EURO2024イタリア代表振り返り
はじめに
こちらの企画にイタリア代表担当として参加していました。
イタリア代表の試合なんてもうはるか昔ですけど今!?というお声もありましょうが、まあやらないよりはいいので……4試合分なんでさらっといきましょう。
GS第1節 イタリア×アルバニア
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配置を確認する間もなくディマルコのスローインがバイラミに渡ってアルバニア先制。
先制したアルバニアは右のアサニがディマルコについて下がることで5バックのような形に。イタリアはジョルジーニョとバレッラの2ボラでディマルコ片上げの3421に見える。さらにカラフィオーリは2トップ脇に出て行く意識が強いのでそこからも持ち上がれるのが強みといったところ。
押し込んだあとはIHの突撃などでHS取りに行ってからの空いた手前を使っていくイメージ。
CKからバストーニのゴールで同点に追いつくと、アルバニアの保持に対してはバレッラを上げて442でプレスをかけていく。アルバニアの保持はあんま工夫とかなさそうなので、このイタリアのプレスがハマり、試合は更にイタリアのペースになっていく。
さらにアルバニアが降りて行くジョルジーニョやバレッラを放置してしまうのでボールの出所を増やせているイタリアは、ディロレンツォのインサイド進出から押し込んでこぼれをバレッラが蹴り込んで逆転に成功。
さすがにちょっと受け過ぎだったアルバニアはヒサイを押し上げて何とかしようという雰囲気。一応アスラニのサリーもあり、ようやくボール保持ルートを模索し始める。
後半からはSHが出てプレスをかけようという雰囲気のアルバニア。ディマルコの所はそれでいいがディロレンツォとカラフィオーリをどうするのか決まってなさそう。ボランチも出てこないのでイタリアの中盤を捕まえきれずにペースをつかめない。
結局追加点はなかったものの危なげない試合運びを見せたイタリアがそのまま逃げ切りを果たした。
GS第2節 スペイン×イタリア
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スペインらしからぬというか、現代サッカーらしく強度を備えたスペインに対してイタリアがどのように戦うかが注目となった試合。
イタリアはスペインのプレスを外せるか勝負で、スペインは中盤がプレスに出てくるのでその背後を狙ってるっぽい。バレッラが間で受けるシーンがチラホラあったが、最終的にはスカマッカ裏抜けが多く縦に速い展開を狙っている様子。が、これがあんまり刺さっておらず、むしろ長いボールが増えることでボールを失うのも早くなり、保持の時間を減らすというデメリットが目立っていた。という訳でだんだんスペインが押し込む展開に。
HTでフラッテージとジョルジーニョを下げてカンビアッソとクリスタンテを投入。ジョルジーニョを下げたことでちょっと非保持に傾けて自陣で構える時間が増えたという印象。
ただし自分たちの時間を増やすことはできていない訳で、持たされても問題ないどころかもともとそっちが本領というのがスペインの厄介な所。
押し込まれる中で耐えていたがダブルチームでニコを止めようとしたところをククレジャのサポートで剥がされてクロスに持っていかれてカラフィオーリのOG。引いて守るなら5バックにするなどスペインの強力なWGに対して数的優位を失わない手立てが欲しかったかもしれない。
GS第3節 クロアチア×イタリア
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引くなら5枚だろうとか言ってたらなんと5-3-2で入ったイタリア。試合は思惑通りというかクロアチアが保持する展開でスタートした。
イタリアはブロゾビッチを厳しめに見てサイドに誘導しつつ、SBにはWBが出て全体のスライドで対応することに成功している。
保持では中央に縦パス刺して起点作り→一気に空いてるWBに出して加速!という雰囲気で、短い時間でもしっかりと整備してきたことを感じさせる振る舞い。また、中盤で引き付けてからのDH背後にバレッラとラスパドーリが現れる形も持っている。
一方でトランジションはクロアチアの方に分がありそうな雰囲気で、イタリアのビルドアップを引っ掛ければショートカウンターでチャンスを作ることができていた。
そんな中クロアチアはイタリアをサイドに動かして真ん中を空けて使う、というところに活路を見出そうとしており、後半に入ってからはモドリッチやコバチッチのサイド流れが多くなった。
PK獲得もブロゾビッチのサイド流れから得ており、イタリアに押し込まれきる前に結果を出せたのは大きいだろう。
イタリアは失点直後にディマルコ→キエーザでダルミアンを左でキエーザを右、ディロレンツォが右CBという形に。
クロアチアが出てこないので中盤の背後が空かず困ったイタリア。というわけでひとまずキエーザ大作戦。クロアチアは中央をとにかく閉めているため大外の高い位置で起点を作って逆サイドに振るのは効いている感じがあった。
とはいえなかなか最後の一工夫が出なかったところ、カラフィオーリの大胆な持ち上がりからザッカーニのシュートで命拾い。間受けする人が減ってどうしようと思っていたら上がって解決したカラフィオーリであった。
Round of 16 スイス×イタリア
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この試合ではボールを持てると見たか4バックでスタートしたイタリア。
しかしスイスの3枚ビルドに対してうまくプレスをかけられず、ボールを持ってもスイスの組織的なプレスによって片方のサイドに閉じ込められてしまう。イタリアはクロアチア戦のように抜けられればチャンスだが、その形はスイスに警戒されており、CBが放置されてその後ろを徹底的に塞がれていた。またスイスは中盤で数が足りているのでアンカーに出て行っても背後が空かず、イタリアはクロアチア戦で見せたような中盤の背後から加速する形も作れない。
また、イタリアの非保持はとにかくホルダーにプレスがかからないまま撤退しているのでさらっと縦パスを刺されてしまう場面が多発。失点シーンでもエンボロへの縦パス起点でフロイラーの飛び出しを捕まえられずという形だった。
後半からエルシャーラウィ→ザッカーニで打開を図るが前半から図式は変わらず。バルガスのゴールはゴラッソだったが、それにしても簡単に侵入され過ぎであった。
終盤に試みたザッカーニ大作戦も中を塞がれていてどうにも……という感じで、最後までかみ合わないまま試合終了。決定機と呼べそうなのはスイスのクリアボールがポストに当たったシーンくらいで、なんとも不完全燃焼な敗退となった。
雑感
とにかくトランジションに弱く、丁寧な試合展開を作らないとどうにもならないという印象のチームだった。しっかりとボールを持てるアルバニア戦やクロアチア戦ではきちんと設計された前進を見せていたが、それをさせてもらえないスペインやスイスに対しては何もできないまま沈んでいくという展開になってしまった。
現代サッカーのチームとしてはそれでは当然厳しく、まあベスト16敗退という戦績もやむなしといったところ。ベスト16のなかでは厳しめの対戦相手だが、それでもスイスにほとんど何もできないというのはかなり切ない。
ネーションズリーグではフランスと並ぶ勝ち点を稼ぐなど健闘しているようでその辺の課題は改善されているのかもしれないが、とにかくW杯予選で3大会ぶり(!)の出場権確保に全力を注ぎたい。3月のネーションズリーグで勝てば良いグループに入れそうなので、まずはそこに全力投球といったところか。