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第1回 在原業平

明けましておめでとうございます。『「平家物語」誕生』・『「源氏物語」誕生』に続いて、昨年末Kindleより『「伊勢物語」誕生』が発売されたので(480円)、その解説を兼ねて人物紹介をしていきたいと思います。

『伊勢物語』は10世紀後半(950~60年頃)完成したといいます。
主人公は在原業平を中心とした「昔、男」です。

魅力があった人の様で、2001年正月の宝塚講演で、稔幸さん主演の『花の業平 忍の乱れ』がありました。
稔さんは、業平の事を「光源氏より線の太い美男子。どうやって演じようかと思っている」とインタビューで述べていました。

確かに、漢文は駄目だが、和歌は天才的。そして相撲、馬術も巧みだった様です。そして何よりも「危険な恋」にまっしぐら。天皇の后となる予定の女性と駆け落ちしたり、伊勢の斎宮に務める内親王と一夜を共にして子ができたり・・・とまかり間違えば流罪は当然の恋にためらいはありません。しかも元は天皇の孫という貴種。美男で危なっかしいとくればそれもまた魅力なのかも知れませんね。
880年、56歳で業平は亡くなるので死後約70~80年で彼を偲んで物語はできたのでしょうか?でも色々な意味合いがある様です。

さて、業平の歌を3首ほど。紀貫之が「花が枯れて香りだけ漂う」と表現している様に意味深で思わせぶりな歌が多いです。
まずは『百人一首』の有名な歌。これはかつて駆け落ちした相手の高子(たかいこ)がもう東宮の母女御という身分になっていて、そこに招かれ、秋の屏風を元に詠んだ歌です。

 ちはやぶる 神代もきかず竜田川 からくれなゐに水くくるとは
(はるか神代の話としてさえも聞いたことがない。竜田川が紅葉を浮かべ、真っ赤な色に水を絞り染めにしているなどとはー私達の恋もこの様に燃えていましたね)
表向きは真っ赤な紅葉を詠いながら、実は過去の恋も述べるというやり方です。当の高子はもちろん周囲の人も理解していたでしょう。

こちらも同じ設定で、この時の方が早いでしょうか。高子の御所で、桜を見ながら詠んだ歌です。
花に飽かぬ嘆きはいつもせしかども 今日の今宵(こよい)に似る時はなし
(桜よ、桜。見飽かぬうちに散っていく。その悲しみはいつも味わったが、今宵の想いはとりわけてー貴女がいるから)

更に高子が大原野神社に参詣する時に付いて行って詠んだ歌。
大原や小塩の山も今日こそは 神代のことも思ひいづらめ
(この大原野の小塩の山も、今日の日こそは藤原氏の御先祖の神が遠い神代のことも思いだしているでしょうー貴女も昔の二人が契りを結んだことを思い出しておいででしょう)

何かこれでもかという感じですが、実はかなり屈折した自虐的な面もあった様です。なぜそうなったか、業平の家系も含めて見直していきましょう!


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