11月6日 カノープスは確かにそこにいた、というお話

ベルーナ2日目。私は涙を流していた。

話は少し遡るが、私がウマ娘にハマったのはアニメを見てからだった。
もともとゲームをリリース直後にインストールし、育成ゲームが好きでなかったこともあって、すぐに止めてしまった。その後、大学初の長い夏休みに友人から勧められ、アニメを一気見した。
本当に、一気見した。1期13話と2期13話を。

画面の中で躍動する彼女たちは美しくて、一生懸命で、心を奪われた。
特に私の心を強く揺さぶったのは、2期のチームカノープスだった。

2期で初登場するチームカノープスは、主人公たちが属するチームスピカ、ライバルチームのチームリギルから少し違った色のチームだ。
チームメンバーも4人と少なく、他の2チームと違って、G1をバンバン勝つようなメンバーがいるわけでもない。ちょっとネガティブでまとめ役のナイスネイチャ。しっかりしているように見えて実は脳筋のイクノディクタス。ドジが多くて鼻血をよく出すマチカネタンホイザ。いつも全力で、すぐスタミナが切れてしまうツインターボ。個性的な4人が、G1目指してちょっとずれた方向性で頑張っている、メタ的に言えば笑いどころ担当という役割だ。

ただし、彼女たちはただのユーモア担当ではない。彼女たちだって一生懸命に勝利を目指しているのだ。必死に努力して、練習して、全力を尽くして。

2話、ネイチャの菊花賞。「テイオーがいたらなんて絶対に言わせない」と必死に走る彼女を見て。
10話、「これが諦めないってことだ」と叫びながら走りを見せつけるターボを見て。
そんなターボの勝ちを信じて疑わないカノープスを見て。誰が彼女たちの事を笑えるだろうか。

彼女たちは、少し言葉が悪いかもしれないが、「負けの語り手」なのだ。
物語で描かれるのはえてして勝者だ。負けること、躓くことはあっても最後は勝って終わる。けれど、彼女たちはそうではない。
勝つことが当たり前ではない、だから努力する。負けても諦めない。それが報われることも少ない。だけど、一生懸命に努力を続けるのだ。そうしなければ勝てないから。
努力はいつも振り向いてはくれない。だけれど、続けなければ可能性もない。みんなが分かっていて、それでも目を背けたくなることを伝えてくれるのがカノープスだった。

2期を見てから、私はカノープスが好きになった。箱推しの中でも、この4人は特別だ。

しかし、アニメが終わった後なかなか4人が揃うことは無かった。ぱかライブTVでも、4thの舞台でも揃うことは無かった。
キャストの皆さんもそのことについては語っており、ネイチャ役の前田さんは事あるごとに「いつかカノープス4人揃って、ライブに出たい」と言ってくれていた。

そして、4th追加公演の出走者が発表された時、衝撃が身体を走った。
2日目、カノープス勢ぞろい。「アぁ……」と声にならない叫びをあげたのを覚えている。
そして、幸運なことに現地のチケットを入手でき、当日を客席で迎えることが出来た。

カノープスのオタクとしては、4人が勢ぞろいなだけで十分すぎるほど嬉しかったのだが、一つだけ理想があった。
『カノープス4人でのユメヲカケル!を聞きたい』。
2期の主題歌であるユメヲカケル!だが、WINNING LIVE 04にはカノープス4人での歌唱バージョンが収録されている。横浜公演でも、イクノディクタス役の田澤さんとナイスネイチャ役の前田さんが歌唱していたため、否応でも期待は高まっていた。

ライブが始まり、素敵な楽曲の数々が披露されていく。初の逃げウマだけでの 逃げ切りっ!Fallin' Loveから始まって、うまゆるエンディングの2曲など、会場は大盛り上がり。
合間の恒例企画、カメアピ☆盛り上げ対決でもカノープスは勢ぞろい。負けてはしまったが、いつものカノープスらしい姿を見られて満足。
その後、ぱか☆アゲ↑ミックスのコーナーでも、走れウマ娘で4人が恒例のボードを持って登場してくれて、とても嬉しかった。

ライブも後半、もしかしたら4人のユメヲカケル!は無いのかもしれないと思い始めた頃。ネイチャのソロ曲が終わった後、スクリーンに星座のカノープスの映像が流れだし、その最後に『CANOPUS』の文字が浮かんで、カノープスの4人が集まった。そして、事前にぱかチューブで披露されていた4人が円陣を組む動画に合わせ、キャストの4人が円陣をすると、イントロが流れ出した。そう、ユメヲカケル!だ。

正直、画面に映像が流れた時から涙腺は危なかった。けれども、この光景をしっかり目に焼き付けておかねばと我慢して、ブレードをふり続けていた。
予想は出来ていたのだ。4人が揃うと発表された時から、この曲は来るだろうと。でも、それが現実になって、4人がステージで躍動して、歌って、目の前に存在していることを認識すると、形容しきれない感情が渦巻いた。

いるんだ。カノープスは存在するんだ。いつか見た幻想じゃなかった、アニメの中だけじゃなかった。カノープスは確かにここにいる。ドームの真ん中で、何万人ものトレーナーの前で曲を披露する彼女たちはその瞬間、シリウスよりも、リギルよりも、スピカよりもキラキラ輝く一等星に見えた。

私は2番のサビあたりから涙が止まらなくなっていた。自分が勝手に抱いていた幻想、理想。押し付けにも近いそれらを、彼女たちはすべて受け入れて表現してくれた、そんな風に感じてしまって涙を止めることが出来なくなった。

そしてライブの最終盤。アンコールの後、前田さんは挨拶で、「ずっとカノープス4人でライブに出たいと言い続けてきたけれど、最後にトレーナーさんのお陰で叶えることが出来ました!トレーナーさん、ありがとうございます。」と言っていたけれど、感謝しなければいけないのはこちらだ。

前田さん。田澤さん。遠野さん。花井さん。
ナイスネイチャを、イクノディクタスを、マチカネタンホイザを、ツインターボを演じて、チームカノープスを愛してくれてありがとうございます。
1トレーナーとして、これからも死ぬまで私はカノープスを愛し続けます。

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