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第29回 恋の関守

大伯母(叔母?)の阿倍睦子の手引きで、業平は東五条第の西の対に忍びこむことができました。当時は全て「夜這い」で恋が成就してしまう。狙われたお姫様はとんでもないですね。今なら訴訟物です。

しかし18歳の高子は初恋だからか、35歳の業平の手練手管に参ったのか、受け入れます。業平の方は、宿敵藤原良房の鼻をあかしてやろうか、それとも途中でほんとに高子に恋心を抱いたのかは分かりません。

『伊勢物語』第5段に東五条第に忍びこむ場面が描かれています。
私も昔、三条の業平住居跡というホテルギンモンド辺りから、東五条第跡と書かれている碑まで実際歩いてみた事があります(笑)まあそんなにたいした距離ではなかったですが、気分を味わいました。
「築泥(つひぢ)の崩れ」より業平は通ったとありますが、いろいろ読んでみるとこれは荒廃した邸という意味じゃなくて大風などで壊れてもすぐには修理しなかったのではないかという事です。

しかしやはり深窓の姫君、しかも末は帝の妃と決まっている高子に通うのはとんでもない事なので見張りが付きます。そして業平の歌が物語にあります。
「人しれぬわが通ひ路の関守は よひよひごとにうちも寝ななむ」-人知れず通う私の恋路を見張る関守は、毎晩眠ってほしいものだー
ですが、業平が巧妙に通うので、ついに良房は、高子を実母の乙春(たかはる)が住まう枇杷殿に移して厳重に警戒します。
そして業平は決意します。
「高子を盗み出してしまおう。そしたら評判になるだろうし」(続く)

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