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第156回 頼朝、挙兵の決意
後白河法皇の内意を得た光能は、早速邸に帰り、自身で院宣を書き、待ちわびている文覚に渡しました。
「有難うございます。確かに受け取ってございます。それで光能様、良き馬を貰えませんでしょうか?拙者の馬はもう疲れておりまする」
光能は笑いながらすぐに駿馬を用意させました、
「それではまたお会いする時まで」
疾風の様に文覚は新しい馬に乗って去っていきました。
光能はそれを不思議そうに見つめていました。
伊豆を出てからちょうど8日目の昼に文覚は得意気な顔をして、
「それ、院宣よ」と持ってきました。頼朝は驚き、とにかく新しい烏帽子、浄衣に着替え、手水、嗽(うがい)をして、院宣を三度拝して開きました。
確かに院宣であり、罪を許して、平家を討てとあります。もう頼朝は罪人ではないのでした。
ちょうど、頼朝の乳母の甥、三善康信の使いも福原から来て、
「以仁王の令旨を受け取った者はやはりすべて死罪ということです」
と目を見開いて言いました。
頼朝はこれで完全に踏ん切りがつきました。
「よし、わしは立つ」
頼朝の上気した顔を、文覚始め周囲の者たちは喜んで見つめたのでした。(続く)