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50代リスキリング。学び直しということ

8月に中小企業診断士の試験を受けた。

資格試験を受ける目的はなんだろう。独立・開業や職場でのキャリアアップを掲げる人にとって、「自分の幅を広げたいから」という理由は滑稽なものに思うかも知れない。

「資格試験は資格を使うために受けるもの。それ以外の人は何のために受けるのか考え直したほうがいい」と正論を言われてしまうので声を潜めているが、私はその資格を今の自分のプラスアルファにしたいから勉強している。もちろん、その知識をベースにやりたいことはある。

中小企業診断士の資格は、合格しても独占業務というものはない。1次試験の科目は、「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・政策」の7科目、合計420点突破で2次試験に進むことができる。1次合格から2次試験までは2カ月足らずで、1次のマークシートに対し、2次は記述となる。かなりハードルは高い。

正直マークシートで6割なので、「運が良ければ通るかも知れない」と考えてみたこともある。ChatGPTさんに聞いてみたところ、その可能性は0.00003%ということが分かった。

1問4点、25問の出題で、100点満点の60点で合格の試験があります。回答はマークシート方式で、5つの選択肢の中から選びます。この試験で60点以上が取れる確立を教えてください。(※経済学・経済政策の場合の問題数)

この試験の問題の期待値を計算するために、問題ごとに正答する確率をまず考えます。5つの選択肢があるため、ランダムに回答すると正解する確率は 1/5=0.2 です。
試験は25問あり、1問あたり4点ですので、60点以上を得るには少なくとも15問正解する必要があります(15問×4点=60点)。

この場合、二項分布を使って計算します。
n= 試行回数 = 25
k = 成功回数 = 15以上
p = 成功確率 = 0.2

実際には、累積分布関数(CDF)を用いて、15問以上正解する確率を求めます。計算すると、試験でランダムにマークシートを塗りつぶした場合に60点以上を取得する確率は非常に低く、ほぼ0%に近いことがわかります。具体的には、試験の仕様と選択肢の確率から、60点以上取れる確率はおおよそ 0.00003% となります。

要するに勉強しろ、ということである。

ちなみに勉強したら2択までは絞れてくるので、2択の場合の合格確率を聞いてみたところ、約18.41%だと教えてくれた。


52点のオンナ

自己採点してみたところ、「経済学・経済政策」「企業経営理論」「運営管理」「経営情報システム」「中小企業経営・政策」の5科目がほぼ52点だった。情けない。私は52点のオンナなんだと思ったが、なんとなく納得もした。自分の潜在能力を図れるテストだとしたらそれぐらいの点数になりそうだ(「財務・会計」「経営法務」は合格)

受かる人は、もともとのポテンシャル自体が高い。博識で、色んなものに興味を持ち、日々過ごしているのだろう。私は毎日日経新聞を読むわけでもないし、本を多く読むわけでもない。その意味で今のわたしは52点なのだ。

一年に一回の試験で、受かる確立は高くない。しかも2次試験が更にハードルが高く、正直2次対策には途方に暮れている。「じゃぁ、勉強をやめるのか?」と自問自答してみたが、どこにもやめる選択肢はなかった。


診断士の勉強は視野を広げてくれる

診断士の試験を来年も受けたいと思う理由。それは、試験勉強自体が、私の今まで知らなかった世界を知るきっかけとなるからだ。先ほども書いたが、診断士の試験科目は「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・政策」と幅広い。「財務・会計」と「経営法務」については、これまでの人生で学んできた分野と少し重なるが、残りの分野についてはほぼ接点がなく過ごしてきた。

視野が広がるきっかけとなったことも多い。

「中小企業経営・政策」は、中小企業の経営の動向や課題、政府等が行っている中小企業向けの各種政策から出題される。中小企業の経営の動向や課題は、前年度の『中小企業白書』の内容から出題されるため、今、日本が抱えている問題と、政府がこれからどうしたいと考えているのかが見えてきて、非常に興味深い内容となっている。

日本はOECD加盟国の中で労働生産性が低いことを知った時には驚愕した。どうしてこうなった。国際的に見ても日本の生産性は低く、日本の国際競争力を維持するためには中小企業の生産性の引き上げが課題となっている。

『中小企業白書』概要より引用

「経済学・経済政策」では、ミクロ経済学(消費者や企業の経済活動)とマクロ経済学(景気動向、物価、景気対策など国全体の経済活動)が範囲となっており、ミクロ経済学では、消費者余剰、生産者余剰、社会的総余剰などについても学ぶ。消費者がモノを購入する際に、支払っても良いと思う金額から実際に支払った金額の差を「消費者余剰」といい、生産者が財の販売により受取った金額と財の生産に要した費用の差を「生産者余剰」という。つまり、消費者余剰は消費者がトクした分、生産者余剰は生産者がトクした分だ。

そして、消費者余剰と生産者余剰を足し合わせた余剰を「社会的総余剰」というのだが、この社会的総余剰は市場原理に任せた時が最大になり、補助金などを投入すると死荷重(資源配分の効率性の損失)が発生するというのが興味深かかった。分かりやすく言うと、社会全体でトクしていた分が補助金投入で減ってしまうのである。他にもいろいろ。「経済学・経済政策」では、経済政策が打ち出された時にどこに向かうのか?などを考える上でベースとなる知識を学べた。

「経営情報システム」は近年難化傾向にあるが、これからの情報化社会を思うと、なくてはならない科目なのだと思う(苦手科目…)。ITの知識はこれから人生後半戦を迎える私にとって、助けとなるかも知れない。

「運営管理」では、生産と販売という、現場のオペレーション管理に関する知識が問われる。生産管理では製造業の生産オペレーション、店舗・販売管理では小売業などの店舗における店舗・販売管理を学ぶ。

「モーダルシフト」(トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換すること)や、「RORO船」(roll-on roll-off/トラックと運転者を一緒に輸送することができる船舶)などの語彙も試験囲なのだが、実際にフェリーの予約をした時に「モーダルシフト」「RORO船」などの言葉がHPに出ていて興味深かった。当たり前だけど、こんな風に知識は実社会と繋がっているのだ。


リスキリングとは?

学ぶ意味を考える上で、もう一度「リスキリング」という言葉について確認してみたい。

リスキリングとは、社会の変化に対応するための知識や技術を学び直すことを指す。これにより、現在の職務に対応できるようになるだけでなく、新しい職務や業界にも適応できるようになる。特に、技術の進化や産業の変化が激しい現代において、リスキリングは非常に重要である。

リスキリングは、これから人生100年時代を生き抜く上でも、非常に重要となるのではないだろうか。少なくとも、この社会で生きていくためには、それなりの知恵と武器を持たなければならない。

私の場合、そのきっかけが診断士試験というだけだ。

多分、この記事を見て、「資格試験は資格を使うために受けるもの。それ以外の人は何のために受けるのか考え直したほうがいい」など、冒頭に書いたことを思う人も多いと思う。私もそれについては正論だと思う。

ただ、勉強する理由はその人の自由だと思う。だから、私は来年も試験を受けようと思う。

フェリーの甲板から

书山有路勤为径 学海无涯苦作舟。

学生時代に中国語の先生に習った言葉。学びの海は果てしなく、苦労して船を漕いでいくような意味に受け取った。この言葉を思いだすたび、大きな海の中を進んでいる船を想像している。

学海無涯苦作舟

学び続けること。それが生きることの意味のように思う。これから1年をどうするか考えていて、なんとなく纏めてみた。

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終活ライターみん
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