ブランディングの科学/バイロン・シャープ
ブランディングやマーケティングの本を読み漁っていますが、この本は他のブランディングの本と違う見解を述べているので非常に面白いです。これまで常識とされていた考えと逆の考えが科学的見地から展開されているので、新しい知識がついたなぁと思わせられました。
リピーターが大事という常識の否定
あらゆるマーケティングの本を読むと「リピーターを大事にしろ」と必ずといっていいほど書かれています。確かにビジネスはリピーターが大事です。常連客によって支えられているお店も多くあります。一人の人が何回も買ってくれる方が、営業努力もしなくてすみますし、効率も良いのです。しかし、この本では、ブランドを支えているお客さんの多くがライト層だと言っています。コカ・コーラの購入データがあるのですが、それを見ると確かに年間で3回以内しか購入していない購入者は全体の70%ほどを占めています。実は濃いリピーターって、全体から見ると30%くらいしか、あるいはもっと少なくしかいないというデータが見えるのです。これはコカ・コーラに限った話ではなくて、他のサービスにも言えることらしいです(むしろもっと極点にライトユーザーの比率が高まる場合も)。つまり、ブランドはライトユーザーに支えられていると。ライトユーザーの取り込みができないとブランドの成長はできないということです。
確かに考えてみれば、リピーターが大事って言いますが、リピーターはそれ以上増えることがなく、100%のリピーターから101%にはなりえないんですよね。必ずリピーターは減っていく運命なんです。その減っていく10%とか20%を追いかけるなら、新規で獲得できる50%を追いかけたほうがいいんじゃないの?って書かれています。データから見ると、たしかにそうだ!って思いますよね。
もちろんリピーターは大事です。でもそれゆえ、ライトユーザーが入りづらい構造にしてしまうことが非常にまずいということです。僕が思うに、リピーターは新しいお客さんを連れてきてくれるような仕組みにしないと行けないのかなと思っています。そういう間口を広くもたせられるブランドづくりが必要なのではないかと。
実際僕が運営している「ジェリーの謎解きルーム」というお店は、ライトな層、新規のお客さんが来やすいお店づくりを目指しています。謎解きやボードゲームが遊べるお店って、ディープになりがちだと思うんです。それをいかにライトな方に寄せるか。これが結構難しいと思うのですが、おかげさまでスタッフのみんなが頑張っているおかげでそれが実現できている気がします。
競合ブランドとお客さんを共有している
普通に考えれば分かる話なんですが、自分のお客さんは競合のお客さんでもあります。しかしながら、お客さんは業界の1位に集中する傾向があります。逆にいえば、1位のお客さんを2位以下の会社で共有しているのです。
そりゃそうだよなと。スタバによく行く人は、たまにタリーズも行くし、ドトールもいくかもしれない。逆もしかりで、お客さんはスタバが好き以前に「コーヒーが好き」というコーヒーのカテゴリーの中で生きているから。カテゴリーは色々あって、「休みたい場所」でもいいし、「コーヒー」でもいい。「会話できる場所」とかでもいいのかもしれない。そのカテゴリー設定が経営には非常に重要なのかも。どのカテゴリーにも1位の会社はいるわけで、その会社と比較されてしまったら冷や飯を食うことになっちゃうので、比較されない状況を以下に作り出して、むしろ比較されてたとしても、そのカテゴリーで自社が1位の状態になる状況を作り出すことが大事。そういう「ずらし」が弱者には必要なのでしょうね。これはポジショニング戦略でもあるので、ポジショニングって本当に重要だということですな。
ポジショニングはひいてはブランディングに繋がります。いや、ブランディングがあるからのポジショニングなのか。つまりは、独自性があるかが大事。あなたじゃなきゃダメだという唯一無二の存在。それを作っていくことがとても大事なんですなぁ。