第86回 宮中退下~雲隠れ
長和2(1013)年は、香子の親友で同室だった小少将の君が実家で亡くなった年でもありました。
道長の害した気分の余波で香子は宮中を去る事を命じられました。拒否すれば、親族にどんな嫌がらせがあるか分かりません。
もう小少将の君も亡くなって未練はありません。
しかし香子にはやる事がありました。『源氏の物語」第二部の完結です。
2カ月の猶予を貰って書き上げました。
夕霧と雲居の雁の夫婦の仲違いは、結局、柏木の未亡人女二宮と正式に結婚する事。月に半分ずつどちらにも通う事で決着します。(疑問:でももう一人の妻藤典侍はどうするんでしょうね?)
夕霧は女二宮から柏木の遺品横笛を預かりますが、柏木が夢見に現れます。そして源氏に相談し、横笛が薫に渡るようにします。夕霧は薫がひょっとしたら柏木と女三宮の子ではないかと疑い、源氏はそれに答えません。
そしてずっと病身であった紫の上の死です。愛する養女明石の姫君と源氏に看取られながら紫の上は亡くなります。
そしてその1年後、源氏は出家の意思を固めます・・・
しかしここで「光源氏の死」がどうしても描けません。そして香子は天才的な手腕を発揮します。「雲隠」と題だけ提示し、光源氏の死を暗示し、中身を書かなかったのです。そして自らも去るというメッセージでした。
香子は、その年の秋、8年近く勤めた宮中を去ります。皇太后彰子には宿下がりをすると言ったのでしょうか。後年何度か傍に伺候しています。