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第36回 フェルミへの提案

1939年1月、ニールス・ボーアはデンマークへ帰らず、ニューヨークのプリンストン大に留まり、ひたすらウランについて研究する事にしました。
一方、風邪から治ったレオ・シラードは再び診療所に入院している親友のウィグナーを訪ねて思いのたけをぶちまけました。
「ナチはどうしてユダヤ人をこんなに迫害するんだ!どこまでやる気かわかりゃしない。それにナチが原爆を手にしたらと思うとぞっとする」
ウィグナーは興奮しているシラードに冷静に助言しました。
「とにかく、爆弾にするには中性子による核分裂の連鎖反応がいる。本当に連鎖反応が起きるかどうかを同じコロンビア大のフェルミに実験して貰ったら?だいたいノーベル賞を取ったフェルミのウラン反応の論文からインスピレーションを得たみただし」
納得したシラードは、まずフランスのフレデリック・ジョリオ=キュリー夫妻も以前から同じ連鎖反応の実験に取り組んでいるという情報があったので、2月2日、ナチスに秘密にするため、公表を控えてほしいという手紙を書きました。

そしてシラードは久々にコロンビア大に行き、同じ亡命科学者のイシドール・ラビにフェルミへの仲介を頼みました。フェルミと親しいという情報が入ったからです。ラビは意気揚々として、シラードをフェルミの所へ連れて行き説明しましたが、意外にもフェルミは乗り気ではありませんでした。(続く)

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