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ジャパンカップ 外国馬血統診断

 日本調教馬がブリーダーズカップで2勝を挙げるなど何かが違う新時代の到来を感じざるを得ない2021年。ジャパンカップにもそうそうたるメンバーが来日してきました。本日は日本に出走する外国調教馬は走れるのかどうかを血統表と戦歴から考えていきましょう。


グランドグローリー Grand Glory(仏)
 


父 Olympic Glory(ダンチヒ系)
母父 Daylami(ミルリーフ系)
父母父 Alzao(リファール系)
母母父 Machiavellian(ミスプロ系)

クロス
Alzao、Light of Hope 3 x 3
Mr. Prospector 5 x 4
Mill Reef 5 x 4

 フランス調教馬というのがまず第一のポイントでしょう。欧州系は二つのタイプがあり、所謂英国型調教パワーやスタミナ重視の調教を、仏型調教ではスタミナと末脚を重視した調教をそれぞれ行っています。この馬はそんなフランス調教馬の中でも「末脚勝負」が得意な傾向にあります。前走のオペラ賞でも後方待機から直線豪脚で差してくる競馬でした。中団から抜け出す競馬がこの馬は得意な傾向にあるので、日本との親和性も高そうですね。父母父のAlzaoはディープインパクトの母父、母父系のミルリーフはマグニテュード(Magnitude)を介して1992年の2冠馬(皐月、ダービー)ミホノブルボンやミルジョージを介して有馬記念馬イナリワンやオークス馬エイシンサニー、エリザベス女王杯馬のリンデンリリー、宝塚記念馬のオサイチジョージを輩出しています。

 日本で活躍するならばスピードが必要ですが、母母父マキアヴェリアン(Machiavellian)は母父に入ってシュヴァルグラン-ヴィブロスやドバイワールドカップ1着馬のヴィクトワールピサを輩出するなど底力や中距離でも活躍できるスピードを産駒に伝えている血統でもあります。アイルランド生産でもフランス競馬の色を強く出している馬と言えるでしょう。

 日本競馬にアジャストする可能性も高く、期待できそうですね。父ダンチヒ系と母父ミルリーフ系というのはんミルグレイン(芝3勝)などがいるように、牝馬であることを考えるとこの舞台は日本の中でもかなり合うように思えます。ダンチヒ系は欧州血統と合わさると芝中距離が一番よくなりますね。かなり期待しても良いでしょう。


ブルーム Broome(英)


父 Australia(ガリレオ系)
母父 Sweepstake(ノーザンダンサー系)
父母父 Cape Cross(ダンチヒ系)
母母父 Suave Dancer(ニジンスキー系)

クロス

Ahonoora 5 x 4

 イギリス調教馬、キーファーズの松島社長が半分持っている名伯楽A.オブライエン厩舎所属馬。前走はBCターフであわや勝利目前というところまでいって2着。ラヴズオンリーユーが勝利した馬場と考えれば一発はありそうですね。血統表を見てもウィジャボード(Ouija Board)が入っているのも面白いです。ウィジャボードと言えばジャパンカップで最後に馬券内に入った馬ですね(3着)。そして鞍上はコントレイルを3冠馬にのし上げた(と個人的には思っている)名手ムーア騎手。ここまで揃うと買う条件はマックス揃っているように感じますが、果たしてそれでよいのか。血統をもっと見ていきましょう。

 まず目に入るのはノーザンダンサー系の多さです。父Australiaは2代父ガリレオ(Galileo)でサドラーズウェルズ系、母父はSweepstakeでトライマイベストから続くノーザンダンサー系、父母父はCape Crossでダンチヒ系。母母父はSuave Dancerでニジンスキー系。ここまで来たらリファール系も入っていてほしい所なんですがそれはないというなんとも惜しい血統構成。米国系は極度に少なく、Galileoの母父にミスワキが入っている程度です。ミスワキと言えば日本ではサイレンススズカの母父としても有名かと思います。本当にその程度でそれ以外はほとんどがパワースタミナ系の血統で占められています。3代母の父はブラッシンググルームということで少し伸びという面に補正はかかっていますが、それにしてもパワースタミナ系に向きすぎな感は否めないですね。それでいて2400m以上の重賞は三クール大賞の1勝のみとこれも物足りない感じになっています。同距離連戦はストレスの溜まりやすいローテーションでもあるので、不安は完全にぬぐいきれません。

 古馬はステイヤー気質のある馬が活躍しやすい傾向にはありますが、ノーザンダンサー系が父、母父だった馬が最後に馬券圏内に激走したのは2007年のメイショウサムソンが最後であると考えるとこの競走に向いているかは疑問符が残ります。似た血統構成のカプリが18年11着(20年の水準にしても6着相当)だったことを考えても厳しいとジャッジするのが得策。外国馬からワイドを流したい場合は買う程度の評価でしょうかね。

ジャパン Japan 


父 Galileo(サドラーズウェルズ系)
母父 デインヒル(ダンチヒ系)
父母父 Miswaki(ミスプロ系)
母母父 Sagace(ヘロド系)

クロス


Northern Dancer 3 x 4
Natalma 4 x 5 x 5
Buckpasser     5 x 5

 こちらはGalileoの直仔ですね。ジャパンとは名ばかりで日本要素はほとんどありません。Galileo×ダンチヒ系で日本で勝利を上げた馬は少ないですが、それでもアイルランド産のマテンロウゴーストが日本で3勝を挙げる活躍を見せています。3歳時にはあずさ賞2着など2400mでも実績を残していました。海外馬で言えば同じくGalileo×ダンチヒ系、同じオブライエン厩舎のアイダホが2017年に参戦しここでは5着になっています。そう考えると日本で激走する確率は低いと言い切れません。もちろんその時も上り4位の成績を残しているように日本競馬には適応できそうな感じもあります。

 今回のジャパンもアイダホと同じノーザンダンサーの3×4、Natalmaの4 x 5 x 5、Buckpasserの 5 x 5とクロスもほとんど同じという血統構成になっています。前述の2頭と違い、非常にバランスの取れた血統で、父母父にはミスワキが、母父Danehillは米国ダンチヒ系ということで見どころは作りそうです。外枠に加えて、調教でも不調と少し不安要素も多めですが、血統的にはそこまで嫌う理由はないと言うところでしょう。

 そして母母父にはSagaceがいます。これは三代始祖のバイアリータークの直系、ヘロド系の系統。日本ではパーソロンーシンボリルドルフートウカイテイオーのライン、メジロアサマーメジロティターンーメジロマックイーンのラインでおなじみのステイヤー血統ですね。ヘロド系はほとんどの父系が消滅していますが、いまだに母父など牝系では存在感を示し続けている系統ですので、日本との親和性は高そうです。

 ただそれだけで買う必要があるかと言われればこれも厳しい部分もあります。掲示板確保はありえそうですが、馬券圏内となるとほとんど期待できないでしょう。


終わりに


 前回外国馬が勝ったのは05年のアルカセット。米国産馬で父キングマンボのイギリス調教馬。あるカセットはレコードを長く保持していたことでもおなじみです。その前のレコードホルダーはニュージーランドのホーリックスでした。こちらも血統にはイギリスとニュージーランドが入っているバランス型。やはりスタミナの根幹になりやすい欧州血統とスピードを高める米国血統がいかに入っているかが勝負になってきそうです。調教は伸びを重視するフランス血統が優勢でしょう。血統だけでは全てを語ることはできないとは思いますが調教と血統の積み重ねが有利不利を作り出しているのもまた事実です。

 外国馬の血統解説はいかがだったでしょうか。なるべくローテと血統の話を作っていきたいと思いますので、興味のある方はぜひnote、Twitterのフォローをしていただけるとすぐに更新に気づくと思いますのでよろしければフォローしてみてください。

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