第135回 『平家物語』の作者候補
清盛が、多くを解官(げかん)させたので、また多くが任官されました。
その頃、かつて二条帝に仕えていた藤原行隆(ゆきたか)は五十を超えて無官でした。二条帝が崩御する前に平家と対立していたからです。
行隆の異母妹領子が、平時忠(時子の弟)の後妻になっていて平家と本来なら近い関係の筈なのに。
その行隆が清盛から召し出されました。行隆は不安となりました。
「この上、何だというのだろう。私は何もしていないのに」
と妻や、長男の当時10歳の行長に心配して言いました。
しかし参上してみると、清盛はにこにことして笑い、
「そなたの父上、顕時どのにはいろいろとお世話になり申した。そなたの事を忘れていたわけではなかったがのう・・・」
と言って、行隆を五位の侍従に任じ、以前の佐少弁にも復活させました。
出かける前とは打って変わって、明るい表情で行隆は帰宅しました。
そしてささやかな宴を開き、
「こは夢かや」と手を舞い、足を踏んでにこやかに踊りました。それを微笑ましく行長は見ていました。行長の従兄で博学な時長も来て喜びました。
この場面は『平家物語』に載っています。行長・時長とも源光行と並んで『平家物語』の有力な作者候補です。(続く)
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