.com/books_newspaper/week_description.php?shinbunno=3459&syosekino=13892
●日本社会は「巨大な中学校」のよう…コロナ危機で克服すべき3つのこと
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72020
そして、内藤先生の著書もぜひチェックを。
「いじめの構造-なぜ人が怪物になるのか」
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000210470
以上、2020年10月10日の週末ノオト、明治大学文学部の准教授で社会学者の内藤朝雄先生による「コロナ感染者への差別」問題でした。
TBSラジオ『週末ノオト』は、毎週土曜13:00-14:55放送中。
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