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第158回 頼朝の再起

景時は言いました。「ここには誰もいない。あちらの山が怪しい」
「景時殿、まことでござるか?」
大将の大庭景親は言いました。しかし景親は無理強いはしませんでした。そして武士たちは去って行きました。

「景時とは何者か」頼朝は小声で聞きました。
「恐らく梶原景時かと」「そうか」
こうしてあわや殺されそうになったのを、景時が裏切って見逃してくれたので頼朝は九死に一生を得ました。
頼朝たち7人は、何とか土肥の真鶴(まなづる)に出ました。そこで舟を一艘得、安房の国まで渡りました。頼朝たちを発見した三浦党は大喜びでした。
頼朝は窮地を脱しました。すると東国の武将たちが平家を裏切り、我も我もと頼朝の所に参じて来ました。
頼朝は駆け付けた武将たち一人ひとりに「そなただけが頼りでござる」と別室で秘かに呼んで言いました。武将たちは源氏の嫡流に言われたので感涙しました。二十年来、いつ殺されるかもしれない流人生活で得た頼朝の知恵でした。(続く)

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